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理念で飯が食えるのか?経営理念と事業成果の関係

投稿日:2018/10/11更新日:2019/08/16

連載「理念経営の常識を疑え」の第4回は、理念と成果について考察します。

VUCA時代に突入しても、未だに大企業のミドル層によく見られる「理念経営の3つの常識の呪縛」。前回は、「理念は守るべきもので変えてはいけない」という呪縛について触れた。そして、理念を再定義する過程には、若手を参画させることが重要だとお伝えした。今回は、「理念で飯が食えるのか?」という、これもエグゼクティブ・スクールに通う大企業のミドルから多く出てくる問いについて考えてみたい。

「理念で飯が食えるのか?」

この問いにみなさんならどう答えるだろうか。

「理念に基づいて経営しなければ、企業は持続的に発展しない」というのが教科書的な答えだろう。でも質問者の関心事は、「今、足元の成果を出すためにはどうしたらよいか?」なので、上記の答えではそのニーズにはミートしない。

私はこう答えるようにしている。「理念を共有しても、事業成果が思うように出ないことなんていくらでもある。たとえば、歪んだ業界構造や旧来の慣習などに縛られ、社会的に価値あることをやっていても、それに見合った対価をすぐにはもらえない等々。だからといって、明らかに社会からは必要とされているその事業を止めるのか?あるいは、それを続ける動機は?」と。

そもそも「理念で飯が食えるのか?」というのはいかにも大企業のミドルから出る問いだ。現在私は、KIBOW社会的インパクト投資の仕事も少ししているが、投資案件はどれも社会的課題として大きなニーズがありながら、既存のやり方では事業として成り立たない難しいものばかりだ。こうした何らかの社会課題を起点に、それを解決するために業を起こすという志をもったベンチャー経営者からは、決して上記の問いは出てこないだろう。ベンチャーは大企業のようなリソース(資本、人材)を持っていない。だから大企業以上に簡単には結果など出ない。そうした長く続く逆境下で心の支えになるのは志=理念しかないだろう。

すなわち、「理念で飯が食えるのか?」という大企業ミドルの問いには、「逆説的だが、簡単には成果が出ないからこそ、エネルギー(動機づけ)の源泉になる自らの社会的存在意義である理念を信ずるしかない」と答えるようにしている。 

理念を共有できていることが理念経営なのか?

外から見ていて理念はしっかりしていて、かつその理念に共感した人達が多くバスに乗っているのに、成長が鈍化している会社もよく見かける。

では何が足りないのか。それに対する1つの答えとして、某ヘルスケアメーカーのトップの話が大変腹に落ちたことがあった。そのCEO曰く、「どこのヘルスケア企業も同じだと思いますが、うちに就職する人達は全員、人の命のために何か役に立ちたいと思って入ってきています。しかし、最近思うのは、人の命のために役立つことをやっている会社にいることで満足してしまっていないかということです」。つまり、理念経営とは理念が社内で共有できていることではなく、社会に対してその理念を果たすことを約束し、しっかりそのための戦略を実行し結果を出し続けている状態でなければならないということだ。

当たり前のことではあるのだが、確かに同じ業界で同じような理念を謳っていても、その成果は会社によって相当差がある。傍から見ていて感じるその差は、その理念をエネルギーにしてどこまで徹底し成果にこだわるか、その実行力にある。これは『ビジョナリーカンパニー2‐飛躍の法則』にある「“適切な人材”の定義=(1)組織の大事にする価値観(理念)への共感と(2)自立性(実行力)の2つを合わせ持っていること」とも合致する。

自社の理念に共感しているという方も、あらためて自分が自社の成長に寄与できているのかどうか、問うてみて欲しい。

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