会計ルールでは電気料金は「いつ」の費用となるのでしょうか。例えば、2月に使用した電気使用量に対する料金は翌月3月に銀行口座から引き落とされます。ここで、電気料金は電気を使用した2月の費用なのか、あるいは電気料金を支払う(銀行口座から引き落とされる)3月の費用なのか、という問題が生じます。
キャッシュ・オン・デリバリーのように費用の発生と対価の支払いのタイミングが一致、あるいは近い場合は大きな問題とはならないですが、信用経済と前提とする現在のビジネス環境では両者は乖離することが少なくありません。
電気を「使用」した事実を重視し、電気料金を2月度の費用としてP/L(損益計算書)に計上する考え方を「発生主義」といいます。
これに対して、電気料金を「支払った」事実を重視し、電気料金を3月度の費用としてP/L計上する考え方を「現金主義」と言います。
現在の会計ルールでは、費用は「発生主義」でP/Lに計上されます。これは、費用を経済的価値の消費をベースに認識することで期間損益計算を適正にするためです。P/Lは1年、四半期のように期間を区切ってその間の売上、費用、利益の業績を計算、表示します。仮に1年間で家賃を13か月分前払いした場合、現金主義によれば1年間で13か月分の家賃が費用に計上されることになりますが、これでは何か月分支払うかによって費用が変動してしまい適正な期間損益計算とは言えません。
ところで、「売上の計上タイミングは会社ごとに違うって本当?」で売上(収益)の認識の会計ルールとして「実現主義(基準)」を説明しました。実現主義の2つの要件は、
1. 得意先から依頼されたモノを引き渡した(サービスを提供した)
2. 1の結果、得意先から代金を回収した、あるいは代金を支払う約束を取り付けた
ですが、実現基準の1が発生主義の要件である「費用の発生」に相当します。売る側から見て依頼されたモノを引き渡したということは、買う側からすれば依頼したモノの提供を受けたことになります。費用は要件1のみでP/Lに計上しますが、売上はさらに要件2が追加されます。依頼されたモノやサービスの提供だけではなく、相手方から現金の支払い、あるいはその約束を得るまでは売上を認めないということです。
仮に1のみで売り上げを計上してその後代金の回収がされないと、最悪の場合、売上を取り消す必要が生じます。そのような事態が頻繁に起こると会社の売上高が信用できなくなります。そのため、売上の計上は費用に比べてより慎重に取り扱うことになります。