バラク・オバマ氏が、アメリカの第44代大統領になった。アメリカでは、選挙のことを「民主主義の祭り」と呼ぶらしいが、さもありなんというフィーバー(古い!)ぶりである。
それにしても、若干47歳にして超大国のリーダーの座を射止めるからには、タダモノでないことは明らか。インターネットを駆使したキャンペーン活動なども評価され、先月には、アメリカ・マーケティング協会の「マーケター・オブ・ザ・イヤー」にも選ばれている。
また、ご承知の通り、その演説の雄弁さは多くのメディアでも紹介され、多少、歯の根の浮きそうなセリフもあるが、「言葉で攻める」とは、こういうことを指すのだろうと感心させられる点が多い。
「CHANGE」は、その中でも最も出現回数の多い言葉だろうが、その言葉を使いながら彼はこういっている。
「一緒にアメリカを変えよう!一緒に世界を変えよう!」
そして、「黒人も、白人も、ヒスパニックも・・・・・」という「ひとつのアメリカ」を謳う主旨の演説とも重なって、大きな一体感をアピールする効果を生み出している。
これは、「上位概念の創出」に他ならない。
この場合、「時代の気分を捉える力」と言い換えても良いかもしれないが、人々の心の底に眠っている「澱(オリ)」のような微細で無数の感情を、一瞬にして発酵させ成熟させる魔術のようなものだ。
「自分たちは変わるのだ!自分たちで変えるのだ!そしてひとつになるのだ!」
「YES,WECAN!」
困難を乗り越えることから「プライド」は生まれる。
実際、世界中のブランドを見渡してみても、必ず豊かなストーリーに彩られている。艱難辛苦の果てに掴んだ栄光の物語が語られている。ブランド創りは、ストーリー創りだと言っても過言ではない。そして消費者は、そのブランドを購入することで、ブランドの背景にあるプライドを所有することができる。
「一緒に困難を乗り越えよう!私たちには、それができる!」
人々の心に「プライド」を植えつけるという活動(=ストーリー)が、今回、バラク・オバマというブランド生み出した大きな要因のように思う。
それにしても、「世界を変えよう!」と真顔で呼びかけることのできる政治家が我が国に現れないのは、逆説的に、その志(=プライド)の低さ故ではないかと考えてしまうのは悲観的過ぎるだろうか?
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