[DeNA・カゴメの事例から]企業と個人両者の思惑―副業を通じてWin-Winになるには?Vol.1

副業を国が後押ししています。ですが、副業を認める企業と、副業を始める個人では思惑が異なるようです。本連載では、副業の現状を明らかにしたうえで、従業員の副業を、従業員個人と企業、双方の成長につなげている成功事例をもとに、双方がwin-winになるためにはどうしたらいいのかを探っていきます。(全3回、第1回)

※本稿は、グロービス経営大学院教員の竹内秀太郎の指導のもと、社会人大学院生5名(押田 悠・榎本 睦郎 ・澤村 亮・ 矢形 宏紀・山本 まどか)が行った研究結果に基づいています。

副業とは

最近、Webニュースなどで「副業」というワードを目にしない日の方が珍しいのではないでしょうか。「副業」とは一体どのような仕事や働き方を指すのでしょうか。副業は「主な仕事以外の仕事」と定義されています(平成14年「就業構造基本調査」総務省統計局による)。大きく捉えると、ロート製薬などで盛んな社内副業や、外資系企業でよく推進されているボランティア活動も副業ということになります。

それだと話題がぼやけてしまうので、本稿では副業の定義を「当事者の属する企業以外の場をフィールドとし、かつ金銭的対価を得られる活動」とします。例えば、終業後にコンビニでアルバイトすることは副業ですが、自身の知見で友人のスタートアップ企業を手伝っても、金銭的対価が得られなければ副業とは言わないことにします。

副業が流行っている背景~国の後押しが大きい

副業が流行っている理由を分析すると、景気の停滞やコロナ禍等が労働環境に変化をもたらす中、法令改正や働き方改革、テクノロジーの進化で副業のハードルは大きく下がったこと、それにより、雇用者・被雇用者双方が副業の活用に目を向け始めている、と言えるのではないでしょうか。要は個人(被雇用者)視点では、「副業したいのに環境のせいでできない」ということは言えなくなってきたわけです。副業に関心がある人なら、できる環境は整ってきました。

図1 PEST分析

Politics 政府が働き方改革の一環として副業を積極的に推進したことにより、副業を解禁する企業が増加中である。そのため、以前に比べ副業にトライしやすい環境に変化しつつある。
Economy 長期間にわたるデフレ経済を背景に、雇用者・被雇用者の双方が、リスクヘッジ(守り)や更なる成長の切り札(攻め)としての役割を副業に求めるケースが増加している。
Society 少子高齢化による労働力減少、長寿化(人生100年計画)、コロナ禍による労働環境の変化、価値観の多様化していく中で副業の存在感が拡大している。
Technology テクノロジーの活用により個人が副業をしやすい環境が時間・場所・企業とのマッチングの面で整い、それを推進するプレーヤーの参入により副業が活性化している。

副業を認める会社の思惑~エンゲージメント向上とイノベーションを期待?

実際に副業を解禁したカゴメとディー・エヌ・エーの例を、2021年10月に公表された経団連レポート「副業・兼業の促進」をベースに、副業を解禁した経緯や目的を見ていきます。

このレポートのサブタイトルは「働き方改革フェーズⅡとエンゲージメント向上を目指して」です。

ちなみに、働き方改革フェーズⅠは「労働時間削減や年休取得促進などによってインプット(労働投入)を削減する」フェーズとされています。労働生産性を、アウトプット(付加価値)をインプット(労働投入)で割ったものとすると、労働投入は分母の位置になります。

フェーズⅡは分子の部分(アウトプット=付加価値)を表しており、飛躍的な労働生産性向上を目指してエンゲージメント向上によりアウトプットの最大化(質の向上・多様化)に注力するフェーズとなります。ここで言うエンゲージメントとは「働き手にとって組織目標の達成と自らの成長の方向性が一致し、『働きがい』や『働きやすさ』を感じる職場環境の中で、組織や仕事に主体的に貢献する意欲や姿勢を示す概念」と定義しています。

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