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7Sの整合性をとる―コロナを乗り越えた町工場社長の10年 Vol.2

投稿日:2022/09/29

コロナ禍の一時帰休を6稼4勤という働き方改革に着地させたフジイ金型。本稿ではそこにいたるまでの藤井寛達社長の2012年から10年の挑戦を綴る。

リーマンショック後の金型業界は、顧客からの短納期要請に応えられるか否かが競争に勝つためのカギ(KSF=Key Success Factor)になっていった。藤井社長は、その変化をいち早く察知し、自社がこれまで蓄積してきた短納期に応えられる強みを生かす戦略に注力。市場の回復も相まってV字回復を実現した。にもかかわらず、藤井社長は組織内部に強い課題意識をもっていた。(聞き手=グロービス経営大学院教員 芹沢宗一郎)(全3回、第2回)(第1回はこちら

ソフトSの変革への取り組みに着手

芹沢:2017~2018年には見事なV字回復を遂げられた。その時点で藤井さんの胸の内にあった課題意識とは何だったのか?

藤井:組織として徐々に大きくなり、また生産工場も分散化したことにより官僚主義(縄張り意識と指示待ち意識)が見受けられるようになっていた。自分の仕事さえ与えられた範囲でこなしていれば良いという、お客様目線から遠のき、周りの仲間への配慮も薄れてきたという課題が見受けられるようになった。顧客目線を強めるため、営業の権限を強化したが、まだまだ不足しているといった状況だった。

芹沢:組織の規模が大きくなったことの弊害も含め、リーマンショック前までの事業環境にマッチしていた先代の経営スタイルをはじめとする各施策が、新たな環境変化に対して不整合が生じ始めたということ?

藤井:おっしゃるとおり。7S(マッキンゼーの7つのS-戦略・組織構造・制度・価値観・能力・人材・スタイル-の視点から組織を分析するフレームワーク)で整理するとわかりやすい(下図)。ただこれで当時は結果を出せていた。

芹沢:一方で、新たな環境の中で勝っていくには、従来までの7Sから醸成されてきた縄張り意識や指示待ち意識、お客様目線から遠いなどは弊害になってきた。そこでどのような対策をとられたのか。

藤井:まずはじめたことが、前回話したように戦略と営業の権限を強化するよう組織形態を変えたことだった。

芹沢:「戦略」と「組織構造」は、7Sの中でハード面のSだ。それに整合させるためにソフトS(「スタイル」「スタッフ」「スキル」「共通価値観」)はどのように変えたのか?

藤井:そもそも生産性向上、技術力開発、ひいては、これからの100年時代を見据えて自律的に働き方を考えていくように個人事業主のように働くというセルフマネジメントを実施していきたいと常々思っていた。コロナ前の右肩上がりの時期から社内に説いて、単発的な施策は取っていたが、なかなか上手くいかなかった。やはり順調に進んでいる「平時」では、変化しなくても大丈夫、変化したくない、という慣性力が働き、社内改革には苦労していた。

そこでまずは社員、特に幹部社員(40代中盤~50代前半)とその一つ下の若手リーダー社員(30代前半~40歳前)への意識改革が必要だと思い、外部の教育コンサルタントを入れて社内教育(2019年10月開始)に投資して準備してきた。なお社内教育はまず経営トップである私の教育から始まり、長い時間軸(まずは8ヵ年)での方向性を考える作業を行った。まずは私自身を再教育して方向性を固めたことが良かった。

またこの社内教育の開始と同時に古くから継続し、現状にマッチしていない賃金規定の見直しも行った。その後に行う評価制度変更を考えていたので、そのためにもその新評価制度にマッチする賃金規定を構築する必要性があった。

芹沢:その社内教育に着手しだした矢先にコロナショック(2020年3月)が起こった。それが、実は改革の弾みになったと聞く。それについて次回聞きたい。

Vol.3に続く

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