持ち合い株式の問題点とは? ~政策保有株式を巡る新たな動きを押さえる~

政策保有株式とは

政策保有株式は、(企業間)持ち合い株式とも言われ、1960年代頃から広まった日本独特の株式保有の仕組みです。企業間で相互に株式を持ち合う場合が多いですが、どちらか一方の企業だけが他社の株式を保有する場合もあります。

貸借対照表で、政策保有株式は固定資産(投資その他の資産)に「投資有価証券」として計上されます。上場会社の株式など時価のある株式の場合は、決算期末に時価評価され、取得価額との差額は(税効果を考慮の上)純資産の部に「その他有価証券評価差額金」として計上されます。

持ち合い株式は、高度経済成長においては敵対的買収の防止、経営の安定化、取引関係の強化など一定の役割は果たしました。一方で、資本の空洞化や安定株主工作による株主総会の形骸化といった問題が指摘されてきました。

バブル経済の崩壊以降、会計ルールが徐々に時価主義へと移行するようになると、株式持ち合いの解消が進むようになります。持ち合い株式を時価評価して取得価額との差額を決算に反映する必要が生じると、業績の悪い会社の株式を保有することは自社の決算に悪影響を及ぼすようになったためです。また、外国人投資家の台頭により、企業ガバナンス上の問題のほか、資本効率の悪化の点からも持ち合い株式が問題視されるようになりました。

政策保有株式の問題点

具体的に政策保有株式には、次の問題があると指摘されます。

  • 資本効率性の悪化
  • 企業ガバナンスの低下

見方を変えると、これらは政策保有株式を保有する側と保有される側の両側における問題と捉えることができます。

政策保有株式の保有関係と問題点

政策保有株式の保有関係 問題点
政策保有株式を保有する会社 資本効率性の悪化
政策保有株式を保有される会社 企業ガバナンスの低下

保有する側の問題とCGコード

保有する側の問題、つまり資本効率性の悪化については、2015年に適用が開始されたコーポレートガバナンス・コード(CGコード)のなかで次のような言及があります。

【原則1-4.政策保有株式】

上場会社が政策保有株式として上場株式を保有する場合には、政策保有株式の縮減に関する方針・考え方など、政策保有に関する方針を開示すべきである。また、毎年、取締役会で、個別の政策保有株式について、保有目的が適切か、保有に伴う便益やリスクが資本コストに見合っているか等を具体的に精査し、保有の適否を検証するとともに、そうした検証の内容について開示すべきである。

上場会社は、政策保有株式に係る議決権の行使について、適切な対応を確保するための具体的な基準を策定・開示し、その基準に沿った対応を行うべきである。

CGコードによって、取引先の株式を売却することに躊躇していた企業の持ち合い株式の解消が促進されました。上場会社においては、2019年3月期決算より有価証券報告書に政策保有株式の保有方針等を示すことが求められ、どの会社の株式をどういった目的でいくら持っているのかといった政策保有株式の明細を記載する必要があります。

なお、有価証券報告書における政策保有株式は、いわゆる純投資(専ら株価の変動又は株式に係る配当によって利益を受けることを目的とした投資株式)以外で保有する他社の株式、例えば、取引先との関係維持や買収防衛といった経営戦略上の目的で保有している株式と定義づけています。これにより、政策保有株式がいわばガラス張りにされるようになったことも解消が進んだ要因とみられます。

参考 有価証券報告書における持ち合い株式の記載箇所と内容

上場会社等は、有価証券報告書の【コーポレート・ガバナンスの状況等】の【株式の保有状況】に、以下の内容を記載します。

①  投資株式の区分の基準及び考え方
②  保有目的が純投資目的以外の目的である投資株式
 (1) 保有方針及び保有の合理性を検証する方法並びに個別銘柄の保有の適否に関する取締役会
      等における検証の内容
 (2)銘柄数及び貸借対照表計上額
 (3)特定投資株式及びみなし保有株式の銘柄ごとの株式数、貸借対照表計上額等に関する情報

①の「投資株式の区分」とは、ざっくりいうと純投資か政策保有株式かの区分です。②の(1)については、政策保有株式に関しては保有目的の適切性、保有目的にかなった成果が得られているかどうか(便益やリスクが資本コストに見合っているか)の定量的な保有効果の評価を行う必要があります。その際、純投資の株式と区分するために、株式の保有によって得られる配当や値上がり益だけでなく、事業の収益獲得への貢献度合いについて具体的に記載(営業取引規模の増加率等)します。

②の(2)については、決算日時点における非上場株式/非上場以外の株式ごとに銘柄数及び
貸借対照表計上額の合計額、当事業年度において株式数が増加/減少した銘柄及び取得(売却)価額の合計額、増加についてはその理由を記載します。②の(3)については、特定投資株式及びみなし保有株式のうち主要なもの(最大60銘柄)について、以下の項目を開示します。

  1. 銘柄
  2. 株式数
  3. 貸借対照表計上額
  4. 保有目的等
  5. 提出会社の経営方針・経営戦略等、事業の内容及びセグメント情報と関連付けた定量的な保有効果
    (定量的な保有効果の記載が困難な場合には、その旨及び保有の合理性を検証した方法)
  6. 株式数が増加した理由(当期末における株式数が前期末における株式数より増加した銘柄に限る)
  7. 当該株式の発行者による提出会社の株式の保有の有無

保有される側の問題とCGコード

一方、持たれる側の問題もあります。安定株主の存在による経営者のディシプリンの低下や株主、投資家とのコミュニケーションの阻害などによって引き起こされる企業ガバナンスの低下です。

例えば、会社が持ち合い株式の売却を進めたいと考えたとしても、取引先の株式を売却すると取引上の不利益を被ると思って躊躇する場合が考えられます。そこで、2018年に改訂されたCGコードには、以下の文言が追加されました。

補充原則

1-4 ① 上場会社は、自社の株式を政策保有株式として保有している会社(政策保有株主)からその株式の売却等の意向が示された場合には、取引の縮減を示唆することなどにより、売却等を妨げるべきではない。

持ち合い株式を巡る新たな動き

このように、政策保有株式については我が国経済全体として解消する方針であり、多くの企業では漸次解消を進めています。しかし、独自の方針を掲げるなど、政策保有株式の保有を維持する会社もあります。

最近、このような会社に対して、米国の議決権行使助言会社のインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)やグラスルイスは、純資産に対して許容される政策保有株式の比率(ISSは20%、グラスルイスは10%)を独自に掲げ、それ以上を保有する会社の取締役の選任決議に反対する動きを見せています。

例えば、日清食品ホールディングスは、2020年度には純資産に対して20%を超える政策保有株式を保有していましたが、ISSからの指摘により2021年度には17%台まで減少させました。

ISSなどが政策保有株式の保有について数値基準を掲げたことにより、国内の機関投資家もそれに追従する動きを見せており、さらに政策保有株式の解消にアクセルが踏まれることが予想されます。今後、政策保有株式の解消がどのように進行していくか、注視していきたいと思います。

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