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「先物」はなぜ生まれた? デリバティブの基礎知識を固める vol.1

投稿日:2022/07/28更新日:2022/09/02

日本取引所グループ(JPX)傘下の大阪取引所は6月17日、「日経225マイクロ先物」と「ミニオプション」を2023年4~6月期に上場する予定だと発表しました。こうした先物商品が求められる背景には何があるのでしょうか。今回のシリーズでは、株価指数先物とオプションという、デリバティブ(金融派生商品)の存在意義や大まかなルールなどの基礎知識を紹介します。第1回は、先物が誕生した背景やその役割、日経平均先物と決済方法について押さえていきます。

先物の意義、コメの例で考える

先物とは「ある時点(期日)で、ある商品(原資産)を、取引する時点で決めた価格で売買することを約束する取引」を指します

原資産をコメ、期日を9月30日とするケースでの先物取引を想定してみます。8月の取引時点で、かなりの豊作が見込まれる場合、収穫期にはコメの需給バランスが崩れ、コメの実勢価格が例年よりも下落することが予想されます。コメの売り手(生産者)が損失を抑えるには、8月の時点で可能な限り9月30日に高くコメを買ってもらうための契約を取り付けることが選択肢のひとつとなります。この時、コメを大量消費する業者(和菓子屋など)が、生産者の求める先物価格で購入すると契約した場合、取引は成立します。

そのまま、期日の9月30日が到来したとしましょう。和菓子屋の立場に立つと、8月の想定よりコメの収穫量が少なくなり、期日時点のコメの実勢価格が先物価格を上回っていた場合、市場よりも安くコメを調達することに成功したこととなります。反対に実勢価格が先物価格を下回った場合、和菓子屋は市場でもっと安くコメを調達できたわけですから、一般的な意味で損をすることになります。

もっとも、和菓子屋は天候など不確実性が高いなかにあって、年間の収益計画を立てなければなりません。自社が購入した先物価格を前提とし、計画通りに和菓子を生産・販売できたなら、計画が未達となることはなく、経営の安定化につながります。生産者側も先物を活用することで収支のバランスを見通せるようになり、生産計画も立てやすくなります。すなわち先物取引は、不確実性の解消を目指すためのツールと言えるのです。

株価指数先物と取引時間

先物には原資産となる現物が存在します。原資産には株価指数、国債、原油、貴金属、穀物、ビットコインなど様々なものが存在します。日経平均先物は日経平均株価という、株価指数を原資産とする先物です。TOPIXが原資産ならTOPIX先物となります

一般に金融商品は取引所で不特定他者を相手に売買する「市場取引」と、取引所を介さずに売買する「相対取引(OTC)」があります。市場取引には取引時間内に売買する「立会内取引」と、大口の売買が市場に影響をもたらすのを回避する目的で取引時間外において行われる「立会外取引」があります。

普段、私たちがニュースで目にする先物価格は、立会内取引の価格です。JPXのデリバティブ市場である大阪取引所の立会時間は日中(午前8時45分~午後3時15分)と、夜間(午後4時半~翌日午前6時)に分かれています(プレ・クロージング時間を含む)。日経平均先物はシンガポール取引所や、米国のシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)でも売買されています。

日経平均先物はいくらで買えるのか?

大阪取引所で売買が可能な日経平均株価を原資産とする先物商品は、「日経平均株価先物」と「日経平均株価ミニ先物」の2種類です。前者を「日経先物ラージ」、後者を「日経先物ミニ」などと呼ぶこともあります。

ラージの期日は3,6,9,12月の第2金曜日、ミニは毎月第2金曜日となっています。ラージは主に機関投資家が利用します。ミニは個人投資家の利用を想定して作られた商品ですが、実際には先物の持ち高(ポジション)をきめ細やかに構築するのを目的とした機関投資家の売買も活発に行われています。

先物の売買をするには、担保として「証拠金」を差し入れる必要があります。証拠金の算出方法は複雑であり割愛しますが、これにより証拠金よりもはるかに大きな金額による、レバレッジを効かせた売買が可能になります。

ラージとミニの値段はそれぞれ以下の式で表されます(売買数量は「単位」または「枚」と表記されます)。この後に触れますが、買い建てた(売り建てた)際にはお金のやり取りはなく、反対売買による決済時、もしくは期日到来時の最終決済時に、お金のやり取りが行われます。

※1枚買い建てる時の値段

日経平均先物ラージの価格×売買数量×1000
日経平均先物ミニの価格×売買数量×100

・1枚あたりの取引単位はラージが「1000」、ミニ「100」
・先物価格2万5000円の時、ラージ1枚は2500万円、ミニ1枚は250万円

差金決済

株価指数という形のない「数字」を決済する時、どのような作業が必要になるのでしょうか。

日経平均株価は225社の株価をもとに算出されます(関連記事:今さら聞けない「日経平均株価」 ビジネスパーソンの必須知識)。日経平均先物を買うということは、225社の現物株の量を、株価変換係数と除数を使って調整してまとめた「バスケット」を購入することと同義となります。

先物の定義に鑑みれば、決済時に、売り手はバスケットを買い手に手渡さないといけません。そのためには売り手は市場から225社分の株式を必要な分、調達する作業が必要となりますが、その作業は非常に煩雑です。実際には株価指数先物では現物株のやりとりは行われず、「差金決済」が行われます。

具体的には日経平均先物ラージを2万5000円で1枚買い建てた投資家が、2万6000円に上昇した際に1枚売却した際、買い建て時との評価額の差額分を受け取ることで決済が完了します(2600万円−2500万円=100万円となり、100万円を買い手側が得ることになります)。

反対にラージを価格2万5000円で1枚売り建てた投資家が、2万6000円に上昇した局面で買戻しを行った場合、{-2600万円-(-2500万円)}=-100万円となり、差額分100万円を支払うことで決済が完了します。

「デリバティブの基礎を固める」シリーズ

vol.2「SQ」「日経225マイクロ先物」とは?
vol.3 オプションと先物は何が違う?
vol.4「日経225ミニ・オプション」とは?

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