「SQ」「日経225マイクロ先物」とは? デリバティブの基礎知識を固めるvol.2

「デリバティブ(金融派生商品)」の基礎知識を固めるシリーズの第1回では、先物が誕生した背景やその役割、日経平均先物と決済方法について紹介しました。今回は差金決済で用いられる「特別清算指数(SQ)」や、先物理論価格の算出方法など重要事項を整理しつつ、2023年に上場を予定する「日経225マイクロ先物」の概要について触れていきます。

特別清算指数(SQ)

先物はある時点(期日)である原資産(株式や債券など)を、取引時点で決めた価格で売買することを約束する取引です。株価指数先物の場合、決済時に現物株のやり取りは行われず、売り買いをするそれぞれのタイミングにおいて、評価額の差額を受け取ったり、支払ったりする「差金決済」の形をとっています。

投資家が先物の買い建て、または売り建てを行った後、決済が完了していない分の数量を「建玉」と言います。期日が到来した際、建玉を決済するのに使われるのが特別清算指数(SQ、またはSQ値)です。SQを使った決済の例を以下に示します。

◆ 2万5000円でラージを100枚買い建てた投資家が、期日まで反対売買をしなかったケース

SQが2万6000円の場合 (2万6000円−2万5000円)×100枚×1000= 1億円(利益)

SQが2万4000円の場合 (2万4000円−2万5000円)×100枚×1000= -1億円(損失)

日経平均先物のSQは、日経平均株価を構成する225銘柄の始値(その日最初についた株価)を使います。225銘柄の始値にそれぞれの「株価変換係数」を掛けたものを合算した後、225で割った値を、さらに除数(2022年8月1日時点で28.455)で割ると求められます(関連記事:「今さら聞けない「日経平均株価」 ビジネスパーソンの必須知識」)。

「メジャーSQ」は3カ月ごとに到来する日経平均先物ラージの期日、およびラージの特別清算指数そのものを指します。毎月第2金曜日に算出される同先物ミニやオプションの期日、特別清算指数を「マイナーSQ」と呼ぶ人もいます。

「期近物」「期先物」と「ロールオーバー」

SQは株式市場の動向に大きな影響を与えると言われています。なぜでしょうか。

日経平均先物にはラージとミニという2種類の商品がありますが、「期日」によってさまざまな「銘柄」に分かれます。本稿を執筆している8月1日時点で、ラージの期日のうちもっとも近いのは2022年9月第2週(9/9)、ミニは同年8月第2週(8/12)です。

ラージのうち9月に期日が来る銘柄を「日経平均先物(ラージ)9月限(くがつぎり)」、ミニで8月に期日が来る銘柄を「日経平均ミニ先物8月限(はちがつぎり)」などと呼びます。ともに期日が最も近いという点で「期近物(きぢかもの)」と言い、それ以外の銘柄(2022年8月1日時点のラージの12月限、ミニの9月限など)は「期先物(きさきもの)」と呼びます。一般的に期近物のほうが期先物よりも、市場参加者による売買ボリュームは大きくなります

SQの算出を前に、投資家が期近物の建玉を解消し、期先物で新しく買い建てや売り建てを行うことを「ロールオーバー」と言います。期先物に乗り換える過程で、買い持ち高(ロング・ポジション)の構築を続けるために、期近物の買い建玉を解消し、期先物を買い建てることを「ロング・ロール」、期近物の売り建玉を解消し、期先物で売り建てることを「ショート・ロール」と呼びます。

メジャーSQを含む週は、投資家のロールオーバーや、持ち高調整に伴う売買により、相場が不安定になることがあると言われています。期近のロング(買い)を解消するための売り、もしくはショート(売り)を解消するための買いなどが交錯することで、特に材料がなくても期近物の先物価格が動きやすくなります。

こうした先物の値動きは、裁定取引(割高な先物を売って割安な現物を買ったり、割安な先物を買って割高な現物を売ったりすることで利益を得ようとする取引)を伴って、日経平均株価を構成する主要銘柄(現物株)の価格形成に影響を及ぼします。日経平均株価が日経平均先物に比べ割安な場合は、日経平均株価を算出するうえで寄与度の高い個別銘柄に買いが入りやすく、反対に日経平均株価が割高な場合は、寄与度の高い個別銘柄に売りが出やすくなる、とされています。

先物の理論価格

上で「割高な先物を売って割安な現物を買ったり」と書きましたが、投資家が何を基準に割高か割安かと判断しているかというと、その物差しの一つに「理論価格」があります。個別企業の株価(関連記事:「株価の理論値:企業の価値は市場が決める」)と同様に、先物も理論価格を算出することができます。

以下が簡略化した算出式です。原資産となる日経平均株価に、金利動向や予想配当利回り、期日までの残存期間を加味したものとなっています。

日経平均先物の理論価格=日経平均株価×{1+(短期金利-予想配当利回り)×決済までの日数÷365日}

例)短期金利:0.01%<残存日数を考慮したTIBORの水準>、日経平均の予想配当利回り2.48%、決済までの残存日数73日、現在の日経平均株価2万6000円の時:

日経平均先物の理論価格=26,000×{1+(0.0001-0.0248)×73/365} = 25,871円

23年上場の「マイクロ先物」は何が違う? 

日本取引所グループ(JPX)が来年導入する予定の日経平均先物の新商品である「日経225マイクロ先物」は、従来の商品と比べ、より少額の資金で取引ができるようになることが最大の特徴です。1枚買い建てる時の価格は以下の通りです。

日経225マイクロ先物の価格×売買数量×10 

→2万5000円で1枚買い建てる時の価格は25万円 ※同様のケースでラージは2500万円、ミニは250万円

取引単位(ラージが1000、ミニが100)が10と小さく、個人投資家が資産運用をするうえで、現物株の価格変動リスクを抑えるなどの目的で活用されることが期待されています。

あわせて発表された「日経225ミニオプション」も取引単位が従来の10分の1となっています。次回はオプションの基礎について押さえていきます。

「デリバティブの基礎を固める」シリーズ

vol.1「先物」はなぜ生まれた?
vol.3 オプションと先物は何が違う?
vol.4「日経225ミニ・オプション」とは?

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