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キャリア形成で悩んだときに意識すべき5つの視点「CROSS」

投稿日:2017/07/06更新日:2019/04/09

人はどういう意識で職業を選び、どう仕事を発展させ、実績を生み、何を目指して進んで、キャリアを形成していくのでしょうか。キャリアを内省するやり方は世の中にたくさんありますが、私が企業内研修などで行っているのが下図に示した5つの要素「CROSS」によるものです。

1)能力を豊かにする〈Capability〉
2)ロールモデルを持つ〈Role Model〉
3)機会を見出す〈Opportunity〉
4)意義を与える〈Significance〉
5)1~4を統合する〈Synthesis〉

その5要素を詳しく示したのが下の図です。1~4の要素をさらに2段階に分けています。


1:能力〈Capability〉

誰しも「能力がある」「適性がある」という分野で職業選択をし、仕事したいと思います。これは第1段階として当然考慮に入れるべきことでしょう。しかし、キャリアをつくっていく上でもっと重要なことは、図に第2段階として示した「能力の展開」が行えるかどうかです。

これはつまり、環境が変わっても自分の能力を応用展開させて、きちんと成果が出せるかどうかをいいます。会社組織で働いていると、人事異動はつきものです。そして市場環境の変化にも直面します。そうしたときに、自分の保持能力を応用展開、再編成させる力を持っていないとすぐに行き詰まります。

行き詰まったときに、「これは配属のミスだ」とか「適性の向かない環境に回されてモチベーションが上がらない」と言って不満を漏らし、くさったり、短気を起こしてすぐに転職に走ろうとする人は、キャリアを切り拓く力の弱い人の姿です。

また、大学生の就職活動にしても、何かと自分の適性を気にする人が増えています。適性診断やら自己分析やらで自分の適性タイプを知り、そこから選択すべき職種を絞っていく。これが無意味だとは言えませんが、こうした診断に過度に依存する姿勢は、「占い師」の宣告に人生を頼るような危険性があり、本人の可能性をいたずらに狭めるだけでなく、自律的に意志を起こす力の脆弱化にもつながっています。

以前、ある人から相談を受けたことがあります。彼は大学時代に広告研究会で活躍していた人間です。そのクリエイティブ能力から、長年、広告部に配属されていたのですが、組織の再編成で営業部隊の最前線へ。くさりかけていた彼に私は「営業だから非クリエイティブと決めつけないで、クリエイティブのレンズを通して営業を見たら存外面白いかもしれませんよ」と伝えました。

その後1年半ほどして、彼は営業部隊でPOPやリーフレットを作成したり、納入取引先のウェブサイトのデザインを支援したりするクリエイティブチームを起こし、そこのリーダーにおさまったとの連絡を受けました。彼はたくましく新境地を拓いたのです。

能力は大事ですし、適性も大事です。しかし、キャリア形成にとってそれ以上に大事なことは、能力を展開する力です。適性といっても、環境の変化や逆境によって隠れていた適性が開発されることだって十分にありえるのです。

2:ロールモデル〈Role Model〉

私たちはよりよく働くため、そして力強くキャリアを進んでいくために方向性がいります。方向性を持つことの最初のきっかけは「あの人のような仕事がしたい」という模範やあこがれを持つことではないでしょうか。「学ぶ(まなぶ)」という語は、「真似る(まねる)」から来ていると言われるとおり、人を真似ようとすることから方向性が出てきます。

強くキャリアを歩んでいる人は、意識するしないに関わらず、必ずどこかの時点で模範やあこがれの人物に出会っていて、その人物の働き方・働き様(ざま)・生き様(ざま)から理想のイメージをつくり出しています。

その理想のイメージは、強烈な1人の人間から得ている場合もあれば、複数の人間の合成の場合もあります。そしてその理想イメージが十分大きく堅固になったとき、それは「夢・志」と呼ぶべきものになります。

キャリア形成の力が弱い人は、全般的に他の人間の働き様への関心が薄く、そこから何か自分なりの理想イメージを引き出す力も弱くなっています。

ロールモデルならそこかしこにあります。図書館には過去の偉人たちの自伝がいくらでも並べてあります。成人になってから再度、野口英世やキュリー夫人、二宮尊徳など学級文庫にラインナップされた人たちの本を読んでみると、子供のころとはまったく違った気づきがあるでしょう。

そうした偉人でなくとも、テレビのヒューマンドキュメンタリー番組では、一つの仕事に献身するさまざまな働く姿が紹介されています。新聞や雑誌にもそうした記事はたくさんあります。

結局、ロールモデルを見つける力とは、他者の生き方に関心を持ち、それを自分の生き方にどう刺激にしていくか、どう熱を帯びていくかという好奇心、求道心、感受性の問題になります。

3:機会〈Opportunity〉

私たちは環境の中に生きています。そこで第1段階として大事なことは、環境(社会や市場、職場)が自分に求めるものは何か、時代が要請するものは何かということに常に敏感にアンテナを立てることです。

そして2段階目に、自分が置かれた文脈に合わせて具体的にこういうチャンスがつくれそうだと想像し、行動を仕掛けることです。そして周囲を巻き込んでいくことです。行動には失敗や経済的な損失、精神的なダメージが生じるかもしれません。しかしそうしたリスクを負って機会をつくり出そうとする習慣を持っている人が、中長期の間に必ず自分なりの強いキャリアを築いていくことになります。

4:意義〈Significance〉

興味・関心の強い分野で職業を持てたなら、私たちは幸福です。興味・関心のない職をやることは不幸です。興味・関心は職を得る前から自然発生的に抱く場合もあるでしょうし、後付けで興味・関心を湧き起こす場合もあるでしょう。

それは男女の結婚と同じです。結婚前から恋愛しているときもあれば、見合いによって事後的に恋愛感情が芽生え結婚に至るときがあるように。いずれにしても「~が好き」「~に興味がある」というのは、職業選択の必要条件です。しかし、このことで十分であるとは言えません。

よく「好きを仕事にしなさい」と言われます。ですが、そこには落とし穴があります。なぜなら「好き」は、いとも簡単に「飽きた」「嫌になった」に変化するからです。

好きを仕事にということで趣味の分野で独立起業したものの、実際は、そのことが好きであるという愛好者の目線と、それを商売としてやる経営者の目線はかなり違っているために、うまくいかなかったという事例を私は多く知っています。情熱(一時の熱病のこともある)や思い込みで突っ走るというのは、実は不安定な状態です。――では、どんな状態が一番良いのか?

それは、「~が好き×~のため」を仕事にすることです。

「~のため」というのは、その仕事に意味・意義を与えることをいいます。例えば、家族を養うためとか、この技術を発展させるためとか、社会からこの病気をなくすためとか、そういった仕事の理由です。「好き」にこうした理由が掛け合わさるとき、その仕事へのモチベーションは安定度を増します。

そしてもちろん、その「~のため」が内から湧いて外に開いていればいるほど、つまり内発的で利他的な理由であるほど自分の仕事・キャリアは力強く、スケールを増して動いていきます。

5:統合〈Synthesis〉

そして最後の5つめの要素は、以上述べてきた1~4を統合することです。私たちはこの統合という名の交差点で、職業選択をし、仕事を行い、実績をつくり、方向性を決めてキャリア形成を進めていきます。

「キャリア」という言葉は、荷車とか荷車がつける轍(わだち)から来ています。まさにこの5つの要素「CROSS」を交差させるところで、この世界に跡を残していく営みがキャリアということではないでしょうか。

【補足】「やせた内省」と「強い内省」

ちなみに、具体的な内省の例を下にあげました。就職活動に臨む大学生の例です。5つの要素による内省の弱い・強いが見てとれます。キャリア形成力の差は、知識や技能をどれだけ持っているかというより、切り拓く意識の次元から生じてくると思います。

  • 村山 昇

    キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

    人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)をはじめ、管理職研修、キャリア開発研修、思考技術研修などの分野で企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。 GCC(グロービス・キャリア・クラブ)主催セミナーにて登壇も多数。 1986年慶應義塾大学・経済学部卒業。プラス、日経BP社、ベネッセコーポレーション、NTTデータを経て、03年独立。94-95年イリノイ工科大学大学院「Institute of Design」(米・シカゴ)研究員、07年一橋大学大学院・商学研究科にて経営学修士(MBA)取得。 著書に、『キレの思考・コクの思考』(東洋経済新報社)、『個と組織を強くする部課長の対話力』『いい仕事ができる人の考え方』『働き方の哲学』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)など。

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