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粉飾決済とは?手口と見極め方

投稿日:2017/02/28更新日:2019/04/09

大手企業における粉飾決算、不正会計が話題になっています。経営者であれば、見た目の決算を良くすることで取引を維持・拡大したい、資金調達をしたい、従業員の雇用を守りたいと考えるのは、ある意味自然なことです。

一方、取引先や関係者にとっては、粉飾決算をしている会社との取引はリスクが高いですから、極力避けたいものです。たとえば、いきなり取引先が倒産してしまい、売掛金が回収できない、あるいは依頼した業務が停滞するという事態は避けたいでしょう。転職を考えられている方も、転職した途端にその会社が不渡りを出してしまったら目も当てられません。

今回は、粉飾決算をしている会社に典型的に見られる兆候をご紹介します。これらがすべてというわけではないですが、何かしらのヒントにしてください。また、企業会計に対する意識を高めていただくきっかけにしていただければと思います。

監査法人が入っている場合

さて、粉飾決算といっても、監査法人が入っているケース(株式公開企業や大企業など)と、そうでないケースでは様相は異なります。

前者について言えば、プロである監査法人の目すら欺いた粉飾決算を、素人が有価証券報告書を見ただけで見破るのは非常に困難です。手口そのものは、後述する中小企業などにおけるやり方の拡大版といったことも多いのですが、全体像を把握しようとしても規模が大きいですし、近年はグローバル化が進んだこともあって、海外の小会社等を巧みに利用した手法も活用されるようになってきているからです。

専門家以外の方であれば、
・その企業の監査を行った監査法人の評判が良くない
・監査法人が頻繁に変わっている
・経済誌などで会計処理に関する疑念が指摘されている(例:買収した企業ののれん代が高すぎる、あるいはしかるべき減損処理がなされていないのではと指摘されている)

こうした情報に敏感になっておくと、粉飾決算に巻き込まれるリスクは低くなるでしょう。

監査法人が入っていない場合

次に、監査法人が入っていないような中小企業であれば、典型的な粉飾決算の方法として、売上げの過大計上、費用の過小計上の2パターンがあることをまずは知っておいてください。これらはいずれも利益の嵩上げにつながります。

まず、売上げの過大計上ですが、その中でもよくあるパターンは、本来は翌期に計上すべき売上げを今期の売上げとして「フライイング的」に計上してしまうことです。

また、関連会社への売上げが増える、あるいは他社と共謀して循環取引(例:業務委託を相互発注して架空の売上高を計上する)を行うという手もよく使われます。

これらを見抜く1つのコツは、売掛金の回転(回収)期間に注目することです。たとえば同業他社が2カ月程度の売掛金の回転期間なのに、その会社だけそれが半年だったらやはり何らかの理由がありそうです。前期や前々期と比較して売掛金回転期間の不自然な長期化が見られれば、それもヒントになります。

売上高総利益率(粗利率)もヒントになります。売上げを計上したのに売上原価は増えないため、この数字が上がってしまうのです。画期的な新製品・サービスを開発したというわけでもないのに、不自然に粗利率が上がっていたら要注意です。

費用の過小計上でよく使われる手口は、売上原価の在庫への付け替えです。これは専門家にはよく知られた手法であり、実行も比較的容易なことから、押さえておきたい手法です。つまり、本来はその期の費用としなくてはならないのに、費用化せず、在庫として資産計上しておくわけです。

在庫について言うと、本来は減損処理しなくてはならない不良在庫を減損しないという手もあります。いずれも利益の嵩上げにつながります。

これらも、在庫回転期間(棚卸資産回転期間)を業界他社と比較する、あるいは時系列の変化を見ることで、ある程度は不自然さに気付くことができます。売上原価が不自然に減りますから、粗利率などをチェックするもの有効です。

ただし、本来減損すべき在庫を減損しないことが適切かどうかを外部の人間が判断するのは必ずしも容易ではありません。たとえば進化スピードの速い産業機器の在庫が増えているからといって、本当にそれが不良在庫なのかは通常は分かりません。とは言え、「要注意」のフラグを立てる程度の慎重さは持ちたいものです。

その他にも、買掛金が不自然に少ない、仮払金が不自然に多い、研究開発に絡む繰延資産が不自然に多いなど、計上タイミングを操作したり、計上すべき勘定科目に計上しないといったやり方は多数あります。

これらをすべて知っておくのは難しいでしょうが、代表的なものだけでも知っておくとともに、業界平均や類似企業との比較、時系列の比較が有効なことはぜひ理解しておいてください。

最後にもう1つ意識したいのは、キャッシュを見るということです。たとえば売掛金が本当に「正しい」売掛金かを判断するのは難しいことがあります。取引先も何らかの都合上、口裏を合わせて「これは本当の売掛金です」という可能性もあるからです。売上げの場合、取引先が多く、すべてを補足できないという実務上の問題もあります。

しかし、中小企業のメインバンクが口裏を合わせて預金残高をごまかすということはまずありません。たとえば、会計上の利益が昨年並みに出ているにもかかわらず、営業キャッシュフローが大きくマイナスになったとしたら、そこには何らかの理由があるはずです。

銀行などを別にすると、取引先や入社希望者が実際のビジネスシーンにおいて粉飾決算の可能性を正面から指摘することは難しいものです。しかしそれでも、自分の身を守るためにも、今回説明したような企業数字に関するリテラシーは持っておきたいものです。
 

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