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米国のバズワード「FoMO」と「JoMO」が意味することは?

投稿日:2016/10/06更新日:2019/04/09

「FoMO」と「JoMO」――情報を見逃すことの「怖れ」と「喜び」

最近の米国で話題となっているバズワードを2つ──「JoMO」(ジョーモと発音:日本ではガソリンスタンドと取り違えそうですが)と「FoMO」(フォーモと発音)です。

私自身、携帯電話はいまだガラケーを使っています。ノートパソコンも仕事で持ち歩いていますが、モバイル通信機能はつけていません。基本的には仕事場のパソコンに向かっているとき以外はネットやメールを見ない生活です。

もちろん仕事上、知識や情報は積極的に得なくてはなりませんが、(印刷物としての)本や新聞を読み、必要に応じてネットで検索・閲読すればおおよそ困ることはありません。SNSはときどきながめるだけですが、かといって人付き合いに支障が出るわけでもありません。このような情報を取り込まない生活は意図的にやっているというか、そうすることが単純に気持ちいいのでそうしています

そんな折、2015年初めにアメリカで出版されたのが、Christina Crook著『The Joy of Missing Out: Finding Balance in a Wired World』。直訳すれば「見逃すことの喜び~接続世界のなかでバランスを見出す」といった感じでしょうか。

この本に先立つ2011年ごろ、米国で話題に上りはじめたバズワードが「FoMO」(Fear of Missing Out)でした。そう、「見逃すことの恐怖」。ネットに四六時中自分を接続していないと取り残される、情報やチャンスを逃す、他人はその間に成功に近づいていくかもしれないという焦りでした。で、その「FoMO」に対して、数年越しで出てきたのが、この「JoMO(Joy of Missing Out)」というわけです。むしろ見逃すことは喜びに通じている、という提案は私もおおいに共感。

Study to be quiet|静かなることを学べ

“Study to be quiet”

───もともとは聖書のなかの言葉らしいのですが、アイザック・ウォルトンが『釣魚大全』(1653年)で用いたことで、より一般に知られる言葉となりました。私は開高健さんの『漂えど沈まず』という本で知りました。

中学生でもわかる簡単な4つの英単語の羅列ですが、とても深い空間を持つ言葉です。「努めて静かであれ」「穏やかであることを学べ」「泰然自若と生きよ」など意訳もさまざまあります。

人生の最終目的地は、どんな国で暮らし、どんな職業に就き、どんな家を持ち、どれほどの財力を手に入れようとも、この“quietなる境地”にたどり着くことではないかと、この言葉は問うているように思えます。この場合の“quiet”とは、何も苦労がない、何も悩みがないという意味での「静か・穏やか」ではない。むしろ、いまだ苦労も絶えない、悩みもさまざまあるが、それでもおおらかに構え、それらのことに動じずに生きていける心の強さがもたらす「静か・穏やか」です。だからわたしたちは死ぬまで、“Study to be quiet”の継続なのでしょう。

ただ、わたしたちは凡夫だから、なかなかふだんの生活のうえで“quiet”になれない。むしろ“quiet”が怖いために、いろいろな刺激や興奮で時間を埋めようとする。そこでウォルトンは「釣魚」を勧める。それによって“quietなる境地”を一時(いっとき)でも学びなさいというわけです。私は釣りと並んで「登山」も強く推したい。

釣りも登山も、肉体的な負荷にさらされ、外界の状況を刻々と察知していくという意味では動的です。しかし心には忍耐と沈思が求められ、きわめて静的です。釣果や登頂といった結果は、長い長い「静かな時間」の末に、ごほうびとしてやって来る(ときに、やって来ない)。

釣りや登山が与える最高のものは、「釣れた!」「登った!」という感動よりもむしろ、おおいなる自然に抱かれながら、一個の小さな我が大きな我と溶け合っていく、そのときのすがすがしくも力強い「静かさ」を学ぶ時間ではないでしょうか。

私が生業とする人材育成研修の分野でも、最近では「リトリート(retreat)」型のプログラムがあちこちで行なわれるようになってきました。都心にあるビル内の研修室ではなく、自然豊かな山奥の場所に引っ込んで合宿をする。そして瞑想的なメニューを取り入れる。まさにそういった「静修」の時間こそ、多忙なビジネスパーソンに新たな活力と知恵をわかせるものになるようです。

もの思う秋。「静かなること」を学ぶには絶好の季節です。自分がやりやすい方法で、一度、自己の内なる世界に意識を深く遊ばせる機会を持ってはいかがでしょうか。私もこの原稿のアイデアは、大分県・九重連山を歩く時間の中からふーっとわいてきたものです。

最後に名言を3つ。

「我々が一人でいる時というのは、
我々の一生のうちで極めて重要な役割を果たすものなのである。
或る種の力は、我々が一人でいる時だけにしか湧いて来ないものであって、
芸術は創造するために、文筆家は考えを練るために、音楽家は作曲するために、
そして聖職者は祈るために一人にならなければならない」。
―――アン・モロウ・リンドバーク『海からの贈物』

「内面のものを熱望する者は、すでに偉大で富んでいる」。―――ゲーテ

「僕らはたいてい、部屋にいるときよりも、人と交わっているときのほうがずっと孤独である」。―――ヘンリー・デイヴィッド・ソロー『森の生活』

  • 村山 昇

    キャリア・ポートレート コンサルティング 代表

    人財教育コンサルタント・概念工作家。 『プロフェッショナルシップ研修』(一個のプロとしての意識基盤をつくる教育プログラム)をはじめ、管理職研修、キャリア開発研修、思考技術研修などの分野で企業内研修を行なう。「働くこと・仕事」の本質をつかむ哲学的なアプローチを志向している。 GCC(グロービス・キャリア・クラブ)主催セミナーにて登壇も多数。 1986年慶應義塾大学・経済学部卒業。プラス、日経BP社、ベネッセコーポレーション、NTTデータを経て、03年独立。94-95年イリノイ工科大学大学院「Institute of Design」(米・シカゴ)研究員、07年一橋大学大学院・商学研究科にて経営学修士(MBA)取得。 著書に、『キレの思考・コクの思考』(東洋経済新報社)、『個と組織を強くする部課長の対話力』『いい仕事ができる人の考え方』『働き方の哲学』(以上、ディスカヴァー・トゥエンティワン)など。

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