比較的最近、損益計算書(P/L)に登場した利益に「包括利益」があります。P/Lでは「当期純利益」(※1)よりも下に位置づけられることから「当期純利益」との違いが気になる方もいるのではないでしょうか?
「当期純利益」は、会社が一定期間(例:1年)の本業及び本業に付随する事業も含めた事業活動から獲得された価値の増加分です。これに対して、「包括利益」は一定期間における会社の純資産の増加分を表します。
「純資産」が増加する要因は大きく3つあります。
1つ目は、株主による出資です(参照:資本金と資本剰余金の違いって何?)。
2つ目は、当期純利益による増加です。当期純利益から配当など社外流出分を控除した内部留保が利益剰余金等を増加させることで、純資産が増加します。
そして3つ目が「その他の包括利益」の増加です。この内、当期純利益とその他の包括利益がP/Lを経由します。つまり、当期純利益と包括利益の関係を簡潔に示すと、
包括利益 = 当期純利益 + その他の包括利益
になります。「その他の包括利益」は、
- 保有株式の含み損益(投資有価証券等評価差額金)
- 為替予約、通貨オプション等の金融商品の時価差額(繰延ヘッジ損益)
- 退職給付に係る調整額
- 海外子会社への投資後の為替変動(為替換算調整勘定)
- 保有土地の含み損益
等の当期間中の増減が主な内容です。これらはいずれも株価、為替、金利等の変動が発生原因であり、企業努力の結果と位置付けるかは意見の分かれるところです。しかし、国際的な流れとして、会社の事業活動の結果に加えて株価、為替、金利等による保有する資産・負債の時価の変動も含めた利益である包括利益が重視されていることに対応して、財務数値の国際的な比較可能性の向上などを目的として2011年3月期から日本に導入されました。
なお、現在、包括利益は有価証券報告書の連結財務諸表に限定して開示が求められており、個別財務諸表や株主総会招集通知に添付される会社法に基づく財務諸表(連結、個別とも)には強制適用はされていません。
※1: 平成27年4月開始事業年度以降は「親会社株主に帰属する当期純利益」へ名称変更されています
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