今回は資本金と資本剰余金の違いについてです。資本金は知っているけれど、資本剰余金はよく知らないという方もこの機会にざっくりと資本剰余金ってこんなものという理解をしていただきたいと思います。
資本金とは、株式会社の設立や株式の発行をした際に、株主が払い込んだお金のことです。しかし、株主が払い込んだお金が全額資本金となるかというとそうではありません。詳細は会社法の規定によりますが、株主が払い込んだお金の内、1/2までは資本金とは別に資本準備金(例えば、株主からの払い込みが100であれば50までは資本準備金)とすることができます。資本準備金は、当面は資本金ではないけれどもいざとなった時には資本金へ振り返るリソースにもなります。
会社法上の違いはあるにせよ、実務上、資本金と資本準備金の違いはそれほど意識する必要は無いと思われます。会社の債権者保護の観点からは、一般的には資本金は大きい方が会社は倒産しにくく、より安全性は増します。一方で、資本金の額を基準として課される税金(均等割り、外形標準課税、消費税の取り扱い等)の存在や外部会計監査の義務の負担などを考慮すると、会社としては不必要に資本金の額を大きくするのも得策とは言えません。資本準備金は、債権者保護とコスト負担の折衷案の産物と言えるかも知れません。
さて、貸借対照表(B/S)では、資本剰余金には「資本準備金」と「その他資本剰余金」が含まれます。「剰余」とは、余分、バッファーと言う意味です。つまり、資本剰余金は「資本としての性格を持った余りのお金」という意味です。会計では、会社が事業活動によって生みだしたお金(利益)か、株主からの出資などの資本取引から得たお金かは明確に区分されます(資本取引損益取引区分の原則)。すなわち、利益から得られた「利益剰余金」とは異なり、資本取引から発生した剰余金という意味で資本剰余金と表示されます。資本準備金以外の資本剰余金(その他資本剰余金)を例示すると以下になります。
・資本準備金の取り崩し額
・自己株式処分差額(自己株式を譲渡した際の差損益)
・組織再編における増加資本のうち、資本金や資本準備金に組み入れなかった金額
資本金や資本準備金は配当原資にはできませんが、その他資本剰余金は配当金とすることが認められています。この点が、資本準備金とその他資本剰余金の大きな違いであり、「剰余金」とされる所以とも言えるでしょう。
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