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見事!とっても「ルルルン」なコーズマーケティングと顧客拡大再生産

投稿日:2015/10/08更新日:2019/04/09

「顧客ロイヤルティーの向上」は企業の永遠のテーマ。達成できれば、離反者の穴を埋め合わせる新規獲得コストをかけなくてもいいし、黙っていても買い続けてくれるなら過度な顧客維持コストの投下も必要ない。さらに、「お友達紹介」などで新規顧客が取れればウハウハ。しかし、世の中そんなに甘くない。それは企業にとって、ただの画餅・・・ではなく、実にうまくいっている事例があるのだ!

大人気・毎日使うフェイスマスク「ルルルン」は「AMTUL」!

フェイスマスク「ルルルン」は化粧品ベンチャーのグライド・エンタープライズが2011年より発売している。従来のフェイスマスクユーザーは、特別な日の前に気合いを入れて1枚1,000円以上の商品を使ったり、週一回程度、思いついたときに1枚100円ぐらいの商品を使ったりと、単発で単品利用することが主だった。それを同社は「フェイスマスクは基礎化粧品である」というコンセプトの元、日常のケアに組み入れられるよう、1パック42枚入りで1,500円(税別)というお手頃なパッケージに仕立て、「ルルルン」というネーミングで発売した。そのコンセプトとパッケージングが奏功し、フェイスマスク市場全体の伸びにも後押しされて、日経MJ2015年9月25日号の記事によれば3年3ヶ月で累計1,000万個の販売を記録。特に今年度の伸びは対前年2.5倍という勢いだという。

顧客が商品の購入に至るまでの態度変容を表したモデルで最も有名なのは、「AIDMA」だろう。Attention(認知)→Interest(興味)→Desire(欲求)→Memory(記憶)→Action(行動)である。しかし、このモデルは基本的に初回購入までしか扱っていない。それに対し、「AMTUL」は反復購入から優良顧客化までを表している。即ち、Awareness(認識)→Memory(記憶)→Trial(試用)→Usage(日常利用)→Loyalty(優良顧客化)である。

従来のフェイスマスクが単品・単発利用であったのに対し、「ルルルン」は大容量パックで日常利用可(Usage)を図っているところがキモである。

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「ルルルン」のコーズ・リレーテッド・マーケティング

日常利用まで到達しても、その先、顧客が惰性で買い続けるようになっては、いつブランドスイッチが起きてもおかしくない。顧客自身に自覚的にロイヤルティーを感じさせることが肝要だ。その一つの策として、「ルルルン」はコーズ・リレーテッド・マーケティング(CRM)を展開している。CRMはフィリップコトラーが「マーケティング3.0」でも取り上げたマーケティングの目的である「世界をより良い場所にすること」を実現し、消費者と企業が対等にコラボレート(協働)して新たなものを産み出したり、問題を解決していく「多対多の協働」を行うために最も適した手法といえる。分かりやすい他の事例でいえば、「ヴォルヴィック」の「1リッター for 10リッター」だが、単なる企業の社会貢献(CSR)と異なり、社会貢献と自社のマーケティング目的達成が両立していることが肝要だ。

「ルルルン」は「潤す」という商品の特性と整合したコーズ(社会的な大義)として、「世界を変えるルルルンPROJECT」を立ち上げている。具体的な活動としては、アフリカ南部・ザンビアにある、妊婦が出産準備を行う「マタニティーハウス」に、「安全な水を供給する水タンク」を設置している。「ルルルン」の売上の一部が国際協力NGOを通じて水タンク設置事業に使われるというしくみだ。自らの購買が国際貢献に使われると知れば、フェイスマスクを日常利用する習慣が付いたユーザーは、「どうせならこのブランドを使い続けよう」と思うだろう。

推奨促進というロイヤルティー向上策

「ルルルン」が行っているもう一つの優れたしくみが、「推奨」である。友人・知人に対する「推奨行為」は、ロイヤルティーの高い顧客でなければまず、起こさないといえる。なぜなら、万が一、贈った相手が気に入らなかった場合のリスクも飲み込んでいることを表しているからだ。つまり、推奨促進施策がロイヤルティーの向上につながるのは、人に贈る時点で、顧客は自身のロイヤルティーを自覚することになるからだ。

しかし、自社顧客全体に無差別で行われる、よくある「お友達紹介キャンペーン」は危険だ。人に推奨するということは、前述の通り(潜在的にでも)リスクを取ってもいいと思うぐらいその商品・ブランドを自分が気に入っていることが前提であるため、そのレベルに無い顧客にとってはウザイ以外の何物でもない。「何であんたに知り合いを紹介しなくちゃならないのよ!」と、逆効果の離反を招きかねない。

「ルルルン」のユニークなところは、その「顧客が知人・友人に贈る仕掛け」がうまく設計されていることだ。同商品には「バランスうるおい」「もっちり高保湿」「さっぱり透明感」の3タイプがあるが、各々を1週間分7枚×3パックをセットにしたギフトパッケージを作っている。それをPLAZA・MINIPLA・LOFT・shop inなど全国のバラエティストアで展開している。あえて化粧品のチャネルを使わず、女性が「ちょっとしたプレゼント」を探すのによく用いられる店舗を販路としているのが鋭い。

さらに、「地域限定ルルルン」という、沖縄・北海道・京都・ハワイという女性好みの観光地で販売し、7枚入り×5パックという、「バラして配る」のに最適なパッケージで展開している。贈られた側は、AMTULでいえば、Awareness(認識)→Memory(記憶)→Trial(試用)まで一気に進む。気に入れば、次からは自分で買って、日常利用するようになるはずなので、非常に効率のよい顧客の拡大再生産方法だといえるだろう。

「ルルルン」は前述のように、まず、世の中のフェイスマスクの常識的な使用方法やパッケージングを変えた。そして、メガブランドや大企業が行うものというイメージがあるコーズ・リレーテッド・マーケティングをサラリと行い、顧客に紹介謝礼などインセンティブを与えてキャンペーン的に行うことが多い推奨促進を、顧客自らが買って配るという行動を引き出している。いずれも従来の常識にとらわれてない、「ルルルン」と軽やかで自由な発想によって産み出されている様子が伝わってくるのがすばらしい。

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