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前回は「解釈する」ことの重要性について言及した。事実、データ、状況をふまえ、そこで発生していることの意味を語る、「要するに何」を紡ぎ出すことを「解釈する」ことと定義した。これこそが、ビジネスパーソンの付加価値の源泉であり、事実を事実のまま伝えても付加価値は低い、そんな話を展開した。今回は実際に解釈する際のポイントについて述べたい。

解釈する際にまず着目すべきは、「差」である。全く同じ物や事を並べて、何かを考察するのは極めて難しい。目標値との差、ベンチマークとの差、過去との差など現状を深く理解するために、何らかの差を発見し、そこから考える癖をつけるのだ。

自分自身が深く理解しているビジネスに関する数字をいくつかの頭の中に持っているだけでも、その数字との差をみることから、理解が深まったり、逆に違和感を覚えたりして、そこから深い解釈が生まれるといったことがある。

例えば、自分の会社の属している業界の平均的な利益率を大きく上回る企業が存在した時、その平均値が頭に入っている人と入っていない人とでは解釈の深みは大きく異なるだろう。

データ分析をしている中で直感的に理解しがたいグラフ上のある場所に、データがプロットされると、異常値として棄却してしまう人も多いだろう。

時に、それらのデータが単純な異常値ということもあるが、そこを深掘りしてみると深い解釈が生まれることもある。異常値と思われるデータを外して解釈するのと、外さないで解釈するのとでは何が違うのか、そんなことをぜひ考えてみてほしい。

時系列のデータなどをみる場合には変曲点、つまり上向きから下向き(またはその逆)に変化のトレンドが変わるタイミングに注目するのも解釈を深めるポイントだ。上昇トレンドが下降トレンドに変わる時、何が起こっていたのか、予兆情報はなかったのかなどぜひ考えてみてほしい。

表計算ソフトで相関を計算すると、因果関係がないのに、高い数値になることがよくある。ソフトクリームの販売とビールの販売の相関などの事例はその典型だ。当然そこには気温や湿度という第三因子が介在しているが、このような第三因子に気がつかないで解釈すると怖いことになる。

例えば自社製品の売り上げが落ちた理由として競合製品の台頭が挙げられるなどのことは多い。しかし、よくデータを見ると競合製品が発売される前から売り上げがダウントレンドになっており、少なくとも初期の売り上げ減少は競合製品では説明がつかないなどのことはよくある話だ。現象に対して表面的に気がつくことのほかに、何かないかという疑問を抱き続ける姿勢を持つことが大切だ。

数字データを扱っていると、定性情報に目が届きにくくなりがちだ。まず自ら現場に行く。顧客の声を直接聞く習慣を持つことは何よりも大切にしてほしい。現場をよく知っている人の話を聞いてみることも、よい解釈のためには必要だ。

自分の体験、そして詳しい人が感じていることと、数字から得られた解釈が整合するかどうかを確認するのだ。時に、定性データは主観、直感などと上司から言われ、重きを置かれない場合もあるが、自信をもって活用してほしい。

ビジネスは意思決定の連続と言われるが、意思決定の前には必ず何らかの解釈をするというフェーズがある。ぜひ解釈能力を高める努力をしていただきたい。

 

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※この記事は日本経済新聞2013年10月2日に掲載されたものです。
(Cover photo: shutterstock / Ismagilov)

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