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ストレングス・ファインダーで発見する、ヒトへの関心がなかった自分の変化——プレーヤー時代

投稿日:2024/07/29更新日:2024/07/30

「ヒトに関心がなかった自分がこんなにも変われたとは驚きです」

懇親会で発したある一人の卒業者の発言に、「実は自分もそうなんですよ」と複数の卒業生の間で熱い議論が交わされた。「わたしはヒトには関心ありません」とか「ヒトに対する感度が低いのですがどうしたらいいでしょうか?」という悩みをもつビジネスパーソンは、私が教壇に立つグロービス経営大学院でもある一定数いる。
今回、ヒトへの向き合い方の変遷について、自己理解を深めるツールであるクリフトンストレングス・テスト(ストレングス・ファインダー(*1))によるリーダーの資質(強みの源泉)の発揮の仕方に紐づけながらグロービス経営大学院卒業生3人にインタビューを試みた。

今回インタビューさせていただいた3名のプロフィールを簡単に紹介したい(以下敬称略)。


青柳建夫:
現在、自動車会社のシステム系関連のマネジメント業務(メンバー43名)に従事。

上位5資質:個別化、着想、成長促進、学習欲、原点思考

植木順一:
現在、化学品会社のグローバル販売責任者(メンバー数非開示:10ヵ国13拠点のマネジメント)。21年社内社長表彰受賞。

上位5資質:自己確信、達成欲、未来志向、個別化、戦略性

西川正芳:
現在、化学系会社の生産技術関連のマネジメント業務(メンバー約10名)。

上位5資質:最上志向、未来志向、着想、戦略性、親密性


第1回は、3人が役職につく前、プレーヤーとしてどのような意識で仕事をしてきたのか聞いてみた。

「回復志向」上位のプレーヤー時代

青柳:昔から「特異な存在でありたい」という気持ちが根底にあって、自由な発想で課題解決など「自分にしかできないこと」をして人の役に立ちたいという思いで仕事をしていた。昔の自分の口癖は、「やっておきます」「考えます」「まとめます」であり、自分で動いた方が早いし楽だし成果も出しやすいと考える傾向があった。自分の6番目の上位資質である「回復志向」(*2)が強かったと思う。若いときは、常に自分起点で、自分が納得しないと業務に身が入らないこともよくあった。

Q:ご自身の上位資質に「成長促進」(*3)があるが、他者への成長支援などはしていなかったのか?

青柳:どちらかというと、昔の自分は他人のために時間を使うのはもったいないと思っていた。この上位資質を活かすようになったのはマネジャーになってからだ。

「着想」上位のプレーヤー時代

西川:自分の場合は、「着想」(*4)が上位資質であることからもわかるように「知的好奇心」が強い生粋のエンジニア気質。仮説検証を繰り返す中で自身のアイデアや着想で狙った結果に到達することが本当に好きであり、自分にとって大切な価値観だった。自分の知的好奇心を満たすことが一番重要なので、この欲求を満たせる本質的な仕事以外には関心が低く、20代の頃は社内の人間関係で非常に苦労した。

Q:人間関係に属する上位資質に「親密性」(*5)があるが、ご自身の若い頃の原体験でつながってくる出来事はあるか?

西川:破天荒と言われてもおかしくない20代前半の頃の自分は、上司や関係者からは使いにくい人間だったかもしれないが、当時出会った今でも尊敬する上司に『信頼』の大切さを教えてもらった。この人のためならと思える仕事の質の高さと自分に足らない部分を痛感し、いつかは自分もこうありたいと思えた出会いだった。

「達成欲」上位のプレーヤー時代

植木:自分はプレーヤーの時から、売上目標にしても大きなトラブルに直面したときにしても、何が何でも成功させ達成するんだという「達成欲」(*6)の強さで、自分を信じてやってきた。他人の目など気にせず、新しいやり方で達成したという気持ちが強かった。

Q:高校・大学と強豪校で野球をやられていて、大学のときにはホームラン王、打点王、ベストナイン 4回も獲得されている。野球をつうじてチームへの意識などは醸成されたのか?

植木:チームに4番バッターばかり揃えても勝てないというが、本当にそのとおりで、個々のメンバーの良いところをうまく組織の役割に当てはめ、組織としての最適化をはかるという考え方(「個別化」(*7))は、当時の経験がベースにある。しかし、会社に入ってプレーヤーのときは、他人には全く関心が向いていなかったのが正直なところ。

「人間関係構築力」という強みの源泉をまだ活かしきれていない

3人に共通するのは、会社でプレーヤーのときは、個人で成果を上げることにとにかく必死で、他者を巻き込むというような意識は低かったことだ。
一方で、「成長促進」(青柳)、「親密性」(西川)、「個別化」(植木)といった人間関係構築力に分類される資質の萌芽を一部確認することができる。ただ当時は、まだそれらの資質に対する本人の認識は低く、ほとんど発揮されることがなかった。

ここからメンバーを率いる立場に立った時、どのようにヒトへの意識・行動が変化していったのだろうか。次回、詳しく見ていこう。

(次回へ続く)


(*1)「ストレングス・ファインダー」:10万件以上の「才能」についてのインタビューデータから、強みのもととなる34通りの「才能」を抽出。弱みを克服するよりも強みを活かす方が様々なメリットがあることが研究で示されている。強みのもととなる資質を実践を通じて磨いていくことではじめて、安定した「強み」となる。上位5資質がレポートされるが、自然な形で頻繁に、強力に、無意識に表れる考え方、感じ方、行動を上位資質といい、それは5つとは限らない。その人の「才能」は長期的には変わらないとされているが、変化があった場合にはその要因を分析することが大切。

(*2)「回復志向」:問題を解決するのが好きで、どこに問題があるのかを探りあて、それを解決することに長けている。

(*3)「成長促進」:他の人の持つ可能性を認識し、それを伸ばす。彼らの小さな進歩の兆候を見逃さず、成長の証に満足感を得る。

(*4)「着想」:新しいアイデアを考えるのが大好き。見た目には共通点のない現象に、関連性を見出すことができる。

(*5)「親密性」:他の人たちとの緊密な関係を築くことに喜びを覚える。目標達成のために仲間とともに努力することに深い満足感を得る。

(*6)「達成欲」:並外れたスタミナがあり、旺盛に仕事に取り組む。自分が多忙で生産的であることに、大きな満足感を得る。

(*7)「個別化」:一人ひとりが持つユニークな個性に興味をひかれる。異なるタイプの人たちの集団をまとめ、生産性の高いチームを作ることに長けている。

(©2000, 2019  Gallup, Inc.)

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