レナウンの倒産はコロナの影響なのか?

先日、アパレル大手のレナウンが民事再生を申請しました。負債総額は138億7900万円とのことです。メディアによれば、コロナの影響によって消費が著しく減少したことが原因と報じられています。果たして、レナウンの倒産は本当にコロナの影響と言えるのでしょうか?同社の有価証券報告書をチェックしてみました。 

継続した経営不振

(2019年に決算期を変更したため、2019年12月期は10ヵ月決算となりました。)

直近5期間の内、営業利益は3期赤字、営業キャッシュ・フロー(CF)は3期赤字です。営業利益の赤字は、本業から儲けを得られていないことを意味します。また、営業CFのマイナスは会社からおカネが流出している状態を意味し、継続的な営業CFのマイナスは早晩経営が行き詰まるサインとなります。レナウンは、当期以前からそれに近い状態にあったということが分かります。

長年にわたり経営不振が続いたレナウンは、2010年にヨーロッパなどのアパレル会社を次々に傘下に収めていた中国企業の山東如意科技集団有限公司(山東)の資本参加を受け、2013年には連結子会社となり、経営の立て直しを図りました。しかし、直近5期間の決算数値から評価すると、山東グループの支援を受けながらも経営再建は難航していたことが伺えます。

キャッシュ減少の要因

また、キャッシュ(現金及び預金)が急激に減少しています。2019年2月期では100億円前後(手元流動性は50~60日程度)でしたが、2019年12月期では一気に53億円(手元流動性は30日程度)まで減少しています。しかも、キャッシュの内約20億円は短期借入金等の担保に供されており、財務制限条項に抵触した借入金が約6億円ある等、実質的な手元流動性はさらに悪化していると考えられます。

レナウンの連結キャッシュ・フロー計算書でキャッシュの減少要因を確認すると、売上債権の増加によるキャッシュの減少が約22億円あることが分かります。売上債権は売上高の増加に比例して増加しますが、レナウンの売上高は減少傾向にあります。それにもかかわらず売上債権が増加しているのは、売上債権の回収が遅延していることが読み取れます。

同社の有価証券報告書のデータから売上債権回転期間を算出すると以下の通りです(※)。

前期から当期にかけて売上債権の回収期間が長期化していることが分かります。

親会社との関係

 2019年12月期の財務諸表には、継続性の前提に関する注記(GC注記)が記載されました。GC注記によれば、2019年12月期の営業赤字の大きな要因は、「山東のグループ会社である恒成国際発展有限公司(恒成)との取引で発生した売掛金の回収遅延により計上した貸倒引当金53億円」とあります。恒成に対する売掛金の回収は山東が保証していますが、依然未回収であり、レナウンの資金繰りを悪化させることになりました。

親会社による債務保証が履行されないのは異例と言えるでしょう。その背景には、度重なるM&Aにより資金繰りが悪化した山東の都合があるとも言われます。このような状況の中で、2020年3月の株主総会では、山東がレナウンの会長、社長の再任に反対し、レナウンと山東の関係悪化が懸念される事態となりました。

まとめ

レナウンは、依然として百貨店に対する売上が全体の6割弱を占めています。これに対してEC・通販は3%に過ぎません。コロナの影響により百貨店等が休業し、消費が激減したことが倒産の引き金となったことは間違いないでしょう。しかし、それ以前にアパレル事業を取り巻く環境変化に対応できず、新ブランドの設立やビジネスモデルの変革によって経営を立て直せなかったことが根本的な問題ではないでしょうか。会社の倒産の真の要因を見極める上でも、決算数値の読解力は大切ですね。

 

※貸倒引当金設定前の金額(額面)で算出。なお、手元流動性と同様、2019年12月期は10ヵ月決算のため、1日当たり売上高は306日で計算しています

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