今、行政の在り方に変化が求められる中で、様々な新しい取り組みにより札幌の地域活性化の中枢を担っている「札幌市」。その中心で活躍する経済観光局 産業振興部長の一橋基氏が、行政と地域との関わりやこれからの札幌市を担う若い世代にかける想いとは。
「行政が担う」から「共創の時代」へ
篠田:最後に、一橋さんの「地方創生」に対する考えをぜひお伺いしたい。
一橋:「地方創生」自体が東京の人たちの考えだと思ってしまう。私たちは別に「地方創生をやっている」とは思っていなくて、自分の住んでいるところで自分の町を元気にしたくてやっていることなので、それを地方創生って言われるのはなんとなく違和感はある。
一方で、地方も地方創生に寄りかかっている部分が少なからずある。中央から予算や支援をもらえるからだ。こうした、いわゆる委託・受託の関係では中央(東京)を見ている部分もあるけれども、一方で札幌はIT産業やクリエイティブ産業で何か新しいことをやっていくときには、あまり中央を意識してない。「自分たちがやりたいことを一緒にできるところと直接つながりたい」という思いが強く、福岡などの地方都市や海外と直接つながっていくこともある。自分たちがやりたいことをきちんと考えて、自分たちがやりたい相手と直接つながってやっていく。これからはそこが一番大事かなと思っている。
篠田:外から「地方創生」を掲げて入ってくる方についてはどう思うか?
一橋:本当はシーズ(=アイディア・新しいビジネスの芽)もニーズ(=需要)も我々が持っていて、そこに対してのアプローチであればもちろんお話をお聞きしたい。けれども、単に自分たちの持っているものを売りたくて来る人が多くて、それも「モノを売りたい」というパターンと「自分たちがやりたいことが、ここならできそうだ」という2パターンがある。前者の「自分たちがつくった○○ソリューションがあるので、これを札幌市で使うとこんないいことがある」というタイプのものには全く心惹かれないが、後者の「寒冷地でないとできない△△のプロジェクトをやりたい」ということであれば、100パーセント支援するし、ぜひ一緒にやりたいと思う。ぜひ「札幌で一緒につくっていきましょう」という想いを持った方をお待ちしている。
まとめ
行政の在り方が変化する中で一橋氏が大切にされていることは、外とのつながりを活かして共創していくこと。その根底には、「若い人たちが挑戦できる場をつくりたい」「地元の人たちの喜ぶ顔が見たい」という温かな想いがある。こうした想いを持った大人たちが「産官学」の壁を越えて強い絆を持つ札幌市だからこそ、今後も新しい潮流や活動が生まれてくるに違いない。