ミドルリーダーに立ち塞がる「上位層」をどう巻き込むか 

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「上司の巻き込み」こそが大きなカベ

上位層プロジェクトを成功に導くために、外部環境の変化を押さえつつ、必要なリソースを整えていくことは言うまでもなく重要です。これまでの連載でお伝えしてきた通り、「外部と内部の整合」というキーワードは、経営戦略の観点において、極めて重要なポイントになります。しかし、皆さんがミドルリーダーという立場であれば、もうひとつ大きな要素が気になるでしょう。それは、上司や経営陣に位置する「上位層」の存在です。

会社や上司がこのプロジェクトに対してどのような期待値を持っているのか。どれだけ認めてくれていて、支援してくれるのか、という点はミドルにとっては重要問題。どれだけ良い戦略が描けていたとしても、それが上位層の構想する方向性と整合しなければ、そして、彼らからの協力を得られなければ、プロジェクトはうまく進みません。

では、上位層との整合を図るために、何が重要なのでしょうか?「上位層」と一口にいってもいくつかの対象があります。ひとつは、「経営」や「経営者」というレイヤーです。つまり、経営がどちらの方向に行こうとしているのかを読み取る、ということです。

もう一つは、一段下の直接の「上司」に対する働きかけです。ここではさらに、上司がそのプロジェクトにかけている期待値や意味づけを理解すること、そして上司とどれくらいの頻度で方向性のすり合わせや実行段階での巻き込みを行っているか、という点に分けて整理してみました。

この視点をもとに、成功したプロジェクトと失敗したものの差異をアンケートで調べました。すると、成否に大きく影響があった項目として浮かび上がってきたのは、「上司を実行まで巻き込めているかどうか」という直属の上司との関係性に関わる項目でした。
グラフ
このアンケート結果は私たちにとって、ある意味想定通りではありました。方向性をいかに理解していたとしても、上司を巻き込み、サポーターになり続けてもらうというのは並大抵のことではありません。私たちの個人的な経験に照らし合わせても、この項目の難易度は最も高いという印象でした。

そして、実際にインタビューをして気づいたのは、巻き込んでいた「つもり」でも、巻き込み不足でプロジェクトがうまく進まなかったことの多さです。確かに冷静に考えてみると、「巻き込む」という言葉は非常に抽象度が高く、具体性に欠けます。単にプロジェクトにかける自分の熱い想いを伝えればいいわけでもなさそうです。

では、このプロジェクトの成否を決める「巻き込み」ということの正体は何なのでしょうか?この点について、ミドルリーダーに対するインタビューを通じて解きほぐしてみました。

コミュニケーションの「頻度」の勝負

まず「巻き込み」に対して、ひとつ浮かび上がってきたポイントは、「上司とのコミュニケーションの頻度」です。やはり成功しているプロジェクトにおけるミドルリーダーは、上司とのコミュニケーションの頻度が高いのが特徴です。週に何回か、ということではなく、「何か変化があればすぐに連絡を取る」という姿勢です。インタビューからは、メールやミーティングといった公式のツールだけでなく、各種メッセンジャーのアプリなどを通じて、身軽なコミュニケーションを多用している姿がよく伺えました。

ではなぜこの「頻度」が重要なのでしょうか。それは、経営を取り巻く環境が絶えず変化しているからです。その変化に伴い、プロジェクトの期待値や意味合いも刻々と変わっていきます。当初は上司にとって重要な意味合いを持っていたプロジェクトであっても、変化に伴い脇に追いやられることも出てくるでしょう。上司も私たちと同じ構図で、時には私たちには見えないところで環境変化に伴うプレッシャーを受けている存在でもあるのです。そういった構図を前提に考えなければ、「あの時はOKと言ったはずじゃないですか!」というような不毛な議論に陥ってしまうのです。実際にインタビューで聞いた失敗事例には、プロジェクトの初期段階で上司と期待値を握ることができたことで安心してしまって、その後のコミュニケーションを怠り、結果的には梯子を外される格好になった話が複数ありました。

また、言うまでもないことですが、コミュニケーションの頻度の高さには、上司との環境変化のすり合わせ、という側面のみならず、「上司を動かす」という効果があることも忘れてはなりません。コミュニケーションの頻度が高くなれば、自ずと「自分はどうしたいのか」ということを率直に伝えられる機会も増えるでしょう。インタビューでは、進捗状況の共有に含める形で、「自分はこうしたい」という自分の想いを語ることを意図的に繰り返すことで、結果的に上司にこちらが望むような形で動いてもらったストーリーを聞くことができました。

では、コミュニケーションの頻度を高めるためにはどうしたら良いのでしょうか?そのためのコツとして、先述の通りコミュニケーションツールの工夫ということがあるでしょう。世の中には便利なツールがたくさんありますので、それを使わない手はありません。「いいね」やスタンプだけでも意思疎通はできてしまいます。コミュニケーションに気軽さが伴えば、頻度は自ずと高くなり、意思疎通不足のリスクは小さくなるでしょう。

他方で、企業や上司によってはあまり軽いコミュニケーションスタイルを好まない場合もあります。そういうケースにおいては、短時間でもいいのでミーティングを定例化することが大事です。定例化の良いところは、「敢えて話そうと思わないような些細な情報をお互いに交換できる」ことにあります。そういう何気ないタイミングで軽いアップデートをしておくことが実は重要である、ということを多くのリーダーから聞くことができました。

上司の巻き込みに際して何より大切なのは、コミュニケーションの「頻度」です。ややもすると、報告のための資料のクオリティなど、「質」にこだわってしまうケースがありますが、質を犠牲にしてでも頻度の方が圧倒的に重要なのです。

敢えて上司に花を持たせる気概

もう一つ、上司の巻き込みにおいて私たちが発見したことは、プロジェクトの提案内容や報告事項に、「敢えて上司の意見を受け入れる余地を残しておく」、ということです。プロジェクトリーダーになると、過度に自分で全てを完璧にしたくなるもの。しかし、完璧であるほど、上司の「当事者意識」は薄くなりがちです。些細なことでもいいので、上司が当事者として「自分で決めさせるプロセス」を残しておくのです。

例えば、プロジェクトのネーミングを決めてもらう、という話もありました。重要なポイントについて、自分では落とし所を持ちつつも、敢えてオプションを提示しどれが良いのかの決定を委ねたというストーリーも聞くことができました。こういった「一手間」によって、上司が「自分が決定した」という心理的コミットメントを引き出すのです。

もちろん、手柄の一部が上司のものになってしまう可能性もあるでしょう。しかし、成功する前から「誰の手柄なのか」というような余計なことを考えているプロジェクトがうまくいくはずはありません。真剣に事業の成功、成長を願うのであれば、敢えて「上司に花を持たせる」くらいの気概で事に臨むべきなのかもしれません。

上司を決定に巻き込み、コミットメントを引き出すことによってプロジェクトの推進力を得る。このようなシンプルな方程式が、成功したプロジェクトの共通項にあるのです。

このリサーチを始める前は、私たち自身のプロジェクトにおいても、上司からのサポートを十分に得ることができず、もどかしい思いをしていたこともありました。しかし、インタビューを通じて、自分たち自身の行動の至らなさに改めて気づき反省しました。ここにまとめたことは、特に目新しいことはないかも知れませんが、一方で極めて汎用性の高い力強い原則だと思います。特に、コミュニケーションの頻度などは、最たるものでしょう。あとはやるかやらないか、だけの差です。

もし上司の巻き込みに悩まれているような方がいれば、これらのシンプルな原則に是非チャレンジしていただければと思います。おそらく手応えは思ったよりすぐにでてくるはずです。

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