社内の反対勢力に向き合うための2つのポイント 

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意外に疎かにされがちな「内部」の視点

よい戦略を作り、プロジェクトを成功に導くために、ミドルリーダーは何をすべきなのか。私たちはその問いに対して、「4-VIEWs」という4つの押さえるべきポイントを提唱しました。今回はそのうちの1つである「内部環境の調整」、つまり社内のリソースや実行能力どう把握し、どう整えていくべきか、どのように調整をしていくべきかという点を深めていきます。

前回は外部環境、その中でも特に「顧客」というキーワードに焦点を当ててミドルリーダーのポイントを整理しましたが、顧客ニーズをどれだけ理解していてもそのニーズに応えるだけの実行力がなければ、単なる「絵に描いた餅」になってしまいます。そんなことは百も承知なのですが、それにもかかわらず社内のリソース整備は疎かになりがちです。

実際私たち自身を振り返っても、リソース調整に失敗して頓挫しかかったプロジェクトは数知れず。特に大きなビジネスチャンスが目の前にあるのに、リソース不足で身動きが取れなくなってしまった時の脱力感は言い尽くすことができません。そんな想いを胸にしながら、私たちはミドルリーダーたちにアンケート、インタビューを行いました。

「反対勢力へのアプローチ」こそがキモ?

まず、アンケートに先立ち、「内部環境の調整」という非常に大きなキーワードを私たちは5つのカテゴリに分解しました。

1つ目はリソースの見極めや把握、という観点。思い描く戦い方に対して、何がどれだけ足りていないのか、という点を素早く的確に把握出来ているか、という点になります。

2つ目はリソース調達という点です。不足しているリソースに対して、優先順位を意識しながら外部に働きかけていく、というポイントです。

さらに、単にリソースがある・ない、というだけではなく、既存のリソースをどう有効活用していくか、という点も重要な論点になるでしょう。それをリソースの「育成」とリソース同士の「協力関係の樹立」という2つのポイントに分けました。

そして言うまでもなく、部やチーム内だけの調整のみならず、自社内における外部関係者、特に「反対勢力との調整」も大事な論点になります。それを最後のチェックポイントとして、ミドルリーダーにアンケートを取ってみました。

集計結果は以下の通りとなりました。

成功したプロジェクトと失敗したプロジェクト

「反対勢力へのアプローチ」は、成功と失敗の間に相対的に大きなギャップがあることがわかります。さらに、失敗したプロジェクトにおける自己評価が最低であることもわかります。何か新しいことを始めようと思った場合、どんなプロジェクトであっても快く思わない関係者は出てくるもの。この反対勢力といかに折り合いをつけるのかが、プロジェクトの成功につながる1つの重要なファクターであると言えそうです。

しかし、ミドルリーダーにとって「反対勢力との調整が何より重要」と言われても、ピンとくる人はいないでしょう。「それが出来れば苦労しない」という声も聞こえてきそうです。そこで、私たちは、このポイントに絞って、具体的な行動のヒントをミドルリーダーたちからインタビューを通じて生声を拾ってみました。

1.「ネガティブな反応をせざるを得ない組織」を合理的に理解する

最初に理解しておく必要があるのは、誰も自分のことを「反対勢力」だとか「抵抗勢力」だとは思っていないことです。多くの場合、それぞれの組織の理屈に基づいて行動しているに過ぎず、反対したくてしているわけではありません。自分の視界の範囲で合理的に振舞っているだけのことです。下手にドラマや小説を見過ぎると、社内に悪意を持った「敵」がいるような錯覚に陥りますが、そんな被害者意識で臨んでも相手の反応が過敏になるだけで得るものは少ないです。

ここでいう「反対勢力」というのは、「反対したくて反対するという勢力」ではなく、合理的に仕事をすればネガティブな反応をせざるを得ない組織のことです。たとえばもし自分たちが何か新しい商品やサービスを始めようとしていた場合、それによってカニバリ(顧客の重複)などで部分的に不利益を被る可能性がある組織、人は誰か。このプロジェクトを進めることにより、KPI(業務上重要な指標)にマイナスの影響を与えてしまうのは誰なのか、ということを冷静に考えることです。

大抵のケースは、自分のプロジェクトマネジメントに精一杯で、そのプロジェクトが社内の別組織に与える影響などは考慮に入ってきません。しかし、インタビューを通じて浮かび上がってきたのは、「社内全体の視野」を持って、プロジェクトの影響範囲を理解しておく、ということです。

「何が何でも絶対反対するという人はいません。しかし、不利益を被る組織は必ずあります。まずはその組織や人を探すようにしています。そして、その組織のKPIに影響が出るかもしれない、ということに対してOKを出せる上長に対して最初にアプローチを掛けるようにしています(製造業・経営企画)」これは実際のインタビューから聞けたミドルリーダーの生声の一例です。

全くの新しいベンチャーであればいざしらず、ある程度の規模の組織になれば、新しいことを始めれば必ず社内には自分が想像し得なかったところに何らかの影響を及ぼしているものなのです。そして、それを感じ取るセンスがなければ、いざという時に足を引っ張られて立ち往生する。したがって、何らかのプロジェクトを進めていく際には、部分的なポジティブな側面ばかりではなく、全体感を押さえながらネガティブな芽を予め摘んでおくことが重要なのです。

2.「相手の立場」から考えてみる

では、ネガティブな反応を引き起こしそうな組織があった場合、どのようにアプローチすればいいのでしょうか。それは、一旦彼らの立場に視点を切り替えてみること、そして彼らの視点で「協力せざるを得ない」状況とは何か、と問うてみることです。

インタビューで伺うことができたのは、涙ぐましいほどの水面下の努力でした。たとえばこんな話も聞きました。「プロジェクトを進める上で絶対に必要なノウハウを持っている組織の1つが、私たちの依頼をのらりくらりとかわし続けていました。そこで『なぜ彼らは動かないのか』と視点を変えて考えてみたのです。すると、彼らは自分たちが公開したノウハウをいいように使われて誰からも評価されなかった経験があったということに気付きました。そこで、私たちは協力に対してリスクを感じていない他部署と協力して早々に小さな成果を出し、その成果と協力に対する感謝を役員会議などでやや大げさに伝えることで、彼らの懸念を打ち消すようにしました。その結果、ようやく本命の組織にも動いてもらえるようになりました(製造業・人事)」

風通しの良い組織に所属している人からすれば「何を大げさな」という感じかもしれませんが、多くの重たい企業はこのような社内的な交渉がうまく行かずに前に進めない事例に溢れています。この手の「根回し」にどれだけ労力を掛けるべきか、という論点はあるでしょう。しかし、ここで私たちが学んだことは、「相手の立場」で考える、つまり一度他部署の立場で考えてみることの大切さです。

当たり前と言えば当たり前。しかし、私たち自身、過去を振り返ってみても、この手の「ちょっとした立場の切り替え」が出来ず、自分たちの視野に基づく正義感に邁進した結果、調整に失敗したプロジェクトにいくつも思い当たることができます。実はこのような些細な視点の切り替え不足が失敗につながっていることは多いのではないでしょうか。このように「立場を切り替える術」を身につけることは、ミドルリーダーにとって1つの大きなスキルになるはずです。

さて、今回は内部環境の調整というテーマで、プロジェクトを始める際の「全体的な視野の必要性」や、「相手の立場に立つことの重要性」を考えてきました。次回以降は、上司の意向との折り合いをどう付けていくか、というテーマで深めていきたいと思います。

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