外部環境変化をつかむための「顧客理解術」 

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外部環境を理解している「つもり」?

営業さて、第1話「あなたは大丈夫!? 失敗するミドルリーダーに足りない4つの視点」では、ミドルリーダーが実際に戦略形成において成功するためには、外部環境、内部環境を押さえるとともに、上位層の意向や自身の想いという4つの視点をバランスよく押さえることの重要性をお伝えしました。それを踏まえ、今回はまず「外部環境を押さえる」について深掘りをしていきたいと思います。

リーダーとして何か事業を任せられた時、言うまでもなく外部環境を理解しておくことは重要です。しかし、「外部環境の変化をちゃんと押さえているか?」と正面から問われたら、皆さんは自信を持って「Yes」と答えられるでしょうか。実際にはどんな情報をどのように押さえたらよいのか、答えに苦しむ方もいるのではないかと思います。

外部環境が変化していること自体は理解しているつもりでも、実際には断片的で、かなり古い情報や印象に引っ張られてしまうことが多いのが現状…。そんな私たち自身の過去の苦い実体験とも照らし合わせて、ミドルリーダーたちが外部環境をどう捉えているのか、インタビューを通じて浮き彫りにしました。

外部環境を押さえるための3つのレイヤー

外部環境は、視点の高さごとに3つのレイヤーに分けることができます。

1つ目は、最も視点の高いレイヤーになります。「業界」というよりも「世の中」という視点で物事を俯瞰的に眺める視点であり、「マクロ環境分析」と呼んだりもします。

その下のレイヤーは、「業界」や「市場」を把握する視点です。具体的には競合や、市場規模の理解、その業界で戦う上での肝(Key Success Factors=KSF)を押さえる視点です。

一番下の視点は、「顧客」を理解するための視点です。1人の顧客がどのようなニーズを持ち、どのような行動をしているのか、どのような不満を持っているのか、ということを把握するものです。

一口に「外部環境を押さえる」と言っても、これだけレイヤーがあり、それぞれ見るべきポイントが異なります。こういった視点を行ったり来たり、偏りなく理解することが、外部環境を把握することにつながるのです。

ミドルリーダーの課題は何か?

では、実際に、ミドルリーダーが外部環境を理解する上で、何が課題になっているのでしょうか。アンケートやインタビューから課題として浮き彫りになっているのは、一番下のレイヤー、つまり顧客の具体的な理解が足りていない、ということです。

第一話のチェックリストをもとに、過去のプロジェクトに対して6段階で自己評価してもらった結果が図1となります。ここから、成功したプロジェクトと失敗したプロジェクトの比較において、「顧客理解」という点が最大のギャップ、かつ成功したプロジェクトの最高評価として顧客理解が挙げられていることが分かります。

このアンケート結果だけでは「顧客理解がプロジェクトの成否につながった」という因果関係を結びつけるのはまだ飛躍があるのも事実ですが、少なくともプロジェクトを成功に導くためには、大きな変化を俯瞰する前に、何よりも足元の「顧客」に目を向けることの重要性を物語るものだと思います。
図
しかし、顧客を理解する重要性は、多くの人にとっては言われなくても分かっていること。これだけでは本質は見えてきません。また、一口に「顧客」といっても、企業相手なのか消費者相手なのかによって、顧客数も異なれば押さえるべきポイントも変わってくるでしょう。場合によっては社内の人が顧客となる場合もあるかもしれません。

その多様な前提を踏まえつつ、私たちは実際のインタビューを通じてミドルリーダーが顧客理解のために共通して重要な行動のヒントをまとめてみました。

全体感のある事実を把握せよ

私たちが顧客について語る場合、たとえば「どうも最近の顧客は、価格に対して敏感らしい」といったような「抽象的な印象論」が飛び交うケースが多いのではないでしょうか。そして、実際に自分の経験に思い当たる節があれば、「そうそう」と膝を打ち、その印象論を強化していきます。

しかし、その「印象」はどれくらい全体を捉えたものなのでしょうか。一部の「声の大きな顧客」だけのこと、ということはないでしょうか。そして、実際にその際に「事実として」何をどう語っていたのでしょうか。「価格に敏感だ」という解釈は、どういう言葉から導き出されたのでしょうか――

インタビューを通じて浮かび上がってきたのは、成功するプロジェクトというのは、こういった印象論にメスを入れ、「全体感を持ち、事実まで把握する」という基本動作を怠っていなかった、ということです。

たとえば、インタビューから出て来た話にこんなことがありました。

「部下から上がってくる顧客訪問レポートに、同じような製品改良に関するニーズが並ぶようになった。本当なのかと思って主要な顧客に広くインタビューをしてみたところ、製品改良というのは顧客が語っていることではなく、単に営業が自分の良い方向に解釈した内容に過ぎなかった。実態はそんな改良レベルよりももっと深刻な内容だった」

つまり、一部の営業担当の解釈が一人歩きして、顧客ニーズに対する印象を形成していた、ということだったのです。この話はやや極端なものかもしれませんが、多くの企業が「部分的な印象論」に基づいて動きがちだからこそ、ここにメスを入れることができた組織こそが真の力を発揮できるのでしょう。

「顧客に聞くな、ぶつけろ」

顧客理解のためのもう1つのキーワードは、「顧客にぶつける」ということです。顧客のニーズを聞く、という言葉がありますが、インタビューから浮き上がって来たのは、顧客のニーズをただ「聞く」ということの難しさです。闇雲に聞いても、いろいろなキーワードが出てくるが、どれが本質なのかがわからない。一方で、ニーズをしっかり引き出せたプロジェクトにおいては、実際に何らかの具体物を顧客にぶつけ、そのフィードバック〜改良提案のサイクルでどんどん本質に迫っていった、ということです。

たとえば、システム構築のプロジェクトではこんな話を聞くことができました。

「当初は、多方面に広がる関係者の声を満遍なく拾い上げてから形を作ろうと考えていた。しかし、聞いても聞いても何が本質なのかわからず、時間だけが経過していった。そこで、こちら側が最初に具体的な仮説に基づいたイメージをまとめて、それをぶつける形にやり方を改めた。そのイメージを前にした瞬間、初めて顧客が本当に大事なことを教えてくれるようになった。それまでのニーズヒヤリングは何だったのかと思うくらい、本質に迫った議論ができた」

言うまでもなく虚心坦懐に顧客の声を聞くことは重要です。しかし、自分が顧客の立場であれば「ニーズは何?」と聞かれても、頭が構造化されていない限り、本質を答えるのは難しい。そのやりとりには多くの時間ロスが発生します。さらに言えば、今の時代、顧客ニーズは刻一刻と変化をしています。見えない顧客ニーズを想像しながら考えている間に、時間という極めて貴重なリソースが失われます。ある程度の段階で形にした上で、顧客にぶつけてみる。そしてその反応からブラッシュアップする(場合によっては潔く方向転換する)ことこそが、顧客の本質に近づける、ということではないでしょうか。

今回はミドルリーダーにとって求められる4つの視点(外部環境理解、内部環境理解、上位層の意向の把握、自身の想いの理解)のうち、外部環境に焦点を置いて整理をしてきました。私たち自身もミドルリーダーとして、「顧客理解の重要性」を理解していたつもりではありますが、多くの声を整理する過程で、自分自身もどこまで顧客を理解できていたんだろうかと過去を反省することしきりでした。

裏を返せば、ここにはまだまだ改善余地が広がっている、ということでもあります。「外部環境理解」とか「顧客理解」といった漠然としたキーワードで思考が止まっている組織がもしあるとするならば、「全体感のある事実」や「ぶつける」といった教訓を参考に、改善機会を創出いただければ嬉しいです。

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