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行動を変えれば、心が変わる。海外で活躍するための行動とはーグロービス・アジア・キャンパス10周年記念インタビュー#3

投稿日:2022/08/12

グロービス・アジア・キャンパスは、2022年で設立10周年を迎えます。2014年からシンガポールの立ち上げに加わり、現在はプレジデントとして組織を率いる葛山智子に、活躍する海外人材の要件を語ってもらいました。第3回は、海外赴任先で求められる「行動」について紹介します。(全3回、最終回)(前回はこちら

海外での仕事は、日本では経験したことのないような問題に遭遇したり、圧倒的な仕事量を抱えて困惑したりすることの連続です。

これらの状況をどう乗り越え、自分を成長させられるのか。私自身は、シンガポールに来てから行動をとにかく積み重ねることで、心も変わったように感じています。今回は、ビジネスパーソンが海外で飛躍するための行動のあり方について考えます。

財務的数値目標へのコミットは当たり前。究極のゴールはその先にある

海外拠点の組織サイズは、本社よりも小さいサイズになることがほとんどですが、これをディスアドバンテージとしてとらえるか、アドバンテージとしてとらえるかが重要です。この組織の規模こそ、自身の仕事への向き合い方をさらに進化させる絶好の機会となります。

海外拠点では、そのサイズゆえ、誰かが決めたことを遂行するだけではなく、自らで考え提案し実行するという一気通貫で業務にあたる機会も増えます。自分発で仕事ができる機会にも多く恵まれます。これを機会と捉えられるか捉えられないかで、海外拠点での仕事の充実度は大きく変わるでしょう。自分が動かなければ何も始まらない。毎日、「取り組む内容」を自ら考えて仕事を作っていきます。

人的リソースや予算にも限りがあるので、コストのかけ方を真剣に考えるようになります。日常生活で家計の出費を抑えるのと同じような真剣さで、本当に必要なのか否かの判断をしていきます。こうして、この組織をどう存続させるかを日々考え続けていると、マイボール意識も強くなってきますし、事業・会社・地域へのコミットも高まってくるのではないかと思います。

どのような仕事でも、会社の売上予算を達成するのは大事ですが、それはミニマムマスト(最低限の必須事項)だと思っています。究極のゴールはその先にあり、先を見据えて私たちは歩むのではないか。自社・自分がやりたいことや強みを発揮できることを通して、社会やお客様の課題を解決していくことが究極のゴールではないでしょうか。グロービスであれば教育領域で、変革と創造に挑む企業やビジネスパーソンを応援することです。我々は何のためのこのビジネスを行っているか、それが最も大事であるとも思います。売上や利益は、究極のゴールに向かう過程で達成するものだと思っています。

仕事の量が質に変わる日が、いつかやって来る

海外と日本との違いのひとつに、海外では圧倒的な仕事量を捌く経験を積めることがあります。やるかやらないかは本人次第ですが、行動すればするほどビジネスパーソンは海外拠点で大きく成長できると思います。どんな仕事も自分で取りに行って、自分で考えて、120%の努力で動いていると、それぞれの経験である「点」が「線」で繋がる時が来ます。線で繋がると、過去の経験が今にどんどん活きてくる感覚が持てるようになります。

動き続けていると、必要な仕事と省いたほうがよい仕事の峻別もついてきます。溢れるほどの仕事量を前にすると、「早くやる方法はないか」「この仕事は本当に時間をかけてやるべきか」と1つひとつのタスクの価値を考えます。自分が手と頭を動かすべきところとそうでないところを分け、やってみて気付いて考えることを繰り返すうちに、仕事の質が上がってきます。行動し続けた対価として、仕事の量が質に変わる日が訪れると思います。

そしていつの間にか、自分の心も変わります。心とは、仕事に向き合う姿勢のことです。自分の会社への思い入れと、究極のゴールに集中する意識が強くなります。行動を変えれば、心が変わる。その環境が最大限に用意されているのが、海外拠点での業務だと思います。

活躍する人は、「忙しい」を言い訳にしない

海外は、日本では任せてもらえなかったような大きな世界観の仕事ができるチャンスがあります。それは、これまでの経験や知見を活かせることばかりではありません。むしろ見たこともないような難題が常にある状態になるでしょう。

これらの難題を乗り越えるには、自分で勉強するしかありません。海外では丁寧に教えてくれる人がいるわけではないですから、知識やスキルが足りないものは勉強して、1つひとつ課題をクリアしていかざるを得ません。

海外で仕事をする上では、理解しておかなければならないことも多いものです。現地に応じた経理や財務、労務といった経営管理の知識は欠かせませんし、戦略立案やマーケティングの経験が浅いのであれば自分で学んで補う必要があります。私自身の経営経験からも、MBAのスキルは特に海外拠点では必須だと思います。

駐在員は仕事量が多いので、仕事をしながら学ぶのは無理だと思われるかもしれません。しかし、ここにこそ、活躍する人と活躍しにくい人の差が生じやすいように思います。つまり、「忙しいから」という言葉を使ってしまうか否かが分かれ道の1つなのではないでしょうか。私は、グロービス代表の堀から「忙しい」と一度も聞いたことはありません。誰よりも多くの仕事をしている人こそ、「忙しい」とは言わないように思います。そして、しっかり仕事をしている人は「時間がないからできませんでした」とも言いません。

「アクティブ・ノンアクション」という言葉があります。その意味するところは、毎日忙しい一方で、将来に向けての投資が何もできてない状況を指します。日々の行動が「アクティブ・ノンアクション」になっていないか振り返ることも重要だと思っています。

まさに自身の成長への投資はアクションに含まれると思いますし、組織のサイズが小さい海外拠点では、学んで得たスキルを活かせる場面が豊富にあるので、学びがいもあります。海外駐在中にこそ学びにどん欲になることは、自分の成長を直に感じられるチャンスだと思います。

海外で活躍する人材が日本でも活躍できる組織へ

私はシンガポールに来て8年目になりますが、年々、ビジネスに真剣に向き合う駐在員の方がどんどん増えているように感じます。仕事をやり切るんだという情熱を持って行動を積み重ねておられる方々との出会いは刺激的です。こういう仲間が増えれば、海外で日系企業の存在感がもっと高まると思います。

駐在員はいずれ日本に帰国します。その際に、日本に帰国した人々がさらに活躍し続けられる環境があるとよいと思うケースが周囲でいくつもありました。

限られた駐在期間の中で、全力で行動し続け活躍している人も多くいます。そういう方々は、新しい事業を提案することや、既存のやり方を変えるバイタリティがあります。売上目標の先にある究極のゴールを目指す思考も身につけています。高みを目指すからこそ、その過程では失敗もそれなりに起こるはずですが、それをバネに行動を積み重ねるレジリエンス力も磨いている。

こういう方々が帰国後も活躍できる組織であると同時に、新しいメンバーが海外へと旅立ち、現地でのミッションに邁進し、海外拠点を現地の人たちと成長できるような「正の循環が生み出せる組織・環境」が今後も増えていくとよいと、東南アジアの地から願っています。

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