グロービス・アジア・キャンパスは、2022年で設立10周年を迎えます。2014年からシンガポールの立ち上げに加わり、現在はプレジデントとして組織を率いる葛山智子に海外で活躍するために欠かせない「自信」について語ってもらいました。(全3回、2回目)
自分の得意分野を知り、自信を持つ
前回は、自社を理解する意義をお伝えしましたが、それと同じくらいに、自分自身を知っておくことも、海外で活躍するためには重要です。
海外駐在すると、日本より仕事量が圧倒的に増えることがほとんどです。海外でも活かせる自分の「軸」を知っておくことは、忙しさに心が折れずに活躍するためのポイントだと思います。自分の得意分野があると、その分野を仕事の中心において仕事を組み立てることができます。私であれば講師業で、どんなことをするにも講師をすることで培ったスキル・ノウハウ・ネットワークをコアにして活動しています。営業が強い人は、営業スキルをコアにしていろいろな仕事に応用していくのだと思います。
自分の強みが分からないままだと、海外拠点で役割範囲・責任範囲が広がった時に、自分自身のコアの力にレバレッジをかけずに取り組んでしまい、結果が出ないばかりか、仕事が回らなくなってしまうかもしれません。
海外で活躍する皆さんには、自分が強みだと思うことには胸を張って「得意です!」と言うくらいのスタンスでいてほしいと思います。我々は、弱みを克服することばかりに意識が偏ってしまう傾向があるように思います。有名な経営学者であるドラッカーは「何事かを成し遂げられるのは、強みによってである。弱みによって何かを行うことはできない。弱みによって勝つことはできない。」と言っています。国内にいる時もしかり、そして海外で活躍をする際にはより一層、強みをどんどん活かして活躍するとよいと思います。
また、周囲からの評価は真摯に受け止めつつも、周囲の評価(特に1つの評価軸だけによる弱み分析)だけに自分の評価をゆだねないことも重要です。その評価軸はあくまで1社での評価軸であり、皆さんのすべてをそれで評価されるわけではありません。
自分自身が自分の能力の「強さ」に気づけるかどうか、胸を張ってその強さを軸に力強く進めるか。誰もが、できない事は無数にあります。そこに目を向け改善したり完璧にしたりする努力よりも、弱みを認識しながら、周囲の力を借り補完し、前に進むことのほうが重要だと思っています。
できない理由をつくらない
(前回の)冒頭でご紹介した「日本と海外は違う」という考えについて、1点留意したい点があります。日本と海外は何もかも違うと思い込んでいると、仕事で結果が伴わなかったときに「日本とは違うから、うまくいかなくても当たり前だ」と言い訳をしてしまいがちになります。
確かに、日本で成功したことが海外でも成功するとは限りません。海外拠点では、人的リソースも資金も十分ではない時がありますから、海外での仕事を成功させるほうが難しいときもあります。あれもダメだった、これもダメだった、だからできなくても仕方ないと、できない理由を並べるのは簡単です。しかしそれは建設的な考え方ではありません。常に「どうやったら成功できるのか」を徹底的に考えることのほうが重要です。「できない理由を並べるより、できる理由(方法)を考える」ことがより一層問われると思います。
例えばお客様への提案が採用されなかったとしても、「どうやったらお客様にもっといい提案ができるだろうか」「どうやったら成功させられるか」に意識が集中していると、お客様からのフィードバックを元に反省はしても、変に落ち込んだりはしません。今回もダメだったけど日本とは違うから仕方ない、とできない理由をつくらず、どうすればもっといい仕事ができるかという思考サイクルに入れると、成長スピードは格段に上がります。
成長スピードを上げるためのもう1つのコツは、自身の思考を狭めているのは自分であること、自分の限界を決めているのもまた自分である、ということに気が付くことだと思います。過去にやったことがないからできない。海外だからできない。忙しいからできない。そういう考えが頭をよぎったときは、できない理由を並べることに自分の意識が向いている要注意サインだと思ってください。
海外事業では、今までやったことのないこと、多忙な中でもやるべきことばかりです。海外だからこそすべきこと、それを実現していくために、皆さんだったらどうしたらできるようになると思うのか。そういう方向に意識を一緒に向けていきたいと毎日思っています。
海外に自社のコアをアジャストさせ、自分の得意分野を活かして、どうやったらいい仕事ができるのか、私も日々奮闘中です。これからも引き続き、東南アジアの地で皆さんと一緒に考えていきたいと思います。