キャンペーン終了まで

割引情報をチェック!

グローバルで現場の多様性を活かすためクリアにすべきこと――アシックス常務執行役員に聞く Vol.3

投稿日:2023/11/17

少子高齢化による人口減少が加速する中、さらなる成長を目指し、グローバル化に注力している日本企業は少なくありません。この中で、海外事業を牽引するリーダーは、どのように組織を動かしていけばよいのでしょうか。

今回は、海外事業全体の統括として世界三十数カ国に広がる販売会社を束ねる、株式会社アシックス 常務執行役員の小玉 康一郎氏にお話を伺います。今回のテーマは、事業変革を進めながら掴んだグローバルでの組織マネジメントの要諦についてです(全3回、第3回。前回はこちら)。

サプライチェーン全体の統括経験による、事業構造への深い理解

板倉 ここまで、グローバルでの組織マネジメントのポイントとなる「本社と販売会社の連携」や、そのための「あり姿の共有」などについて伺ってきました。こうしたマネジメント手法は、どのようにして身に付けられたのでしょうか。

小玉 前職の丸紅での様々な経験をベースに、アシックスへの転職で更に多様性を身に付けてきました。
丸紅で私が扱っていたのは、靴やアパレルなどのコモディティ商材でした。今振り返ると幸せなことに、単なるOEMや仲介貿易的なトレードだけを対応していたのではなく、アジア地域や欧州・米州での生産工場の発掘、海外ブランドとの契約内容の交渉、日本のみならず欧州向けに商材を流通させるビジネスフローの構築などを含めて、マーケティングから小売、在庫管理、物流に至るまでのサプライチェーン全般にかかわる仕事を自ら楽しんでやっていました。国内外の事業会社の買収や売却も行いました。

そういった経験が、海外の販売会社を管掌する立場として普遍的に押さえるべき肝となる部分を抽出し、課題解決のヒントを出せるベースになっているんだと思います。

転職した先で、しかも海外各国の中でも特に様々な難しさのある米国で何とか販売会社経営をこなし、本社で海外事業の管掌に従事出来ているのは、これまでの業界内での幅広い経験と、色々な失敗を次の成功に変えるチャレンジをさせてもらったことによると感じます。この経験によって、ビジネスの全体観を俯瞰出来る知見が蓄積されてきたのです。

板倉 サプライチェーン全般に関わったことでビジネスの事業構造の全体観が頭の中に入っているからこそ、様々な判断が自然に出来るのでしょうね。

小玉 全体観が頭の中に入っているだけでは不十分かもしれません。そこから、資料やデータからある程度のビジネス実態や店頭・取引先での販売状況のイメージが想像出来るかデータや数字の動きに何か違和感を持てるか。現場や取引先、あるいは同業他社などの話を聞いて「何か」を感じ「想像出来るか」どうかが大切だと思います。

アシックスは世界にビジネスを広げ、文化や慣習やスポーツへの習熟度が異なる市場・人々と関係を構築しながらブランドの浸透を進めています。違いを理解し受け入れること。そしてアシックスの違いを理解頂くこと。そういうチャレンジを続けることでまだまだアシックスとしてやれることがたくさんありますね。

板倉 異なる文化・習慣などの価値観を越えて判断出来るだけの事業構造への深い理解と、肝を外さず押さえていくための「あり姿」の具体化と共通認識化。そしてメンバーの意見を重視して、現場で決断・実行させていく自律を促すマネジメント。この3つがポイントになっているように思いました。

さまざまな領域を経験して、知識を広げ、いろいろな価値観に触れてみる

板倉 グローバル戦略とは「何をインテグレートして、何をローカライズするか」だとも言われますが、小玉さんの話はそこにリンクしているように思います。「ビジョン」や「戦略」、その裏側にある「事業の構造」など、この辺りをブラさないように、小玉さんはじめ本社側が要所をしっかりコントロールして現場との認識を合わせる。ここがインテグレートです。そしてそこがブレなければ、あとは現地側のメンバーがガバナンスの中でしっかりと動き回れるような状態がつくれ、ローカライズ出来るわけですね。

ただ、これが出来る人材も希少です。アシックスの中ではどのように育てていこうとお考えですか。

小玉 自身の幹となる強みを持ちつつ、さまざまな部署や責務を対応することで色々な経験をしてもらう。そうしてグローバルの多様な価値観や考え方に触れること、現場を体感すること。それが一番ではないでしょうか。
アシックスのビジネスモデルは一見シンプルですが、原材料の調達から製品・サービスの販売やマーケティング、事業投資や国内外での様々な取り組みまでを含めるとバリューチェーンに関わるパートナーは非常に多く存在します。彼らが「なぜアシックスと組みたいのか」を理解すれば、製品の品質だけではなく、高いサービス力やデリバリーの正確さ、在庫の効率性などが全て繋がってくるはずなんです。目の前の仕事をしっかりこなすだけではなく、それがどのように繋がってビジネス全体が構築されているのかを俯瞰出来る経験・知見を、どのような人材にも持ってもらいたいですね。

知っているだけでなくやったことがある、というのは本当に強い力になります。モノづくりから卸、マーケティング、小売、Eコマースに至るまで、全てのビジネスモデルの構造を理解した上で組み立てられるか。あるいは、販売会社側が何か言ってきた時に、どこがポイントか理解出来るか。そうしたビジネスでの経験の「広さ」×「深さ」の両方の伸長にチャレンジしてもらいたいですね。

海外で戦う上では「製品力」×「マネジメント力」が必要不可欠

板倉 小玉さんから見て、今グローバル経営に苦しんでいる企業に向け、メッセージをお願い出来ますか。

小玉 それぞれの企業・事業体・業界でそれぞれのチャレンジがあると思いますが、日本企業に限らずブランド・事業として「差別化された」製品力とサービス力を磨くことが重要だと思います。自社の差別化をクリアにすることで戦略や攻め方なども明瞭になるはずです。それはマーケットで勝ち残るためにも大切ですし、組織・メンバーへの落とし込みや共通理解もやりやすくなり、全社として目標に向かいやすくなるという点からもです。

板倉 まずは勝てる「製品」「サービス」の差別化をクリアにし、組織マネジメントで現場の多様性を生かして、初めてグローバルで戦える企業になるわけですね。

小玉 あとは「ブランド力」、それは「信用、信頼」と置き換えても良いかもしれません。長年掛けて築いた信頼を失うのは一瞬で、当社でもそれを取り戻すのに手間取っている市場があります。なので信頼を失わないことは企業・ブランド経営の根幹でしょうね。日本企業には信頼出来る商材やサービスがたくさんあります。他社にマネされないモノを持ち差別化出来るポイントがあること、そして裏切らない=信頼として確立する、が重要だと思います。

あとは冒頭に申し上げた「発信力」「表現力」を磨くこと。オーバーコミットをしないのが美徳とまだまだ日本企業(日本人)の根底には奥ゆかしいところがあるように思いますが、「差別化」と「信頼性」そして「発信・表現力」が加われば勝てる要素は備わった状態になると思います。

板倉 それにプラスして、それを生かすマネジメントがあることもセットのような気がします。「アシックスさんは、そこがうまく回っている」と、お話を聞きながら実感しました。私から最後の質問なのですが、このマネジメント手法というのは、誰でも獲得出来るものでしょうか。

小玉 それぞれのオリジナルなマネジメント手法は誰にでも獲得・確立出来るものと思います。私の場合は「旺盛な好奇心」と「飽くなき向上心」がベースとしてあり、更に出来るだけ「火中の栗を拾う」という選択をして行動に移して来ました。問題に対峙する時には目の前の壁は高く難しく感じるのですが、様々な問題に立ち向かい悩みながら色々な人に相談しながら課題を解決し前進して行く事で、振り返ってみると乗り越えて来たそれらの壁は低く見えるように思います。逃げずに課題に立ち向かうことだと思います。

板倉 小玉さんは簡単に言いますが、それが難しいんですよね。

小玉 そうかもしれませんが、今の中堅層にはぜひそうなってほしいなと思いますね。火中の栗を自ら拾い上げる。そんな意欲を持った次世代に、アシックスを担ってほしいと願っています。

新着記事

新着動画コース

10分以内の動画コース

再生回数の多い動画コース

コメントの多い動画コース

オンライン学習サービス部門 20代〜30代ビジネスパーソン334名を対象とした調査の結果 4部門で高評価達成!

7日間の無料体験を試してみよう

無料会員登録

期間内に自動更新を停止いただければ、料金は一切かかりません。