男性脳女性脳はもう古い。ジェンダーレスな脳の世界―心理学の研究データに見るジェンダー#1

男性のほうがリーダーに向いている、女性のほうが共感力が高い――これらは本当なのでしょうか?本稿では、心理学の研究結果から明らかになったジェンダーの捉え方を紹介します。(全3回、初回)

ジェンダーバイアスは誰もが持つ

今、世界的にジェンダー平等が叫ばれています。裏を返せば、それだけジェンダー不平等が発生しているということです。やっと不平等について声が上がるようになったと見ることもできます。日本に目を向ければ、課題は山積しています。世界経済フォーラムが今年2022年7月に「ジェンダーの格差に関する調査」の結果を発表しました。これによれば、日本は調査対象146か国中116位です。主要7か国では最下位です。特に評価が低いのが、政治と経済の分野です。女性議員の数が少なく、企業においても女性管理職が圧倒的に少ないのです。

ジェンダーのテーマは、「男性だからこうすべき、女性だからこうすべき」というように、主観や印象で語られることがあります。たとえば、森喜朗元首相が「女性が入る会議は時間がかかる」と発言し、物議を醸しました。この発言は森元首相の印象にもとづいた発言です。ジェンダーに関しては、人それぞれ、様々な意見や思いがあるでしょう。これらをお互いにぶつけあっても、どうしても議論が平行線になってしまいます。

では、どうするとよいか。個々人の印象、意見、想いを語る前に、ジェンダーの差に関してデータは何を語っているのか。それをまず虚心坦懐となって理解することではないでしょうか。

私たちは、どうしてもジェンダーに関してはステレオタイプをもっており、それを通してしか人を見ることができないのです。誰もが少なからずジャンダーに関するバイアスをもっているという事実を受け入れる必要があります。もし、「私はそんなバイアスはもっていません」と思う人がいたとしたら、それこそがバイアスであるわけです。

<関連動画:確証バイアス 〜客観的な判断・分析力を身につける〜

心理学者がすでに、ジェンダーの差に関して、膨大な調査を行っており、ある程度のコンセンサスができつつあります。本稿ではそれを紹介したいと思います※。ビジネスパーソンであるならば、これらの研究結果を頭に入れていただくだけでも役に立つと思います。

※ジェンダーとは多様なものであり、男女の枠だけで語られるべきではありませんが、現在入手できるジェンダーの差に関する研究が主に男女にフォーカスしているものが多いため、以降男女の差に関する研究を紹介していきます。

男性脳と女性脳は違うのか?

男性脳と女性脳は違うのでしょうか。この問いはすでに100年ほど論争が続くくらい多くの人の興味と関心を惹いてきました。最近の研究にもとづけば、結論はこうです。男女の差はあまりなく、個人の差の方がよほど大きい。もちろん、生物学的な男女の違いはあるのですが、その違いは、私たちが思うよりは大きくはないのです。詳しく見ていきましょう。

ウィスコンスン大学のハイドは、男女の違いと共通点を調べた論文100本以上にもとづいて、以下のように述べています。

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