#ワークマン女子、銀座へ出店――変化する「一等地」への進出

ワークマンは、作業服というイメージからの脱却を行い、#ワークマン女子で銀座に進出、ブランド力強化を図る。銀座進出は、ワークマンブランドにどのような影響をもたらすのだろうか。

#ワークマン女子の施策

ワークマンは、4000億円とも言われるアスレジャー市場の「高機能×低価格」の領域に、一般向けブランド、ワークマンプラスを立ち上げたことで知られている。

※「アスレチック」と「レジャー」を組み合わせた造語で、スポーツウェアやシューズを取り入れた服装を指す

ワークマンプラスのボリュームゾーンは、35-40歳、それより若い世代の女性をメインターゲットにしたのが、#ワークマン女子だ。ターゲット客が多くアクセスするショッピングモールへの出店、入店しやすい空間演出、Tokyo Girls Collectionへの参加など、様々な施策を打ってきた。特徴的なのが、ワークマンのファンと想定される顧客をネット上で探し、「公式アンバサダー」として採用したアンバサダーマーケティングだ。もともとワークマンのファンで既に高い知見を持って情報発信している顧客に商品開発へ参加してもらい、更にその経過をインフルエンサーとして発信する宣伝担当も担う。驚くことに、アンバサダーたちは無報酬でこの活動に協力しているという。ロイヤリティが高い人達によって、ワークマンは支えられているのである。

ワークマンの2022年度3期の業績は、チェーン全店売上高が前年同期比7.0%の1259億円だった。売上高を前年同期比で比較すると、2020年度3期25.7%増、2021年度3期12.3%増[1]と鈍化している。同社店舗数は、906店舗あるが、郊外のロードサイド型が大部分を占める。メインの顧客である職人たちが、車で立ち寄ることを想定しているからだろう土屋哲雄専務は「ロードサイドはすでに飽和感が出てきた。ブランドイメージが上がる地域に出店を増やしていきたい[2]」と話しており、銀座進出は、ブランドイメージの向上や転換、認知度向上の一環と考えられる。

インバウンド激減で変化する銀座

ワークマンの公式リリースでは、本件を“長年の「悲願」であった銀座進出”と表現している。

とはいえ、銀座=高級、敷居が高い街とは、ひと昔前のことだ。今では、ユニクロ、ドン・キホーテ、AOKI、スシローなどが、ステータスや存在感、あるいは若年女性層や富裕層の開拓などを狙って銀座や有楽町エリアに進出している。2022年4月、ダイソーも銀座に旗艦店を出店した。高級ブランドばかりではなく、親しみやすい、気軽に立ち寄れる店が増加し、街並みは変貌した。

新型コロナウイルスの影響で、インバウンド客が居なくなり、リモートワークが増え、銀座は人通りが減った。ニトリは都心部への出店を加速する一環で、2015年、銀座に出店したが、わずか6年程で店を閉めた。また2021年から2022年にかけて、ユナイテッドアローズ銀座店、ニューヨーカー銀座旗艦店が閉店、商業ビルの東急プラザ銀座は、インバウンド需要を意識した店作りから、テナントを一気に入れ替え、大幅に軌道修正を図っているようだ。ただ、日本不動産研究所によると、銀座のテナント賃料は、人通りが減っても1坪約71000~75000円/月と主要エリアでは、未だに最高値を維持しており、高い賃料に見合うだけのパフォーマンスが求められる。インバウンド客に期待が出来ない今、日本人が敢えて銀座に出掛けるのには、強い動機が必要だ。

訪れる価値のある店作り

強い動機を持たせる店舗の先達として、銀在に旗艦店を持つユニクロの例を見てみよう。ユニクロは、2021年9月、銀座店をリニューアルオープンした。同店は、2012年3月に世界で9店舗目、日本初の「グローバル旗艦店」としてオープンし、インバウンド客を意識した売場面積約1500坪を誇る大型店舗として知られていた。しかし、コロナ禍でインバウンド需要の減少を受け、リニューアルに踏み切った。商品陳列スペースを削り設置した大掛かりなインスタレーションは、アート作品を彷彿とさせる。ヒートテックの仕組みを説明する展示やペットボトルから作られるリサイクルダウンの過程の紹介は、ユニクロのイノベーション力を訴求している。ビジネススーツのカスタムオーダーサロンや女性インナー専門スタッフによる相談コーナーは、新たな購買体験を提供している。更にユニクロカフェを併設し、都心では1杯1000円以上すると言われるゲイシャ種のコーヒーを450円で提供、高品質リーズナブルの商品を販売する従来のイメージを裏切らない。ユニクロの歴史がわかる展示スペースと柳井社長直筆の企画書が展示され、ユニクロブランドを身近に感じることができる。

単に、衣料品を購入するのであれば、オンラインで十分だ。この店でしか体験できない施策を複数仕掛け、「行ってみたいと思わせる」店に、リニューアルしたのだ。コーヒー休憩のついでに、服を購入する顧客も現れそうだ。

まだまだ高い賃料の銀座に店を出すということは、リスクを伴うし、銀座に進出したからといって、一朝一夕でブランドイメージが向上するわけではない。長く銀座に留まり、顧客を魅了し続ける店とは?#ワークマン女子の動きに注目したい。

<参考>
[1]ワークマンHP、IR情報
[2]読売新聞オンライン、2022年2月23日(https://www.yomiuri.co.jp/economy/20220223-OYT1T50112/)

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