前回、株式の希薄化について説明しました。今回はそれに関連して潜在株式について説明します。潜在株式とは、簡単に言うと、将来増加する可能性のある普通株式のことです。具体的には、新株予約権などのワラントや新株予約権付社債(転換社債)などの、普通株式への転換請求権が付された金融負債などが該当します。
将来において、これらの潜在株式に係る権利が行使されると、普通株式が増加します。ストックオプションの行使によって発行済株式数が増加したとき、その結果もし1株当たり当期純利益が低下したとしたら、株式が希薄化することになります。株式の希薄化は既存株主の権利が相対的に低下することになるため、会社に潜在株式が存在する場合には、潜在株式が顕在化した場合にどれだけ株式が希薄化するか(具体的には1株当たり利益がどの程度低下するか)を財務諸表の注記として開示する必要があります。
具体的な潜在株式の調整計算を転換社債の例で説明します。
(設定)
当期の当期純利益は100百万円、期中の平均発行済株式数は200,000株なので、1株当たり利益は500円となります。転換社債の発行価額は200百万円、転換価格は@5,000円として、転換社債が全て転換された場合の株式増加数は40,000株となります。なお、株式増加数は、期首時点で存在する潜在株式が全て期首に株式に転換されたと仮定して計算します。
(潜在株式調整計算)
期首時点で潜在株式が全て普通株式に転換されたとすると、期末時点での発行済株式数は240,000株(200,000株+40,000株)になります。一方、当期純利益は104.8百万円に増加します。期首に転換社債が全て普通株式に転換された場合、転換社債に係る社債利息8百万円/年間を支払う必要がなくなります。少しややこしいですが、仮に8百万円の費用が発生しないとすると、費用が浮いた分の法人税等(8百万円*40%)を徴収されますので、差し引きで4.8百万円費用が少なくなります。
したがって、当期純利益は潜在株式調整前の100百万円から104.8百万円に増加するというわけです。この結果、潜在株式を調整した当期純利益は436.7円=(100百万円+4.8百万円)÷(200,000株+40,000株)となります。
具体的な計算の説明は割愛しますが、同様の調整計算をストックオプションの場合も行います。