「短期借入金」「長期借入金」の違いとは
貸借対照表(B/S)に計上される「1年以内返済長期借入金」は、「短期借入金」と何が違うのか、という質問もしばしば受けます。
一般に、契約日から1年以内に返済期日が到来する金銭消費貸借契約(借入契約)は「短期借入金」、これに対して契約日から返済期日までの期間が1年を超える借入契約は「長期借入金」とされます。
B/Sが会社の財政安全性を示すための「ワンイヤールール」
B/Sの負債は、1年という期間を基準に区分されます。決算日から1年以内に返済する負債は「流動負債」、1年を超えて返済する負債は「固定負債」です(*)。これをワンイヤールールと言います。
B/Sの重要な役割の1つに、会社の財政安全性を表すことが挙げられます。負債はいつか返済する必要がありますが、早く返済する負債が多いほど会社の資金繰りを圧迫することになります。したがって、B/S上、短期(1年以内)の負債が多いのか、長期(1年超)の負債が多いのかを区分して表示することは、会社の財務安全性をチェックするためには有用であることが理解できると思います。
<貸借対照表について詳しく知りたい人は:貸借対照表〜企業の財務活動と投資活動を読み解く〜>
「1年以内返済長期借入金」とは
ところで、契約上の借入期間は長期(長期借入金)であっても、返済期日に一括返済するのではなく、借入期間中に亘って借入金を分割返済していくケースもあります。例えば、以下のケースを見てみましょう。
- 決算日:3月末
- 借入日:2017年3月31日(現在)
- 借入額:1億円
- 借入期間:5年
- 返済スケジュール:2018年3月31日から毎年2,000万円を返済 2022年3月31日完済予定
(借入利率等は割愛します)
この場合、帳簿上は総額の1億円を「長期借入金」として記帳しますが、B/Sを作成する際にワンイヤールールにしたがって1年以内返済予定分を「1年以内返済長期借入金」として流動負債に振り替えます。つまり「1年以内返済長期借入金」とは、長期借入金を分割して返済する際、1年以内に返済を予定する分を固定負債から流動負債に振り替えたものを指します。
2017年3月31日のB/Sでは、2018年3月31日返済分の2,000万円を「1年以内返済長期借入金」とし、残りの8,000万円を「長期借入金」として固定負債に表示します。次年度の2018年3月31日には借入残高は8,000万円となります。2018年3月31日のB/Sでは、2019年3月31日に返済予定分の2,000万円が1年以内返済長期借入金として流動負債へ振り替えられます。以後も同様に、固定負債から1年以内に返済される部分(2,000万円)が流動負債に繰り上げられます。
「短期借入金」「1年以内返済長期借入金」に実質的な違いはない
長期借入金は通常、借入契約ごとに総額で管理されています。「1年以内返済長期借入金」は、B/S作成時にワンイヤールールにしたがって流動負債へ振り返る際に使用するワンポイントリリーフとも言えます。
短期借入金と区別してB/Sに表示されることが一般的ですが、会計ルールでは短期借入金に含めることも認められています。したがって、両者の実質的な違いはないと考えてよいでしょう。
(*)売上債権、仕入債務、たな卸資産の会社の本業に関わる項目は、正常営業循環基準といって、本業に投じたおカネが回収されるまでは仮にその期間が1年超であっても流動資産または流動負債に区分されます。
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