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社内政治の鉄則(6) 譲れないものがあるなら保険をかけよ

投稿日:2017/01/06更新日:2019/08/29

社内政治の傾向と対策を考える本連載。前回に続いて、社内ポジションが勝る上司に勝ちにいくパターン4「上司に戦いを挑む」を考える。ケースの主人公はグロービス経営大学院生の山口さん(仮名)だ。

パターン4: 上司に戦いを挑む(2)

【ケース】
IT機器開発企業D社に勤める山口は、単なる販売からソリューション提供への転換を提案。大手企業E社に食い込み、その実力が認められた。

だが、山口の事業部はターゲット顧客層を攻めきれていなかった。トップの村中は、事業部長の正田のディレクション能力に疑問を感じ、事業部を2分割し、一方を正田に、もう一方を外部からヘッドハントした黒松に任せる体制を敷いた。

黒松は、山口の能力に目をつけ、「自分のチームに来い」と高圧的な態度で引き抜きを図った。黒松は上昇志向が強く、自分の昇進のためにはパワー・ポリティクスも使う、したたかな男だった。山口は、黒松の配下に入っても将棋の駒のようにこき使われるだけだろうと考えた。しかも、自分のことを信じて思いっきり仕事をさせてくれた上司・正田には恩義を感じていた。

山口は悩んだ末、黒松のオファーを断った。万が一、自分の立場が危うくなっても、ここまで築き上げてきたクライアントとの信頼関係や自らの経験から培ってきたソリューション力をもってすれば、他の世界でも生きていけるだろうとも考え、腹をくくったのだ。

誘いを断れば軋轢が生じる

【講師解説】

黒松の高圧的な態度に対して、山口は反感を抱いた。社会心理学者ジャック・ブレームの心理的リアクタンス理論(注1)によれば、高圧的な説得を受けた時、説得される側は自分の自由が迫害されたと感じる。そして、自由を取り戻そうと、説得されたのとは逆の選択をするという。そして、山口には譲れないものがあった。上司・正田への恩義だ。

人間は感情の生き物である。合理性だけでは判断できない場合も多い。合理的にはオファーを受ける方が得になりそうでも、それを上回るほど大事な価値観を人間は持ち合わせている。

ただし、黒松のオファーを断れば、今後、どんな仕打ちが返ってくるか分からない。黒松の社内における権力が大きくなれば、山口の社内でのチャンスは閉ざされてしまうかもしれない。戦う覚悟が必要である。

だが、覚悟だけでは戦えない。保険をかけておくべきである。

山口には、大口顧客と信頼関係を構築してきた実績と能力があった。もしE社におけるチャンスが閉ざされたとしても、外に出て自分の価値を発揮することができた。「自信」という保険がかけられていたのだ。

(注1)Jack W. Brehm, A Theory of Psychological Reactance (New York: Academic Press. 1966).
 

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  • 芹沢 宗一郎

    グロービス経営大学院 教員/グロービス パートナーファカルティ

    一橋大学商学部経営学科卒。ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院修士課程修了(MBA)。外資系石油会社勤務後、グロービスでは、企業の経営者育成を手がけるコーポレート・エデュケーション部門代表などを歴任。現在は、エグゼクティブ教育や企業の理念策定/浸透などのプロセスコンサルティングに従事。共著・訳書に「変革人事入門」(労務行政)、『個を活かす企業』(ダイヤモンド社)、『MITスローン・スクール戦略論』(東洋経済新報社)など。 『[新版]グロービスMBAリーダーシップ』では、第II部実践編などを担当。

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