今回は仮払金と立替金の違いについて説明します。仮払金は、ざっくり言うと前回解説した仮受金と反対の概念になります。すなわち、おカネを支払ったけれど、その内容や金額(総額)が未確定の場合に一時的に使用する勘定科目です。
【仮払金の具体例】
・出張旅費交通費の従業員への概算前払い
・営業所、事業所等への小口現金の定額支給(後日使用実績を精算するまでの間)
例えば、従業員の資金負担を軽減するため、出張に際して事前に一定の概算額を従業員に支給することがあります。最終的には、従業員が出張から戻り使用した経費の実際額を会社の経費としますが、仮払いの支給から出張旅費交通費の実際額の精算までの間に使用される勘定科目が仮払金です。具体的な会計処理を示すと以下のようになります。
【支給時】
借方) 仮払金 50,000円 貸方) 現金 50,000円
【精算時】
借方) 交通費 20,000円 貸方) 仮払金 50,000円
宿泊費 20,000円 現金 10,000円
出張手当 20,000円
(*)仮払い50,000円に対して経費の実際額は合計60,000円となり、差額10,000円を従業員へ支払ったとします。
立替金は、役員や従業員、あるいは取引先が最終的には負担すべきおカネを一時的に会社が肩代わりした場合に使用する勘定科目です。会社が立て替えてあげたおカネですから、将来的には回収することになります。会社にとっては貸金(債権)ですが、一時的であるため利息は通常設定しません。
【立替金の具体例】
・役員や従業員の私的な支払いの立替払い
・取引先が負担すべき運送料の立替払い
具体的な会計処理を示すと以下のようになります。
【立替時】
貸方) 立替金 50,000円 貸方) 現金 50,000円
【返済時】
貸方) 現金 50,000円 貸方) 立替金 50,000円
仮払金と立替金は、いずれもおカネが会社から支払われたために必要な会計処理をする際の一時的な勘定科目という点では同じです。しかしながら、上記会計処理を見ても分かるように、仮払金は最終的には会社の費用となりますが、立替金は立替えたおカネが返済されるのみです。つまり、「会社の将来の費用」ではありますが「具体的な内容や金額が不明確」の場合は仮払金、実質的に「相手先への融資」であり、立替の「具体的な内容が明確」である場合は立替金を使用します。
通常、仮払金も立替金ともに貸借対照表(B/S)の流動資産の部に計上されます。いずれも本来の処理までの間に一時的に使用される仮勘定であり、長期間継続することは運転資金の面、会社資金の不正使用の面などからも好ましくありません。