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「仕組化」こそマネジメントの仕事【世界で勝つ戦略思考術】

投稿日:2016/07/25更新日:2022/11/11

海外駐在員からよく聞く悩みの代表格。それは「期待通りのアウトプットがメンバーからあがってこない」「現地社員とのコミュニケーションが難しい」などです。異文化の中で多忙を極める駐在員にとって、これらの問題を解決していくことはとても重要です。そこで今回は、そのために役立つスキルについて解説します。

まず、悩みが生じる原因から考えてみましょう。「期待通りのアウトプット」「結果を出すコミュニケーション」を行うためには、仕事の期待値・プロセスを明確に伝える必要があるのですが、そもそもこれを怠っている・もしくは不十分であることが挙げられます。

日本人同士では多くの場合、阿吽の呼吸というハイコンテクストの中で仕事をしています。グローバルで同じような仕事の仕方をしていては、何をどのように、そしていつまでにどのようなクオリティで仕上げればよいのか伝わりません。その結果、アウトプットの仕上がりが人によって変動することにつながります。そしてこのように仕事がうまく進まないことが重なると、理由もなしに「異文化コミュニケーションの問題だ」という結論にしてしまうことが多いようです。

ハイコンテクストの環境下で仕事をしている日本人が、ダイバシティの高いグローバルで事業を進める上で最も重要なのは、「どのようにすれば、どのレベルの仕事ができるのか」を明確にかつわかりやすく示すことです。これは「仕組化」するということでもあります。ここでいう「仕組化」とは、「スーパープレーヤーでなくごく普通の人でも、一定以上の活躍ができるようにすること」を指します。仕組化によって、誰もがある一定以上の結果を出せるようなプロセス・環境を整えることができれば、異文化の中であっても、期待値を明確に伝えられ、またその期待値のアウトプットを出す方法もわかりやすく伝えられます。さらに、仕組化できていればアウトプットの質もある一定レベルを担保することができます。逆にアウトプットが一定しない場合、それは真の意味で仕組化できていないということになります。

仕組化とは、それほどまでに明確に・わかりやすく業務プロセスを示していることであり、特に業務の中の「must to do」の部分を標準化することです。したがって仕組化する際にまず必要となるのは、must to doの見極めです。

ここで気をつけたいことが2つあります。

1つ目は、must to doの定義をしっかり理解することです。「ターゲット顧客に対して提供すべき価値を創造するために必要不可欠な活動」がmust to doです。それ以外のものは、nice to doにあたります。つまり、良かれと思って次から次に特別なことを行うことはmust to doではなくnice to doになりますのでこの区別をしっかりとしておくことが重要です。まずはmust to doだけに焦点を当て、そのmust to do の部分においてどの社員が担当しても一定以上の結果が出るような仕組みを構築することが重要です。

もう1は「ターゲット顧客」の意味です。ターゲット顧客とは、自社が優先順位を高く取り込みたい顧客であって、既存顧客全てを指すわけではありません。顧客のことを考えて働いている人ほど、「全ての人に満足をしていただきたい」と考えがちですが、まずはターゲット顧客に対し価値提供をすることを優先的に考える必要があります。

この2つを押さえた上で、「ターゲット顧客に対して提供すべき価値を創造するために必要不可欠な活動」を定義し、それを標準化してみてほしいと思います。

さて、ここで冒頭に示した、「海外でよく聞く悩み」に戻ります。「期待通りのアウトプットが上がってこない」のは、期待の示し方が不十分であると同時に、期待通りのアウトプットが上がってくるように仕組化をしていないからとも言えます。本人の努力だけに頼るやり方はマネジメントではないことを意識したいところです。

2つ目の「現地社員とのコミュニケーションの難しさ」というのは、何も言語の問題だけではありませんし、文化だけの問題でもありません。もちろん異文化への理解は必要ですが、さらに重要なことは、何をコミュニケーションするかであり、顧客への価値提供に関わる重要なコミュニケーションをしっかりしているかどうかです。そしてこれは仕組化するプロセスの中の「must to doの見極めができているか」に関係しています。それができていれば、コミュニケーションすべき内容が特定されるので、よりスムースになるのではないでしょうか。

仕組化する能力は、海外事業に携わるリーダーだけでなく、全てのリーダーに必要な力です。社員の努力だけに頼らず、誰もが一定以上の結果を出せる仕組みを考え、作り上げることこそ、マネジメントの重要な役割の1つです。
【参考リンク】
グロービス アジアパシフィックグロービス タイランド

アジアで活躍する企業・ビジネスパーソンの支援をすべく、日本語・英語に対応した「グローバル研修」をご提供するとともに、日本で8万人以上の方に受講いただいている「グロービス・マネジメント・スクール」をシンガポールとバンコクで開講しています。

  • 葛山 智子

    株式会社T. K. Associates代表取締役/グロービス経営大学院教員

    大学院卒業後、ナイキ・ジャパン、アマゾン・ジャパン、外資系コンサルティング会社を経てグロービスに参画。グロービスでは、経営戦略・マーケティング領域の研究・プログラム開発に携わると共に、G1グローバルなどの世界会議の立ち上げ・運営を行う。その後シンガポール・タイを拠点として、ASEAN地域の人材育成事業を推進し、東南アジア統括会社を含む3社の社長を歴任。同時にグロービス本社の経営メンバーとして、マネージングディレクター・エグゼクティブコミッティメンバーの要職に就く。現在、独立し、株式会社T. K. Associatesの代表取締役を務め、海外で活躍する日本人・日本企業がさらに活躍するためのコンサルティングや発信活動を行っている。

    名古屋大学教育学部卒業、オハイオ大学経営大学院修了、オハイオ大学院大学院スポーツ健康学部修了

    学位:MBA、スポーツマネジメント修士(Master of Sports Administration)

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