中国をめぐって何かと騒がしい。日本では中国から輸入した餃子に農薬が混入していて、食べた人が中毒症状を起こした。チベット自治区では独立を求める抗議活動が活発化し、新華社の報道では「10人の死者が出た」とする一方、100人に達したとの未確認情報もある。2008年の夏には北京でオリンピックが開かれることになっているだけに、中国政府としても神経を使うところだが、もしさらに流血という事態になると、「ボイコット」という話が出るかもしれない。
世界の資源を漁る中国
オリンピックのボイコットと言えば、1980年のモスクワ大会がある。その前年にソ連がアフガニスタンに侵攻したのを受け、米国のカーター大統領がオリンピックのボイコットを決め、各国に同調を求めた。日本や韓国、西ドイツ、中国など50カ国がボイコットしている(その次に開かれた1984年のロサンゼルス大会は、ソ連や東欧などが「報復」的にボイコットしている)。
英エコノミスト誌の最新号(3月15日号)では、中国のことを特集している。特集のタイトルは「がつがつ食うドラゴン」。容易に想像できるように、世界の資源を漁る中国について書かれたものだ。中国がどれぐらい資源を使っているか、エコノミスト誌から引用してみる。
「世界の人口の約5分の1を占める中国は、世界の豚肉の半分以上、セメントの半分、鉄鋼の3分の1、アルミの4分の1以上を消費している。そして1999年当時よりも大豆の輸入に35倍、原油の輸入にも35倍、銅の輸入に23倍の金をかけている。実際、銅については2000年以降に増加した銅生産の5分の4以上を中国だけで飲み込んだ」
IEA(国際エネルギー機関)が発表した「ワールド・エネルギー・アウトルック2007」では中国とインドを取り上げている。その中で、中国が輸入する原油の量は「2030年には現在の3倍に達する」と見通している。
中国が発展することは、世界経済全体にとってプラスである。米国や欧州の景気が減速しても、「中国をはじめとするアジアが世界経済を牽引してくれるかもしれない」という期待がある。いわゆる「デカップリング(切り離し)論」だ。実際にはそううまくは行かないようだが、それでも中国が大量に資源を消費することで、農産物や鉱物資源を中国に輸出している国は潤う。
もちろん問題もあり、最も顕著なのは原油価格だ。原油価格が100ドルを超えることは、3年ほど前には想像もできなかった。今でも電力業界などでは「実勢は60ドル」とし、それ以上は投機資金によるものだという。それにドルの実力が低下していることが、ドルで「表示される」原油価格を押し上げているという面もある。実際、一部産油国にはドル決済を止めようという動きもある。しかし中国やインドの急成長が原油高騰の背景にあることに疑問の余地はない。
エコノミスト誌は「この資源の消費が、中国国内では『資源の浪費』と『公害』という形で現れ、国民の健康をむしばんでいる」と指摘している。
とりわけ公害問題では、北京オリンピックに備えて、日本や韓国が選手のキャンプ地として名乗りをあげているという話も聞いた。競技前日まで別の国で調整をし、競技日だけ現地入りして試合に臨んだほうが選手の健康にいいというのである。
公害対策に力を入れる中国政府
かつての日本も高度成長時代には公害に悩んだものだ。その当時、公害に対する政府や企業の感覚の鈍さは世間から非難の的となったが、中国でも同じことが起きている。
チベット自治区の問題は世界から注目されやすいが、もし国内で公害などが激しくなると、住民の抗議活動も日本と同じように激しくなるかもしれない。公害対策には力を入れている中国政府だが、胡錦涛国家主席にとっては内政の重要度がますます高まっているようだ。
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