※2014/4/10にNumberWebに掲載された内容をGLOBIS知見録の読者向けに再掲載したものです。
前回は魅せる際に押さえておくべきポイントについて触れた。今日は、どんなことに魅せられるのかについて考えてみたい。
特にオリンピック、ワールドカップなどの魅力は、勝負の結果だけではなく、そこに至るプロセス、活躍の裏にある、挑戦、苦悩、そして耐えながらも前進する強靭な精神と肉体に魅了される経験も多いのではなかろうか。一流選手のこのような姿に触れ、感動することも、スポーツの大きな力の1つといえるであろう。
企業に置き換えると、「魅せる」ものには、その企業が提供している製品やサービスそのものも(スポーツでいうところの勝負の結果)あるが、企業の理念や、理念から生まれるこだわりや組織文化、また製品やサービスの裏に隠されたプロセスなどもその1つに該当するであろう。特に最近注目されているのが、その組織の持つ組織力の源泉。そしてそこから生み出される組織文化。「働きがいのある企業」や「従業員満足度の高い企業」のランキングが注目されることも多くなった。
従業員がどれくらい幸福度を持って仕事に就いているか。
それは従業員満足度の向上にもつながり、満足度の向上により従業員の生産性アップにつながるなど企業としても無視できないものになっている。
従業員満足度の高い組織は逆境に強い
ではどのような人や組織が幸福度・満足感が高いのだろうか。
満足し幸福感の高い従業員やその組織は、レジリエンス力があるという。レジリエンス力は回復する力であり、「困難な状況にもかかわらず、しなやかに適応して生き延びる力」(『日本の人事部 人事辞典』)を指す。環境の変化により下降状態に陥っても、そこから柔軟に立ちあがってくるその復活力とでもいうのであろうか。
環境の変化を避けることはまず難しい。良いときもあれば、悪い時もある。それがこの世の中。ならば、悪い出来事を避けるのではなく、この悪い時にどれだけしなやかに立ち戻ってくることができるのか、そういう力のディベロップに力を注いだほうがよい。
事実への“意味づけ”が幸福感を高める
幸福感を高めるには、根っからのポジティブシンカーを目指すということではない。それよりも重要なのは、起きている事象を「どのように」とらえるか、というその「視点」の持ち方だ。
ある事象が起きた時に「駄目だ」「不幸だ」「なんでこうなったんだろう」というとらえ方をするか、その出来事を自分の人生に何らかの「意味づけ」をすることができるか、意味がでてくるような見方をしているかどうかが分かれ道であるといわれている。
つまり、リフレーミングの力だ。リフレーミングとは、「事実に対して与えている意味づけを変え、異なる見方でとらえ直すこと」(同上)である。
起きた事実は変えられない。だがその事実に対してどのような意味を見出し、とらえなおすかという点に関しては努力の余地があるのである。
逆境からの復活劇こそがスポーツの魅力だ
このようなことができる人は、レジリエンス力を高めることもでき、比較的自分の人生(仕事を含む)に対する幸福感・満足感が高いといえるのであろう。企業自体も、組織を構成する1人1人もこのようなレジリエンス力が重要になり、レジリエンス力から生まれる、もしくはレジリエンス力につながる組織文化や規律、企業活動や企業ストーリーに魅せられる読者も少なからずいるであろう。
そして、スポーツやスポーツ選手の魅力の1つも、このようなリフレーミング力と、そこから生まれるレジリエンス力、そしてそのレジリエンス力がもたらす強靭な肉体・技術・精神力などにあるのではなかろうか。
ソチオリンピックでの浅田真央選手の復活劇などスポーツ選手が立ち戻ってくる姿を見るたびに、レジリエンスやリフレーミングの力の重要性を感じる。企業が成長していくに当たって、従業員とどのような企業文化を築いていくのかについても、スポーツ選手から学ぶことも多くあると思う。