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パ・リーグはなぜ観客が増えたのか?顧客を魅了するイメージ戦略を考える

投稿日:2015/05/25更新日:2021/11/30

※2014/3/6にNumberWebに掲載された内容をGLOBIS知見録の読者向けに再掲載したものです。

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さて前回は、「魅せる」重要性について書いた。スポーツでもビジネスでも、顧客に大きなインフルエンスを与え、顧客がロイヤル化していくプロセスを促進するには、その製品・サービスについてどのようなパーセプション(認知)を顧客が持っているかが大きな役割を果たす。つまり、顧客は「どのように」魅せられているか、ということだ。

例えば「ナイキ」。

ナイキのイメージは、先駆者的、エッジの効いている、斬新、先鋭的などがあろう。ナイキは競合商品と明確に差別化したこのようなパーセプションを創り上げ、そして顧客からの支持を得て世界で売上を伸ばしている。

当たり前だが、パーセプションが創られればよいというわけではない。そのパーセプションがビジネス的に価値を生み出さないものであっては意味がない。つまり、認識はされているものの、その認識が、有意性や魅せることにつながっていない場合である。

一方、どんなパーセプションを創りだすのかを戦略的に考え、その認識を有意性や魅せることにつなげ顧客を魅了することができれば、ビジネスに大きなインパクトをもたらすことができる。

新たなファン層を獲得したパ・リーグの成功例

パーセプションを有意性や魅せることにつなげている例を挙げてみよう。

スポーツの事例で言えば、パ・リーグなどが比較的巧みにパーセプションを創りだしたのではないだろうか。

以前のコラムで暗い、「酔っ払ったオジさんがヤジを飛ばす」などのパーセプションが創られていたが、スタジアムの改修や、数々のファンサービスなどによってそのイメージを変えている。暗くておじさん色の強いイメージがあるスタジアムに足を運ぶ人は限られるが、イメージを変えることにより、より多くの観客が足を運ぶようになった。

しかもこれが効果的だったのは、このパーセプションを今までのコアファンに創ったのではないからだ。パ・リーグにとって新しいファン層、つまり、スタジアムで過ごすこと自体に楽しさを見出す人々に創りだしたところが巧みである。

顧客の興味に訴えるイメージを創造せよ

この人たちが、購入している製品・サービスは、実は試合の結果そのものではなく、その空間である。スタジアムの改修などでターゲット顧客が価値を見出す空間を「物理的に」創りだしただけではない(つまり製品の質を上げただけではない)。

例えばレディースデイや「ビューティーチケット」「婚活シート」のキャンペーン活動などを通して、ターゲット顧客の頭の中に、例えば「オープン」「新しい」「もはやおじさんのものだけではない!」というようなイメージを創りだし、新しい顧客層が「これ面白そう! 行ってみよう!」と思うような価値あるイメージ、つまり有意性のあるイメージを創りだすことに成功したからこそ、新しい層をはじめとする多くの人に支持されたのである。

このように、ビジネスにおけるパーセプションの役割は非常に大きいのだ。

「質の良い睡眠」以外を切り捨てたホテル

次は企業の事例をみてみよう。

「remm」という睡眠をテーマにしたビジネスホテルが好例であろう。

よい質の睡眠をとれる=レム、というパーセプションを見事に創りだしている。ではそのイメージをどのように創りだしているか。

「remm」のキャッチコピーは「眠りをデザインするホテル」。実際に、このような広告も出している。それだけではない。部屋の広さの割に大きな、寝心地の良いオリジナルベッドがドカンと置いてあり、よい睡眠が得られるような寝具と環境が完璧に揃っている。そして、逆にその他のサービスは最小限に抑える。チェックインもほぼ自動化、通常はバスタブさえも部屋にない。書斎机もない(ちょっとしたテーブルはある)。ドレッサーもない。つまり、質の良い睡眠を創りだすもの以外は、徹底的にカットされている。

「“(限られた時間でも)質の良い睡眠”以外を宿泊施設に望むのであれば、ここはもしかすると最適な場所ではないかもしれません」と言っているかのようである。ここに戦略の強さがある。

やるべきこと、やらないことを切り分ける

パーセプションを創り、有意性を持たせるには「あれもこれも」ではだめなのである。

これはやりますが、これはやりません、と「やらないことを決める」ということが大事なのだ。またそれが実現可能なのは「どういう顧客に魅せるべきか」を決めているからである。全員を魅了するわけではなく、「夜も遅く、朝も早くにチェックアウトするので、ホテルでは眠るだけ。とにかく一にも二にもよい睡眠をとりたい!」と願う人だけに狙いを定めているからこそなせる業なのである。

つまり「どう魅せるか」と「誰を対象にして、魅せるか」は常にセットで考える必要がある。ゆえに、魅せる活動を始める際には、まずはターゲットはだれで、その人たちは何に価値を感じる人なのかの分析から始めてみることが重要であろう。

そして、それを定めたら、やるべきことを決める。やるべきことを決めるということは、「やらないことを決める」ということであり、有限の資源を「やらないと決めたこと」に使うのではなく、やると決めたことに集中的に使うことが肝要である。

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