円安は輸出型産業にとっては追い風となる一方で、原材料を海外から輸入している会社にとってはコストアップに繋がるともよく言われます。実際ここ3年ほどの期間に円ドル為替レートが70円台から120円台へと大幅に変動し、業績が大きく影響を受けた会社も多いのではないでしょうか。
ところで、為替の影響は決算書のどこに表れるのでしょう?ここでは、損益計算書への具体的な影響を見ていきたいと思います。
為替による損益計算書への具体的な影響
まず、外貨建の売上や仕入は取引時の為替レートで円に換算されるため、為替変動は売上高と売上原価の増加・減少に直接影響します。
例えば、同じ1,000ドルの売上でも@100円では100,000円、@120円では120,000円となり、外貨での取引金額は同じでも円にすると異なります。これが「輸出型企業の円安による増収効果」と言われるものです。さらに原材料などを国内で調達していると仕入原価は為替の影響を受けないため、一時的には利益にも好影響となります。
次に、掛け取引(例:当月末締翌月末払い)の場合、売上や仕入取引後、代金決済までの期間の為替変動は営業(本業)外の取引として取り扱われることになり、経常利益に影響を及ぼします。例えば、売上時点の為替レートが@120円、売上代金回収時点に為替レートが@130円と円安に振れるとすると、@10円の利益が発生します。これを為替差益と言います。外貨での取引金額が1,000ドルとすると、為替差益は@10円×1,000ドルの1万円となります。これは、売り上げた時点では@120円で12万円入金されると思っていたのに、為替が円安(@130円)に振れたため、1万円得をしたということです。
以上の売上取引を例に簡単にまとめると、昨年、今年ともに1,000ドルの売上、昨年の為替レートが@100円、今年が@120円、そして今年の売上1,000ドルの代金回収時が@130円の場合、
円安による増収効果:1,000ドル×(@120円-@100円)=20,000円→売上高に影響
円安による為替差益:1,000ドル×(@130円-@120円)=10,000円→営業外収益(経常利益)に影響
となります。
一口に「為替変動が業績に及ぼす影響は?」と言っても、具体的に影響が現れる箇所は1つではないということですね。
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