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前回は「PCDA」のドゥ、つまり実行にフォーカスし、実行力を高めるためにまずは自らが立つパワーの基盤を強化し、人脈を構築し、自分の使用可能なパワーを大きくするという議論をした。今回は、構築した人脈を生かすための話をしていこう。

地道な努力で蓄えた力も「実際に使えない」と意味がない。実際に「力」を使うために大切なのが、利害関係を見極めた上での、「健全な」根回しだ。

根回しというと、特に若い人の中にはネガティブな印象を持つ人も多いかもしれない。しかし、根回しの目的が私利私欲に向かない限りにおいては、社内外で前向きに物事を動かすために、しっかりやっていくべきだというのが私の考えだ。これを「健全な根回し」と呼ぼう。

健全な根回しのために最も大切なことは、主要な関係者の分析だ。主要な関係者、意志決定者は誰なのか。現在検討中の案件に関してどのような考え・スタンスなのか。組織的にはどのようなミッションを背負っているのか。今回の件からどのようなメリット、デメリットを受けるのか、などを考えるのである。

それをふまえたうえで、しっかりと事前調整(何が本件のポイントなのか、いつまで、何をしてほしいのかなどを伝え、理解を得る)を実施するのだ。

この際、伝えて手が誰かということも大切だ。人間は感情の生き物だ。同じ話でも、誰から聞かされるかによって反応が異なるのも当然だろう。自分は本件の根回しをするのに適切な人間かどうかを今一度考えてみるというのはとても大切なステップだ。

伝える順番やタイミングなどにも配慮が必要なことは言うまでもない。こうして、人と人の関係性の中で、力を活用するベースを整えるのである。

根回しと同時進行で進めるべきなのは、進めたいと考えている案件に関して一緒に戦ってくれる仲間を探す、作ることだ。パワーの基盤を作るという一般論ではなく、案件ごとに誰とチームを作って取り組んでいくかを決めていく、選んでいくということである。

具体的な案件を進める人間関係には単純化すれば縦と横がある。縦の関係は端的に言えば上司と部下だ。上司の理解が得られず、それがボトルネックになって会社の改革が進まないといった声を聞くことがある。しかし、最も頻繁にコミュニケーションをとっているであろう、直属上司ひとりの理解を得ることができずに、その周りの人を動かすことなどまずできない。

上司もひとりの重要なステークホルダーとみたてて、十分な分析のうえ、その時々の状況や興味を見極め、話を進めるべきだ。

リーダーシップ研究の大家、ジョン・P・コッターの書いた著名な論文に「マネージング・ユア・ボス(上司をマネジメントする)」がある。まさに上司とどうつきあっていくのかの重要性を指摘したものであり長年読み継がれている。

横の関係は、最後まで逃げずに共闘してくれるのは誰かということである。特に社内を変革するというような取り組みは、ある層には痛みを伴う状況になる場合が多く、様々な抵抗勢力が発生する。孤軍奮闘では限度があり、共闘してくれる仲間を見いだし巻き込んでいくことが重要だ。
部門を超えて共闘する仲間を作ることができれば様々な情報を入手するのにも役立つだろう。健全な根回しをする、縦横の関係性の中で共闘する仲間をしっかり巻き込む、この2つを意識してみてほしい。

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※この記事は日本経済新聞2013年11月13日に掲載されたものです。
(Cover photo: shutterstock / Ismagilov)

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