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前回は「論理的に考える」パートの初回として「課題・論点(イシュー)をおさえる」ことを議論した。今回は次のステップとして、企業での各部署、各拠点(エリア)、各チーム、各階層、各人が抱えるイシューの構造を考えていく。

話をわかりやすくするために、中期経営計画をとりあげる。例えば「持続的成長に向けた『高収益体質』へ変化するためのチャレンジを推進する。最終年度の2020年度に自己資本利益(ROE)10%以上、経常利益100億円、海外売上比率40%をめざす」との目標があるとしよう。

これは経営トップが全社を見渡し将来に向けて設定したイシューといえる。最初に経営陣が設定するイシューは何より重要だ。この段階で現在の自社に「ふさわしい」イシューを設定できなければ、その後の活動がいかにすばらしいものであっても、会社は間違った方向に導かれてしまう。不適切なイシューに対して適切な課題解決を進める、ことになるからだ。

さて、中計をみて営業担当の課長はピンとくるだろうか。人事部の課長、生産部の課長はどうだろう。イシューが大きすぎるため、それぞれの立場や役割でピンとくるまで目標をブレークダウンする必要がある。

目標を実現するために各部署で何をしていくのか、それぞれが目標を設定しなければならない。

大切なのは各部署の目標をすりあわせた際、全体目標に到達、そして整合していることだ。部署間の連携が悪くなる、部署によって使っている言葉が異なり誤解が生まれるなど、企業規模が大きくなるにつれて、整合性を確保するのが難しくなることは多い。

こうしたものを乗り越えて、例えば、営業であれば、地域ごと、プロダクトの責任者ごとに、それぞれの目標を設定していく。この作業をきめ細かく進めることで、○○地域担当の営業課長は、上位の目標の意味と自分の仕事をつないで考えることができるようになるはずだ。

イシューは常に、組織上、1つ下の階層のイシューの合計値になっている必要がある。ビジネスパーソンが自らイシューを設定する場合は、少なくとも1つ上の立場の人が抱えているイシューを意識する必要がある。自分の上司は、どんなイシューを抱えているのか。それを把握することなく、自らやるべきことを明確にすることはできず、横との調整も難しい。

一方、組織上の整合性を重視するあまり、目標・イシューを機械的に分解して目標をおろしていくということは避けなければならない。いわゆる「降ってきた目標」では、人のやる気は刺激されない。人は常に、意味を欲する生き物だからだ。

社会人向け大学院で教壇に立つ中で、こんな声を頻繁に聞く。「米国本社から問答無用で数字だけが降ってくる」「見たこともない上層部が東京で勝手に数字を決めて、あとはそれが降りてくるだけ」

何のために、誰のために、この目標を達成するその先に何が見えるのか。中計といった大きな目標とどう関係しているのかという全体感、ストーリーを明示する必要がある。

繰り返しになるが、こうして考えてくると、企業トップがいかにストーリー性のある、そして意味・意義の感じられるイシューを設定するかが肝になる。

部下にとっては、自分の上司は自らのイシューの起点になる存在だ。それを心して、業務の指示を出すことを考えてみてはどうだろうか。

 

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※この記事は日本経済新聞2013年7月24日に掲載されたものです。
(Coverphoto:shutterstock/Ismagilov)

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