インストアシェアとは - 店舗レベルでの競争力を見える化する指標
インストアシェアとは、特定の取引先や店舗において、自社商品の販売金額(または数量)が、その店舗全体の総販売金額(または数量)に占める割合のことです。
簡単に言えば、「この店では自分たちの商品がどれくらい売れているか」を数値で表したものです。例えば、あるコンビニエンスストアの飲料売上げが月100万円で、そのうち自社の飲料が20万円売れていれば、インストアシェアは20%になります。
この指標は、特定の取引先における自社商品の相対的な地位を明確に示すため、小売業界やメーカーにとって重要な戦略指標として活用されています。チャネル戦略を立案する際や、店舗との関係性を評価する際に欠かせない分析ツールといえるでしょう。
なぜインストアシェアが重要なのか - 店舗レベルの戦略に必要不可欠な理由
インストアシェアが重要視される理由は、市場全体のシェアだけでは見えない、店舗レベルでの競争状況を把握できるからです。
①取引先との関係性が見える化される
インストアシェアが市場シェアよりも高い場合、その取引先と良好な関係が築かれていることを意味します。店舗側が自社商品を積極的に推薦してくれている、または消費者に対して効果的なアプローチができていることの証拠です。
逆に、市場シェアよりもインストアシェアが著しく低い場合は、その店舗での競争力に問題があることを示しています。店舗全体の売上げが好調であるにもかかわらず、自社商品だけが売れていない状況は、明らかに改善が必要な状態といえるでしょう。
②セールスプロモーションの効果測定ができる
インストアシェアは、店舗で実施しているプロモーション活動の効果を直接的に測ることができます。広告宣伝や店頭キャンペーンが実際に売上げにつながっているかを、具体的な数値で確認できるのです。
これにより、限られたマーケティング予算をより効果的に配分することが可能になります。成果の出ている店舗の手法を他の店舗に展開したり、効果の薄い施策を見直したりする判断材料として活用できます。
インストアシェアの詳しい解説 - 計算方法から活用のポイントまで
インストアシェアを効果的に活用するためには、その計算方法や分析の視点を正しく理解することが重要です。
①基本的な計算方法と分析の観点
インストアシェアの計算式は以下の通りです:
インストアシェア(%)=(特定店舗での自社商品売上)÷(特定店舗での商品カテゴリー総売上)× 100
この指標を分析する際は、単純に数値の高低だけでなく、市場全体のシェアとの比較が重要になります。市場シェアが10%の商品が、ある店舗で15%のインストアシェアを獲得していれば、その店舗では競合よりも優位に立っているといえます。
また、時系列での変化を追跡することも大切です。インストアシェアの推移を見ることで、施策の効果や競争環境の変化を把握できます。
②競合分析における活用方法
インストアシェアは競合分析において非常に有用な指標です。同一店舗内での競合商品との比較により、自社の強みや弱みを具体的に把握できます。
例えば、A社の商品が市場全体では20%のシェアを持っているのに対し、特定の店舗では10%のインストアシェアしか獲得できていない場合、その店舗では競合他社に遅れを取っていることが分かります。この情報を基に、店舗スタッフとの関係強化や販促活動の見直しを検討できます。
③業界特性による違いと注意点
インストアシェアの重要性や活用方法は、業界によって異なります。食品や日用品のような日常的に購入される商品では、店舗での露出度や価格設定がインストアシェアに大きく影響します。
一方、家電製品のような高額商品では、店舗スタッフの商品知識や接客スキルがインストアシェアを左右することが多くあります。また、季節性のある商品では、タイミングを考慮した分析が必要になります。
業界特性を理解した上で、自社にとって最も効果的な活用方法を見つけることが重要です。
インストアシェアを実務で活かす方法 - 売上向上につなげる具体的アプローチ
インストアシェアの分析結果を実際のビジネス成果に結びつけるためには、具体的なアクションプランが必要です。
①店舗レベルでの改善施策の立案と実行
インストアシェアが低い店舗に対しては、まず現状の問題点を特定することから始めます。品揃えが競合より少ないのか、売場での露出が不十分なのか、価格設定に問題があるのかを詳しく調査します。
問題が特定できたら、具体的な改善策を実施します。例えば、エンド売場でのプロモーション頻度を増やしたり、店内チラシでの取り扱いを強化したりします。スペースシェア(売場占有率)を高めることも効果的な手段の一つです。
特に、販売価格が比較的低い商品の場合、短期間でインストアシェアを改善しやすいとされています。価格的なハードルが低い分、消費者の購買行動を変えやすいからです。
②継続的な関係性構築とモニタリング体制
インストアシェアの向上は一時的な施策だけでは実現できません。取引先との長期的な関係構築が重要になります。
定期的な店舗訪問や売場提案、季節に応じたプロモーション企画の提案など、継続的なサポート活動が必要です。また、店舗スタッフとのコミュニケーションを密にし、商品の特徴や訴求ポイントを正しく理解してもらうことも大切です。
さらに、インストアシェアのモニタリング体制を整備し、変化を早期に察知できるようにします。月次や週次での定期的な分析により、市場環境の変化や競合の動きに迅速に対応できるようになります。
このような継続的な取り組みにより、インストアシェアの向上だけでなく、取引先との信頼関係も深まり、長期的なビジネス成長につながるのです。