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税効果会計とは?会計と税務のタイミングのズレを解決する画期的な仕組み

投稿日:2025/06/25更新日:2025/07/30タイマーのアイコン 読了時間 7分

税効果会計とは、会計上と税務上の利益差を調整し、企業の実態を正確に示す会計手法です。グロービス経営大学院の教員が執筆した「MBA経営辞書」をもとに解説します。

税効果会計とは

税効果会計とは、企業が支払う法人税等を適切に会計処理するための手法です。

簡単に言うと、会計上の利益と税務上の所得計算に生じる時期のズレを調整し、より正確な企業の財政状態と経営成績を示すための仕組みです。

具体的には、税金等調整前当期純利益に対して、実際に税務署に支払うタイミングに関係なく、理論上支払うべき税金の額を発生主義に基づいて計算します。そして、支払い時期の差については、将来の税率を適用して貸借対照表に「繰延税金資産」または「繰延税金負債」として計上するのです。

これにより、企業の真の収益性や財務状況をより正確に把握できるようになります。

なぜ税効果会計が重要なのか - 企業の本当の実力を見極めるために

税効果会計は、現代の企業会計において欠かせない重要な概念です。その理由を詳しく見ていきましょう。

①財務諸表の信頼性を高める効果

会計上の利益と税務上の所得には、しばしば大きな差が生まれます。

例えば、企業が設備投資を行った場合、会計上は耐用年数に応じて毎年少しずつ減価償却しますが、税務上は初年度に大きく償却できる場合があります。この差異をそのままにしておくと、財務諸表上の税金費用が実態とかけ離れてしまい、投資家や債権者が企業の真の収益力を正しく判断できなくなってしまいます。

税効果会計を適用することで、このような時期のズレを調整し、企業の本当の収益性を正確に表示できるのです。

②期間損益の適正化を実現

税効果会計のもう一つの重要な役割は、期間損益を適正化することです。

企業の経営成績は、各期間ごとに正確に測定される必要があります。しかし、税金の支払いタイミングと会計上の費用認識タイミングがずれると、特定の期間の利益が大きく歪んでしまう可能性があります。

税効果会計により、このような歪みを解消し、各期間の真の経営成績を明らかにできるため、経営者による意思決定や投資家による企業評価がより適切に行われるようになります。

税効果会計の詳しい解説 - 仕組みと計算方法を理解しよう

税効果会計をより深く理解するために、その仕組みと計算方法について詳しく解説していきます。

①繰延税金資産と繰延税金負債の違い

税効果会計では、「繰延税金資産」と「繰延税金負債」という2つの重要な概念が登場します。

繰延税金資産は、将来の損益計算書上の利益に対応する税金を、今期すでに支払っている状態を表します。つまり、税金の前払いのような性質を持っています。

例えば、会計上は今期に貸倒損失を計上したが、税務上はまだ損金として認められない場合、今期は多めに税金を支払うことになります。しかし、将来税務上も損金として認められれば、その分の税金は戻ってくる可能性があるため、これを資産として計上するのです。

一方、繰延税金負債は、過去または今期の損益計算書上の税金等調整前当期純利益に対応する税金で、まだ支払っていないものを表します。

例えば、税務上の減価償却が会計上の減価償却よりも大きい場合、今期の税金は少なくなりますが、将来的には会計上の減価償却の方が大きくなるため、その時に追加の税金を支払う必要があります。この将来支払う税金を負債として計上するのが繰延税金負債です。

②一時差異と永久差異の理解

税効果会計が必要になる理由は、財務諸表作成と税額計算の間に2種類の期間差異があるためです。

一時差異は、会計と税務で最終的な総額は同じだが、認識するタイミングが異なるものです。

代表的な例として、減価償却費があります。会計上は定額法で毎年同額を償却するが、税務上は定率法で初年度に多く償却する場合、総額は同じでも各年の金額が異なります。このような差異は、長期的には解消されるため「一時差異」と呼ばれます。

永久差異は、会計と税務で根本的にルールが異なるため、永久的に差異が続くものです。

例えば、交際費の一部は会計上は費用として計上されますが、税務上は損金として認められません。このような差異は将来も解消されないため、税効果会計の対象外となります。

③税効果会計の計算プロセス

税効果会計の計算は、以下のステップで行われます。

まず、会計上の利益と税務上の所得の差異を洗い出し、一時差異と永久差異に分類します。次に、一時差異について将来の予想税率を適用して繰延税金資産または繰延税金負債を計算します。

そして、当期に支払う実際の税金と理論上の税金費用の差額を、繰延税金資産または繰延税金負債の増減として貸借対照表に計上し、損益計算書には理論上の税金費用を計上するのです。

この処理により、損益計算書上の税金費用は会計上の利益に見合った適正な金額となり、企業の真の収益性が正確に表示されます。

税効果会計を実務で活かす方法 - 経営判断と財務分析への応用

税効果会計の知識は、様々な実務場面で重要な役割を果たします。具体的な活用方法を見ていきましょう。

①財務分析での活用シーン

投資家や金融機関が企業を評価する際、税効果会計の理解は欠かせません。

例えば、ある企業の利益が急激に増加した場合、それが本業の好調によるものなのか、それとも税効果会計による一時的な影響なのかを見極める必要があります。繰延税金資産が大幅に増加している場合は、将来の税金負担が軽くなる要因があることを示しており、持続的な収益改善の可能性を示唆しています。

また、M&Aの際には、買収対象企業の繰延税金資産・負債の内容を詳細に分析することで、将来のキャッシュフローへの影響を正確に予測できます。これは買収価格の決定や統合後の事業計画策定において極めて重要な情報となります。

②経営管理での実践的なポイント

経営者にとって税効果会計は、経営戦略を立案する上で重要な判断材料となります。

設備投資の意思決定においては、会計上の減価償却と税務上の償却方法の違いが、将来の税負担とキャッシュフローに与える影響を考慮する必要があります。特に大型の設備投資を検討する際は、税効果も含めた総合的な投資収益率を計算することで、より精度の高い意思決定が可能になります。

また、組織再編や事業再構築を行う場合、税効果会計の観点から最適なタイミングや手法を選択することで、税負担を最小化しながら財務諸表上の利益を最大化できる場合があります。

さらに、中期経営計画の策定においては、繰延税金資産・負債の将来の解消時期を予測することで、各年度の実効税率や純利益をより正確に見積もることができ、現実的な業績目標の設定が可能になります。

税効果会計は複雑な概念ですが、その本質を理解することで、企業の真の財務状況を把握し、より適切な経営判断を下すための強力なツールとなるのです。

参考ページ

MBA経営辞書「税効果会計」

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