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得意技と必殺技・パナソニック対タニタの「活動量計」対決!

投稿日:2010/10/15更新日:2019/04/09

健康志向の高まりが生む新たな市場

そもそも「ダイエット」の本来の意味は「美容・健康保持のために食事の量・種類を制限すること(広辞苑第6版)」である。しかし、昨今は広義の日本語として痩身目的の運動までを含めて用いる場合が多い。また、健康ブームの一例としては、来年2月開催予定の「東京マラソン2011」で、定員3万2000人のマラソンに対して29万4469人が応募と、実に倍率9.2倍にも及んだ。10キロなども含めた応募人数は33万5147人と過去最高に上ったという。

「マラソンまでは無理だけど、せめてウォーキングから…」という層も中高年だけでなく女性にも拡大している。漫然と歩くだけでなく、目標を決めて成果を確認するツールとして「歩数計」の販売も拡大し、少し古いデータだが、2007年の歩数計の販売台数は540万台程度と、2年前の2005年に比べて1.4倍拡大した(SMBCコンサルティング)という。

さらに機器は進化し次なる主戦場は「活動量計」に移行すると予想される。

10月7日付日本経済新聞「新製品バトル」のコーナーにタニタとパナソニックの活動量計の比較が掲載されていた。歩数計が歩行した歩数を計測することを基本とし、それによるカロリー消費量などを計算・表示する機能を有するものを指すのに対し、活動量計は、特定の運動・特定の時間だけでなく家事や仕事などのあらゆる日常活動における動きを計測し、消費カロリー量を算出してくれるのだ。

マラソンに挑戦しようという超健康志向アクティブ層はいうに及ばず、ウォーキングという軽い運動すら継続の自信を持てない人も多い。だからといって、諦めるわけにはいかない。そんな層にとっては歩数計と活動量計の違いは大きい。ダイエットのためにはとにもかくにも、「摂取カロリー<消費カロリー」の状態を継続するしかない。日常の活動全体の中で、目標達成に足りない消費分知ることができれば、消費を補う運動をするなり、摂取する食事量を制限するなりと手立てができる。格段にダイエットの成功率が高まる(と、思うことができる)。

先に紹介した日経の記事では、自分が消費しているカロリーに関心がある人の合計は8割近くに達する。しかし、実際に計測している人は7%にすぎない。活動量計を「買いたい」「買ってもよい」と答えた人は合計53%で潜在的な需要は大きいと分析している。

さて、パナソニックとタニタの活動量計は両社の戦略ポジションを如実に表した製品となっている。

得意技のパナVS必殺技のタニタ

記事で紹介されているパナソニックの「デイカロリEW-NK30」のウリは、「ダイエット目標設定」。減らしたい体重を入力すると、一定期間で目標を達成するのに必要な1日の消費カロリーが自動で設定される。目標設定まであと何キロカロリーの消費が必要で、そのためには時速何キロで何歩歩くなど具体的なアドバイスがある(日経記事より)という。実売価格で4000円前後と、手ごろな価格に設定されている。

一方のタニタの新製品は「カロリズムスマートAM-121」。前機種の容量を40%縮小するなどの改良を加えたというが、何よりのウリはタニタの独自技術にある。記事中には記述が小さいが、消費カロリーや脂肪燃焼量のほか、安静時の代謝などを計測・表示するという。

ぼーっと座っている時も、寝ている時も、「基礎代謝」によってカロリーを消費している。つまり、1日分丸ごとの消費カロリーを元に、「摂取カロリー<消費カロリー」を実現すべくトライできるのだ。そのメカニズムはタニタのホームページに詳しいが、安静時だけでなく、パソコンに向かって仕事をしているとき、掃除をしているとき、読書時などあらゆる場面でセンサーが運動を探知し、消費カロリーを測定するという。それこそが、タニタならではのUSP(UniqueSellingProposition=競合が実現し得ない自社独自の提供価値)である。実売価格は競合のパナソニック製と比べて倍の8000円前後だ。

ダイエットに関しては、タニタは計測器メーカーとして体重計、体脂肪計、体組成計、血圧計、歩数計などの専門。特に体脂肪計はシェア?1だ。それだけではない。自社の社員食堂のメニューをまとめた『体脂肪計タニタの社員食堂500kcalのまんぷく定食』(1200円、大和書房)が、2010年1月末の発売から約7カ月で、90万部近くを販売。「ダイエットのサポートといえばタニタ」というニッチな領域でのブランド価値を高めている。

ダイエット計測機器、活動計の精度のスペシャリストに対する家電業界のリーダー企業、パナソニックの戦略は、リーダー企業の定石「同質化戦略」である。松下電器時代、下位メーカーが開発・上市してヒットし始めた商品をスピードに勝る開発力を活かして迅速に模倣。強大な販売力であっという間に市場を席巻するのが「得意技」であった。単に模倣するだけではない。同等の製品を規模の経済で低価格にて商品化する「コストリーダーシップ戦略」の典型でもある。

追われる立場となるタニタの戦略は、「コストリーダーシップ戦略」に対抗する「差別化戦略」に徹することだ。原材料の調達力やチャネル支配力に依存する販売量に劣るため、コストでは勝負できない。価格を下げるのではなく、機能を高めることで差別化を図るのである。つまり、リーダーが真似できない「必殺技」で対抗するのだ。

パナソニックの「デイカロリEW-NK30」は恐らく、記事にあるような「アドバイス機能」を前面に出して、手軽に、しかしアクティブにダイエットに取り組もうという層を狙った展開を行うと思われる。手頃で試しやすい価格もそれを狙った設定であり、リーダー企業だからこそ実現できるものだろう。

一方のタニタの「カロリズムスマートAM-121」はパナソニックの倍の価格妥当性をいかに消費者に納得させるかがキモとなるだろう。そのためには、「安静時を含む様々な場面でののカロリー測定機能」とその重要性を訴求し、それを必要とするターゲット層を絞り込み、活用方法の説明、メッセージを展開することにかかっているといえるだろう。

同種のカテゴリーで全く異なるポジションの企業が、「得意技」と「必殺技」で戦う活動量計市場。パナソニック対タニタからは目が離せない。さらに、9月から医療機器メーカーでありながら一般向けには体温計・血圧計などで有名なテルモも市場に参戦した。どのような戦い方にでるのかも楽しみである。

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