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DVD100円自動レンタル機登場!変わるレンタルビジネスの生態系

投稿日:2010/02/12更新日:2019/04/09

DVD100円レンタル自販機に思わずふらっと……

事務所向かいのファミリーマートにTSUTAYAのDVD自動レンタル機が設置された。映画を見ているヒマなどない。だけど、ものすごく気になる。その仕組みがよくできているのだ。

TSUTAYABOXというらしい。

地域によって設定が若干違うが、関東地区は新作すら100円。昨今、飲料すら立地の悪い激安自販機でもなければワンコインで買えないというのに、便利なコンビニ店内に設置されてたったの100円で新作DVDが見られるのだ。レンタル時間は12時間。どんなに長くてもほとんどの作品は3時間未満。ふらっと借りてしまう勢いだ。

クレジットカードでの支払い。文字通り、その場で「ふらっと」借りることもできるようだが、PCかケータイでネット予約しておけば、見たい作品が予約から4時間確保できるという。モニターで収納されているタイトルも確認できる。約1000枚、500作品が内蔵されているというから、新作・旧作てんこ盛りの品揃えである。

このビジネスモデルは、ものすごくよくできている。

回転率を上げて売上を伸ばす

商売の基本は、どこまで行っても「売上げ=客数×客単価」だ。だが、その客数と客単価をさらに分解すると、このレンタル機の意味がさらに明確になる。

「客数=店舗前通行数×入店率×購入率」。コンビニの立地は間違いなくいい。また、時間帯にもよるが、小売り業態の中でもとりわけ入店率は高いはずだ。ちなみに、筆者はかなりの確率で吸い込まれる。そして、飲料だのガムだの、何らかは買う。昼時なら弁当だ。購入の際、「ついで買い」が多いのも特長だ。筆者も、初めてレンタル機を見た時、「おおっ!」と危うく勢いで「ついで借り」するところだった。(見る時間ないのに)。

従来通りレンタル店で客を待っていたり、客の家まで宅配でDVDを届けたりという現在のスタイルに比べると、圧倒的に客数は増えること間違いなしなのだ。

「客単価」も分解してみよう。「客単価=購入商品数×購入商品単価」だ。購入商品数は、12時間という時間では1〜3枚に限られる。購入単価は100円だ。

上記からすると、低客単価を客数で補うように見えるが、客数は「回転率」がキモなのだ。

通信販売などで「RFM分析」という指標が用いられる。R:Recency=最新購買日:どれくらい最近に購入しているか、F:Frequency=累計購買回数:どのくらいの頻度で購入しているか、M:Monetary=累計購買金額:全部でいくら購入しているかである。

毎日に近く立ち寄るコンビニなら、FrequencyとRecencyが高くなることが期待できる。結果として、Monetaryも最大化する。

チャネル(ファミリーマート)にとっても美味しい話だろう。DVDを借りたり返したりする顧客の導線を自店に引き入れることができるのだ。DVDのお供に飲料やスナック菓子をついで買いする姿が目に浮かぶ。地域にある他店との差別化もできる。

まったくもって正しい気がするこの自動レンタル機。TSUTAYAを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が、こうした取り組みを積極的に行う裏には、既存店の収益悪化という背景もある。

より筋肉質になる映像ソフトレンタル業界

2009年12月4日付日経MJの記事「CCC,新業態で店舗再生、提案型・小型・自動化・・・、モデル店で検証」によれば、09年度下期の既存店売上高は前年比約3%減を予想。10年3月期の連結売上高は前期比12%減の1950億円と5年ぶりに2000億円を下回りという見通しを示している。

映像ソフトレンタル店では、最大手のCCCと2位のゲオによる寡占化が進んでいるが、両社とも既存店売上高が伸び悩んでいるのが現状のようだ。

CCCの動きは速い。同記事によると、昨年10月末には、東京・恵比寿ガーデンプレイス内にたった30平方メートルの店舗を導入した。店内に商品を陳列せずに、店頭にあるタッチパネルで商品を選択し、レジで支払いをして受け取る仕組みだ。

商品を棚に戻す手間をはぶき、より少人数で回せるオペレーションにする。固定費削減。作品が返却されているのに棚に陳列されておらず借りられないという事態も解消できる。無駄がない。店舗あたりの収益性は向上する。棚を回って観たいDVDを探せるというユーザビリティ—は落ちるものの、すぐにそれを補完するサービスが出てくるはずだ。

今回の自動レンタル機も究極の固定費削減だろう。DVDを入れ替えるだけの人件費。店舗面積わずか1平方メートル。先に上げたコンビニエンスストア以外にも、駅構内、オフィスビル、書店など生活導線のあらゆるところに開設できる。

業界2位のゲオも、全く同様のサービス「GEOBOX」を始めている。早くも過熱しそうな予感のする「DVD100円自動レンタル機ビジネス」だが、ビジネスモデルは極めて合理的で正論。商売の基本に則っている。

モノが売れない時こそ、商売の基本を見直して「売れる所」で「売れるしくみ」を働かしていく工夫が必要なのである。今後はDVD作品が、テレビやパソコン、携帯へネット配信される動きも加速することが予想される。それに対抗する、ユーザーへの圧倒的なコンビニエンスを提供するために、数年後にはATMなみに、自動レンタル機が配備されているかもしれない。レンタルビジネスの生態系の進化は思ったより速そうだ。

  • 金森 努

    グロービス経営大学院 教員

    東洋大学経営法学科卒。大手コールセンターに入社。本当の「顧客の生の声」に触れ、マーケティング・コミュニケーションの世界に魅了されてこの道四半世紀以上。コンサルティング事務所、広告を経て、2005年独立起業。 青山学院大学経済学部非常勤講師としてベンチャー・マーケティング論も担当。著書「図解 よくわかるこれからのマーケティング」(同文舘出版)「”いま”をつかむマーケティング」(アニモ出版)。共著書「CS経営のための電話活用術」(誠文堂新光社)「思考停止企業」(ダイヤモンド社)。監修「実例でわかる!差別化マーケティング成功の法則」(TAC出版)。雑誌への連載、講演多数。一貫してマーケティングにおける「顧客視点」の重要性を説く。

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