【個人と会社の幸せの両立 #1】うまくいかない働き方改革--現場のマネジメントに何ができるのか?

2019年4月1日に働き方改革関連法案の一部が施行され、この時期を前後して、主に大企業に勤務する友人から働き方改革への取り組みを聞くことが多くなった。一方、必ずしもうまくいっていないという印象を受けていた。

同時期、私たちグロービス経営大学院大学の研究プロジェクトメンバーは、みんなで研究テーマ設定のため、それぞれの興味を話し合った。所属する業界や、ワークライフバランスに関する考え方など、多くの点で違いを見いだす一方、働くことによって人生をより豊かにできないかという問題意識は共有していた。

そこで、私たちは、グロービス経営大学院大学の研究プロジェクトとして「個人の幸せと会社の幸せ」は両立するのか、その実現の方法としての「働き方改革」について調査・研究することにした。

その結果として見えてきたのは、働き方改革が「うまくいっている」と見られている会社には共通項があること、また、ミドルマネジメントや現場のレベルでも出来ることがあることだった。また、聞き取り調査を通じて、コロナ禍にあって急速に導入された在宅勤務でも活かせる施策も複数あった。これから4回にわたって研究成果を発表していくことする。

※本連載はグロービス経営大学院に在籍した5名(近藤・白井・高橋・松本・林川)が、舞田講師の指導の下、研究プロジェクトとして取り組んだ成果をまとめたものです。

■8割の企業が何らかの働き方改革に取り組んでいる

働き方改革関連法案は、日本の労働力不足を背景に、制約ある人々も働くことができるよう、多様な働き方を可能にし、「一億総活躍社会」を実現するために施行された。

帝国データバンクの2019年12月の調査では、働き方改革の取り組みに積極的な企業は76.7%となっており、我々のグロービス経営大学院の在校生を対象とした予備調査でも81%の企業が何らかの取り組みを行っていた。

帝国データバンクデータ

■多くの人は働き方改革に意義を感じていない

また、予備調査で各社にヒアリングした結果、取り組みの内容としては大きく4つの目的があり、それに対し大きく5つの施策がとられていることがわかった。

その目的とは、A)総労働時間を減らし、B)時間や場所の制約を減らし、C)制約ある社員への支援を増やし、D)生産性を向上させることである。この目的のため、a)人事制度の拡充、b)ITシステムの活用、c)社員の裁量権を増やす、d)選択と集中、e)企業文化を共有し個人の意識を高める施策が、ほとんどの企業で取られていた。

一方で、我々の当初の印象通り、自社の働き方改革がうまくいっていないとの回答が72%を占めた。うまくいっていないと答えた人がそう判断した理由として主なものは、マネジメントの工数がかかる、やりがいとワークライフバランスの両立が難しい、コミュニケーションが希薄化する、怠ける社員が増える、業績が上がるのか疑わしい、等が挙げられた。

■働き方改革の成功の秘訣はローカルルール

そこで、少数派のうまくいっている企業の社員にインタビューを実施し、働き方改革成功の秘訣を探ることとなった。

成功している会社へのインタビューを重ねるうちに我々が気付いたことは、会社単位でなく、部署単位、チーム単位で独自のルールを設定していることである。会社から指示を受けたものではなく、管理職が独自に実施しているのだ。これを我々は「ローカルルール」と名付けることとした。

「ローカルルール」の具体例としては、例えば次のようなものがあった。

・「ワン・オン・ワン」ミーティング
一対一のミーティング。全体のミーティングや年次の人事評価でのミーティングでは吸い上げきれない個別の要望や問題を拾い上げ、早期に問題の解決に当たり、信頼関係を深めることができる

・勉強会・読書会
業務内容の共有や教育といった実務的な研修。
あるいは、企業理念や経営方針といったトップからは伝えきれない抽象度の高い話を現場に落とし込む役割も

・お互いの紹介
普段仕事上でしかつながりのない社員同士の絆を深めるため、お互いの考えや興味関心をリレー形式で共有

 

次回、第二章では上記の例を含め、こうしたローカルルールについて詳しく述べていきたい。

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