Googleで検索をしようとした人なら、ロゴが遊び心溢れるイラストでしょっちゅう変化していることに気づいているでしょう。このGoogle Doodleは、1998年にGoogle創業者のラリー・ペイジとサーゲイ・ブリンが始めました。静止画に始まり、現在ではスライドショーやインタラクティブゲームなどの仕掛けが埋め込まれるようになっています。今や様々な文化に適応し、満足度とロイヤルティ両方の面で顧客の支持を獲得し、Googleを訪れる人たちの日々のちょっとした楽しみへと進化を遂げました。この制作の舞台裏を、Google Doodleのイラストを手掛ける「Doodler」であり、サンフランシスコを拠点として活躍するフリーのアーティストであるアリッサ・ワイナンズ氏にインタビューしました。
―Google Doodleの制作について教えてください。
Google Doodleは静止画像、アニメGIF、スライドショー、動画、インタラクティブなど、様々な形で展開しています。開発に何年もかかるDoodleもあれば(特にゲーム)、リアルタイムで制作するものもあります。
通常、Google Doodleは1年かけて計画されます。アイデアはGoogleのクリエイティブチームから出ることもあれば、一般のみなさんから公募することもあります。時には子どもといった特定の層の参加を募ったり、「親切」などテーマにフォーカスするためにコンテストを行うこともあります。
プロセスは通常、アイディエーション(観念化)とスケッチから始めます。その後カラーパレットをチェックするためにカラーの下描きをつくり、それから最終版の制作に入ります。インタラクティブな場合はユーザーエクスペリエンスを最適化するために厳格なテストを行います。
―Google DoodleのROI はどのように測定しているのでしょうか。
驚きや喜びなどの感情は測定が非常に難しいものです。Google では様々な要素を検討して判定しています。ユーザーの興奮度が非常に高かったり、うれしい驚きを感じていたり、詳しく知りたいと思っているように見えたら、成功したものと捉えます。
―複数の国で表示されるGoogle Doodle について、どのような配慮をされていますか。
私たちは世界各地のチームのGoogler(Google社員)たちとパートナーシップを組んでいます。彼らに、Doodleがそれぞれの国と地域で文化的に適切で、親しみを持ってもらえるよう、アイディエーションからスケッチから最終画像まで関与してもらっています。また、特別な行事等の折には、現地アーティストにDoodleの制作を依頼することもあります。
このような国際的なプロジェクトにおいて、リサーチはもっとも重要なものの1つです。例えば、同じ祝日でも、それを祝う国や地域によって伝統が大きく異なることがあります。そうしたことに対する配慮は常に留意しておく必要があります。
―Google Doodleの制作には何人の人が携わっていますか。
Google Doodleの制作には、実制作以外にも何人もの関与が必要です。静止画像のDoodleの場合は通常1人のアーティストが担当しますが、チーム全員がレビューして意見を出します。また、ちゃんと正常にローンチされるよう見届ける多数のエンジニアによるチームもいます。大型プロジェクトでは、Google Doodleチームを超えた開発グループの一員となるパートナーやコラボレーターと協働します。
―どうしたらDoodlerになれるのでしょう?
2015年初頭にポートフォリオを募集していたツイートに返信したのです。それが私がDoodlerになるきっかけでした。チームは私の作品を気に入ってくれて、過去の作品について話し合うカジュアルな面談に招いてくれました。6カ月後、チームに加わりました。
―ユーザーに重きを置くDoodleの仕事は、フリーランスアーティストとしてのご自身のお仕事にも影響を与えたと思いますか。
少し思います。クライアントと話すとき、こうすると喜ばれるかなと思うことはおそらくGoogle Doodleの経験から学んだものです。でも半面、自分個人の作品づくりではもっと自分中心になって創作しようという気になります。外部の意見や反応に対する考えをスイッチオフすることが許される唯一のときですから。
―なぜGoogle Doodleはこんなに成功したのでしょう?
テクノロジーと関わるとイライラしたり、大変さに圧倒されたりすることもよくあります。その分、温かみや喜びが得られる、ふとした瞬間へのニーズは実のところかなり大きいと思います。また、新しいことや予想外のことを知るワクワク感は強力で、人々の間に伝染しやすいですから、それがDoodleが何年経ってもお楽しみいただけている理由の1つだと思います。
*本記事は、GLOBIS Insightsに2020年9月22日に掲載された記事を翻訳・編集して転載したものです。