「グローバル人材育成」のために企業がすべきこととは〜ヤマハ・三菱電機・花王の事例から

本記事は、HRカンファレンス2020「グローバル人材育成最前線~変革を推進するイノベーション人材輩出のヒント~」の内容を書き起こしたものです(全3回 前編)  

池田新氏:本日はイノベーション人材というテーマですが、イノベーションとは何でしょうか。「無から有をつくること」と定義される方も多いかもしれませんが、我々はこう考えます。イノベーションとは「新結合」。既存のものを、それまでとは異なる仕方で新結合させ、新しい価値を社会に提供することです。その異質なものの掛け合わせをもたらす仕掛けが「ダイバーシティ」です。しかし、多様性あふれる人材をただ集めるだけでは、混乱が広がるだけ。異才同士がしっかりとした主張を闘わせる中で、会社に新たなビジネスの種をつくっていけるようなグローバル人材育成を目指しています。

グロービスの研修の強みとは

さて、我々グロービスは「ヒト・カネ・チエ」の3つの領域でサービスを展開しております。具体的にはBtoCのグロービス経営大学院、BtoBの企業様向けの人材育成サポート。それらをリアルとオンラインでご提供しています。「カネ」はベンチャーキャピタル事業、「チエ」領域では出版・発信事業を紙とオンラインで提供しております。また、当社の英語事業ですが、1996年のイギリス・レスター大学とのジョイントMBAから始まり、2006年にはグロービス独自の英語MBAにまで発展しました。同時期に研修の英語プログラムも始まり、海外拠点も中国・上海、そしてシンガポールにも広げております。

グロービスの研修の強みですが、一つ目がその「実績」です。年間500社以上のリーダー育成に携わっております。2つ目が「アジアナンバーワンを目指す経営大学院としての強み」です。研究開発部門を有しており、時代のニーズに合わせたコンテンツの開発をしています。また、必要に応じて海外ビジネススクールとも連携しています。3つ目が「高い再現性」。知識を詰め込むのではなくて、実務でも使えるようになるための考える力を高める教育手法にこだわっています。4つ目が、それをサポートする「講師陣」。アカデミックなプロフェッサーではなくて、グローバルでのビジネス経験のあるビジネスリーダー、それも、考えさせる力を向上させるためのティーチングスキルを有している講師陣が揃っております。かといって、講師依存型ではありません。コンサルタントが研修設計から実施まで伴走します。そして、5つ目が「運営体制・学習環境」。オンラインのツールが豊富にあるというところがグロービスの強みかなと思います。

一般的に欧米のビジネススクールというと、みなさん、馬蹄式のクラスルームでの挙手方式を思い浮かべると思うのですが、グロービスのスタイルはちょっと違います。内気な日本人の特性に合わせて、4、5人のグループディスカッションを中心としたクラス運営をしています。こうすることで、否が応にも自分の意見をしっかりと言わないといけないという状況をつくり出しています。これは日本語のみならず、英語においてもすごくワークするんですね。これをリアルの世界のみならず、オンラインの世界でも実際に行っております。

我々のオンラインの研修の強みは、この右上のライブ型のオンライン学習です。

この右上の部分と、左下の個人・非同期型で行うeラーニングを組み合わせて、今回のコロナ危機においても学びを止めることなくサービス提供を続けております。

グローバル人材育成の具体事例①〜ヤマハ株式会社

さて、このようなツールをどのように研修プログラムに落とし込むのか。続いては具体事例をベースにご説明したいと思います。グローバル人材の育成パターンは、縦軸に役職、横軸に日本人・外国人のピラミッド構造で捉えると分かりやすいかと思います。

まずは左下、国際化フェーズにおける日本人海外赴任者育成から始めます。

このフェーズの育成対象である日本人海外赴任者の課題は、本国では優秀でも、駐在員として海外へ行くと結果が出せないという課題です。その原因として考えられるのが、論理思考力、マネジメント知識、異文化理解の不足ということが考えられます。

ここで紹介したい具体事例が、楽器ビジネスの世界ブランド、ヤマハ様で行ったプログラムです。

売上の75%が海外というヤマハ様。1年後から3年後に海外赴任もしくは海外プロジェクトを主務とする予定の若手社員を対象に、異文化の中でも存在感を発揮するコミュニケーションスキルを身につける目的で始められました。

ゴールとするグローバル人材の定義がこれです。

自ら課題を設定し対策を立案する。多国籍チームで開発業務に従事できる技術者。基幹職の3分の1をこの定義に当てはまる人材にしようという構想です。こだわったのが、「コミュニケーション力は語学力ではない」という考え方です。ついつい日本人は英語の巧拙にこだわり、下手を理由に発言できなかったり、逆に英語が堪能な人でも話の展開が分かりにくかったりします。本プログラムではベースとなるコミュニケーション力、語学力ではないコミュニケーション力の醸成、下地づくりに重きを置きました。

これがプログラムの全体像です。

ベースとなる思考力に関わるところは日本語、それ以外は基本的に英語で実施しました。また、STEP2はグロービスマネジメントスクールでの異業種交流型他流試合、STEP3はインハウス研修というように、スクールと研修のブレンドのプログラムを立てました。

さらに、このようなOffJTは、OJTでの活動とも連動させました。

すなわち自部門の課題を、上司、そして海外赴任経験者のメンターとともに解決するプロジェクトと並行して行われました。単なるお勉強で終わらせずに、その成果をすぐに業務に反映させることを求めたのです。

ヤマハ様のプログラムを実施したときにはなかったのですが、グロービスでは昨年11月にスマホでも利用できる英語のオンラインサブスクリプションサービス、「GLOBIS Unlimited」をスタートさせました。この個人向けの非同期型オンライン学習をライブ型オンライン研修の「GLOBIS Online Program」と併用することで、海外赴任者の赴任前後をまたいだサポートが可能になります。ぜひ、ご参考にしていただければと思います。

グローバル人材育成の具体事例②〜三菱電機株式会社

グローバライゼーションの第2フェーズは、現地化・地域深化。ピラミッドの右下の部分です。

ナショナルスタッフ、現地経営層の持つ課題は、いかに優秀な社員に定着してもらえるか、そして、そのためにも本社の考え方を浸透させるかです。この課題への解決策は研修だけにとどまりません。採用、選抜、評価、育成、配置、すべてが関わってきます。でも、本社人事が販社や海外事業部の配置・評価について口を出そうとすると必ず抵抗にあいます。しかし、研修だと割と入っていきやすい。なので、育成から始めるということは、グローバルタレントマネジメントを進める上で、戦略的にも理にかなっていると我々は考えています。

その例が、三菱電機様で行った海外拠点長育成プログラムです。三菱電機様ではグループ全体15万人の4割が海外拠点の社員ということで、本社人事部でもナショナルスタッフ育成の担当者がおられます。大事にされたのは、事業を強くするという目的を見失わないこと、経営の現地化は手段でしかないということです。それからもうひとつ、三菱電機グループでやっていく覚悟をもった経営者をつくることです。そのために、「型」と「軸」を設定しました。「型」とは優れた経営手腕、「軸」とは三菱電機の価値観と共鳴し得る考え方です。日本人社員の場合は、先輩から後輩に飲み会の席で語り継がれる文化みたいなものがありますが、海外拠点の社員にそれを伝えるとなると、このような場をつくるしかありません。この要素を分解して、10日間のカリキュラムを構成しました。

具体的には5日間のプログラムを2回、3か月のインターバルで実施しました。場所は日本です。まず、三菱電機の理念・哲学を咀嚼・内面化する前半。そして後半は、リーダーシップのベースをケースメソッドで学びます。インターバルの期間には自らが属する拠点の課題を抽出し、自分が拠点長だったらどう解決するかを個人ベースで取り組みます。そして、インターバル後のSTEP2。志を研いで、戦略構想力を高めて、最後に就任演説をするという形で締めます。クライアントの方が強調されていたのは、「何を教えるか」ではなく、「会社として熱を伝える」ということでした。そこで、研修に経営トップも巻き込みました。これは参加者のモチベーションアップにもつながりますし、研修自体の箔づけにもつながります。また、アセスメント的な側面もあり、経営陣への顔見せ的な意味合いもあります。結果何が残ったか。コミュニティができました。事業を越えて、国を越えて、同じ立場の人たちがお互いに高め合えるネットワークができた意義は大きいということでした。

グローバル人材育成の具体事例③〜花王株式会社

さて、グローバル育成ピラミッドの頂点は、グローバル幹部の育成です。ここでは日本人・外国人の区別は全くありません。

将来のエリート人材の持つ課題は何か。それは、グローバル人材がチームとして有効に機能することです。この次元は、もう単なるビジネススキルのお勉強ではありません。ダイバーシティ溢れるチームがさまざまなギャップを乗り越え、真に取り組むべき課題を定義し、コンセンサスを得てアウトプットに仕上げる。そのために感覚を研ぎ澄ませ、自分自身を見つめ直すことも大事になります。

例に挙げるのは、花王様で10年続いているグローバルリーダーシッププログラムです。グループ国内外から約20名が参加し、1.外部環境・メガトレンドへの洞察力を高め、2.グローバルリーダーとして、3.社会へ新しい価値を生み続けていくための変革をリードする能力とマインドの開発を狙いとしているプログラムです。

クライアントの方が強く意識されていたのはトレンドへの洞察力、そして、それを起点に解決困難な社会課題に挑戦し、本質的な価値を自らの力でつくり上げるということでした。

なんといってもハイライトはPhase2の、新興国ベトナムにおけるイマージョン。「浸る」という意味です。現地体験を通して、花王様が解決せねばならない本質的な課題を自ら感じ取り、言語化しました。そのためにも、Phase1においては、自分自身のパッションの源を問い続けます。要するに「自分は何者なのか」「何を成し遂げたいのか」「どう生きたいのか」、この掘り下げが何よりも大事です。最後のPhase3においては、単なるロジックで収益計算バッチリのプロポーザルは社長陣には評価されません。心から発動された、真にやりたいと思える課題でないと評価されないということです。

各Phaseの詳細を説明しますと、Phase1のフィールドワークでは、地球規模の社会課題の解決に挑戦している企業、目先の利益を生むためのビジネスではない企業を訪問し、そこからの学びをシェアしました。

そして、Phase2では、ベトナムでのイマージョンプログラム。参加者がそれぞれ2人ずつ現地の家庭にホームステイします。

ローカルな家庭、都市部の家庭、中流階級、上流階級とセグメントを分けて、新興国の消費者が実際にどのような生活をしているのかを肌で感じ取ります。大事なのは顧客との共通体験からくる共感(Empathize)です。「同情する」という意味の“Sympathize”ではまだ不十分。お客様はどんなことに困っていて、それをどう感じているのか。その感覚を自分の脳に刻み込むことが、本質的な価値の訴求に我々を向かわせてくれます。「傍観者」ではなく「共感者」になる。意味のある体験をすることにこだわったプログラムでした。

今回、3社の具体事例をご案内いたしましたが、グロービスではこの他にもさまざまなグローバル人材育成研修を取り扱っております。

ご興味のある企業の皆様はぜひご連絡していただけたらと思います。ありがとうございました。(中編に続く)

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