長川:起業をされて3年たちましたが、どんな事業をされているのですか。
Dennis:この3年間、ローカルとグローバルが繋がるような事業であれば、基本的に受けてきました。事業の1つである地方創生パートナーズは、留学生を始めとするグローバル人材と地域をつないで、その地域の魅力だけではなく、課題も知ることができるような企画をして、実践してきました。
例えば北海道の下川町や浦幌町、宮城県の石巻市や愛媛県の西予市に留学生と一緒に行き、観光だけではなくてちゃんと地域の課題と、地域の人と交流をする。これが大事です。エリートが地域に行って偉そうに見て回るだけじゃなくて、地域に入り込んで地域の課題を知れるようなチャンスを作りたかった。
長川:どんな留学生が参加しているんですか。
Dennis:まず、学習意欲の高い人が多いです。あとは単純に、地方が好き、ということですね。ほとんどの人は地方創生という言葉は知らずに、とりあえず日本の地方を見てみたい、という単純な理由で参加をしてくれます。留学生の中でも経済的に余裕のある人や、文部科学省の奨学金をもらっている留学生が多いですね。
その中の1人は、今でも事業のパートナーとして関わってくれています。彼はスペイン出身で、日本語学校に通っているときに参加してくれました。彼の専門は、町づくりでした。日本語学校を終えて、博士課程に進学した彼は、研究のテーマを地方創生にして、対象地域を私の活動地域の1つにしてくれました。今は彼と、彼の研究室を巻き込みながら活動をしています。彼は学問的な目線から、私は社会的な目線から地方創生を見る、そんな関係性です。
長川:どのように事業を継続させているんでしょうか。
Dennis:当時この事業を始めた時は、地方行政からお金をもらっていました。周囲からは、「助成金はいつか切れるから覚悟をしとけ」とよく言われました。でも「あるうちはもらっとけばいい」と思ったので、まずはそれに頼りながら活動して、留学生を連れて行きました。当時は単発的なものが多かったです。でも頭の片隅では、助成金が終わったときのことを考えて、次に何をやるか決めないといけないとずっと考えていました。
実は、2020年は助成金が切れる年です。今年からやろうと思っているのが、この3年間できた様々な地方と留学生のネットワークを生かしたビジネスです。
例えば現地の団体と組んでお金を調達することも、少しずつ始めています。徐々に地方行政に頼らずにやっていけるような形にしたいですね。あともう1つ、日本の高校生を地方に連れて行くことも、他社の事業に関わる形でやっています。私のかかわり方は講師のような、プログラムのサポートのような位置づけです。シンガポール国立大学の学生と、青森の市町村を繋ぐ大手の事業ですが、そうすると地方行政に頼らずに事業を回すことができます。
今後は持続的にビジネスとしてやっていきたいという思いを持っています。正直、不安が多いです。でも、これは正しい方向性だと信じているので、突き進むしかないですね。
後編:シンガポール出身の社会起業家が考える地方創生とは?【BOUNDLESS/デニス・チア氏】(6/17公開)