各々の視点からの「よい会社」
「よい会社」がどんなものであるかは、人により、視点によりさまざまです。
経営者にとっては、多様な人材と技術力を保持し、利益という形で継続的にステークホルダーに報いていくのが「よい会社」かもしれません。取引先にとってみれば、儲けさせてくれる会社が「よい会社」でしょうし、株主からみれば、株価も配当も上がり続ける会社が「よい会社」かもしれません。また、社会にとっては、雇用や納税など経済的な貢献と、商品・サービスを通して文化的な発展に貢献してくれるのが「よい会社」となります。
では、従業員にとって「よい会社」とは何なのでしょう?給料の高い会社、やりたいことをやらせてくれる会社、長く雇用してくれそうな会社、ステータスのある会社、社風に活気のある会社、ブランド力の強い会社、理念に共感できる会社、子育てのできる会社など、いろいろあるでしょう。
従業員からみる2つの側面:「働きやすさ」と「働きがい」
従業員にとって「よい会社」とはどんなものかを私なりに整理したのが次の図です。
「よい会社」の「よい=良い・善い・好い」には2つの側面があるように思われます。すなわち、「働きがい」と「働きやすさ」です。
働きがいがあるというのは、働き手が能動的に働けば、その分、会社がきちんと応えてくれる、報いてくれるものがあるということです。物的には金銭的報酬、精神的には成長感や仕事への誇り・意義といったものです。
もう一方、働きやすさは、1つに職場の環境が自分になじむこと。さらには制度や設備が充実し、かつ、それらの使い勝手がよいことにあります。人手不足の昨今、会社は従業員の獲得と保持のために働きやすさの拡充を図っています。働き手のほうも会社側に働きやすさへの要求を強めています。
職場を働きやすい環境にすることは大事なことですが、皮肉なことに、働きやすい環境にすればするほど、そこに安住することを目的化する従業員が増え、結果的に組織全体の活力が失われてしまうという状況も一部に起こっています。昨今は、福利厚生のよさを志望動機の一番に考える求職者・就活生が増えています。
働きやすさを整えることは、ハーズバーグの動機分類で言う「衛生要因」的なものであり、よい仕事を生むための土台でしかありません。働きがいの創出こそ真の「動機づけ要因」となるものであり、働く目的です。その意味で、働き手側も会社側も、「働きやすさ」と「働きがい」の両方を絡み合わせて考えねばならないのです。