ロジカル・シンキングとは 

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ロジカル・シンキングとは、筋道だった合理的な思考様式やその方法論のことを指します。日本語では論理思考(もしくは論理的思考)と呼ばれ、1990年代以降、ビジネスパーソンにとって最も重要なスキルの代表とされています。

ロジカル・シンキングが実現できれば、意思決定(決断)やコミュニケーション、問題解決といったビジネス上重要な行為が非常に効率的・効果的なものになります。生産性の高いビジネスパーソンの必須スキルとも言えます。

ロジカル・シンキングの構成要素

ロジカル・シンキングの構成要素にはさまざまなものがありますが、特に下記に記した6つの要素が重要です。これらに致命的な弱点がなく、高い次元で満たされている人はロジカル・シンキングの力が高いと言えるでしょう。

1. 主張と根拠に筋道が通っている
これは特に意思決定やコミュニケーションにおいて重要な意味を持ちます。その基本となるのは、3段論法とも呼ばれる演繹的思考と、物事の共通点に着目する帰納的思考です。これらを適切に組み合わせ、ピラミッド構造で納得性の高い論理構造を作れることが大事です。

ピラミッド構造とは、「A事業に進出すべきだ(結論)。なぜならば、A事業は市場規模や成長性の観点から魅力的であり(根拠1)、自社の○○技術等の強みも活かせる(根拠2)。しかも自社を脅かすような競合も存在せず、有力な代替品も当面は出てきそうにないからだ(根拠3)」といったように、主張と、それを支える複数の納得性の高い根拠から成り立つ論理構造です。

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一見簡単なようですが、そもそも考えるべき主要ポイント(イシュー)を正しく設定した上で、ファクト(事実)に基づき、隙がない論理構造を作るのは簡単ではありません。

2. バイアスにとらわれていない
バイアスとは思考の歪みのことです。他の印象に引っ張られるハロー効果や、最後の印象に引っ張られる終末効果(あるいは近日効果)などがその典型です。また、人間はいったんこうだと思うと、それに否定する事実や意見を見過ごしたり過小評価するようになります。これを確証バイアスと呼びます。これらのバイアスを避け、視野狭窄に陥らず、全体をバランスよく見渡すことが非常に大切です。

3. 合理的である
これは費用対効果の高さに結びつきます。特に問題解決においてこの点は重要になってきます。たとえば、どれだけ正しい結論に至ったとしても、社長が、平社員がやるべき仕事に時間を使ってしまっていては全く合理的ではありません。重要なこととそうでないことを見わけることが必要です。

4. 物事を適切に分解できる
これは特に問題解決において重要となります。これが出来ないと、どこに問題があるのか(Where)、なぜそのような問題が起きているのか(Why)、あるいはどのような手をうてばいいのか(How)などが分からないからです。ちなみに、分解を行う時のコツにMECE(モレなくダブりなく)というものがあります。これを意識して分解を行うだけで、無駄をかなり省くことが出来ます。

5. 因果関係を正しく把握できる
これも特に問題解決において非常に重要な意味を持ってきます。問題の本質的な原因ではないところにアクションをとってもあまり効果がないことは容易に想像がつくでしょう。また、因果関係が時空をまたぐ時には、その把握は困難度が一気に増します。「本当にこれが原因なのか?」といったことをしっかり見極める必要性があるのです。

6. 言葉や数字を適切に扱える
これはロジカル・シンキングに限らず「考える」ということ全般に言える話ですが、言葉の定義が曖昧だったり、途中で定義が変わってしまっては正しく思考することはできません。また、数字の真偽を見極めたり、その数字の癖(例:平均値は必ずしも集団の特性を反映していない)や表・グラフの癖(例:折れ線グラフに太い補助線が引かれていると、本来の推移よりもその補助線に印象がひっぱられがち)を知り、しっかりと定量的に考えられることも必要です。

なお、ロジカル・シンキングと似た領域を示す言葉に「クリティカル・シンキング」があります。人によって定義は異なりますが、ロジカル・シンキングが論理性の強さや合理性を重視するのに対し、クリティカル・シンキングは論理性を重視しながらも、「正しく考える姿勢」やメタレベルで自分を客観視できるスキルをより重視したものと考えておくとよいでしょう。

ロジカル・シンキングの磨き方

ではロジカル・シンキングはどのように磨けばいいのでしょうか? ここでは、何かを主張するシーンと問題解決のシーンをロジカル・シンキングの代表的な活用シーンと考え、それに絞って考えます。

まず何かを主張するシーンですが、(可能ならば仕事の場面において)何かテーマを決め、「私はこう思う。なぜなら…」の論理構造を作ってみましょう。そしてしばらくしてそれを再度確認したり、可能ならば他者に見てもらってそこに納得感があるのかを確認してみます。

特に後者は有効です。通常、最初は「なぜこの根拠からこのことが言えるかわからない」「根拠のバランスが偏っている」「この数字って本当なの?ちゃんとした情報ソースの数字なの?」といった指摘を受けるものです。そうした指摘をもとに情報を再度集めたり、論理構成を作り直すと格段に説得力が上がります。

また、他者から指摘を受けることは、自分自身が見落としがちな、「自分の思考の癖」を把握することにもつながります。可能ならば複数の人間のアドバイスを取り入れるとよいでしょう。

また、メディアの論争などを客観的に眺めてみるのも効果的です。「こちらの方がやはり説得力があるな」と感じたら、それはなぜなのかを考えていくと、自ずと論理構成の力は上がっていきます。

問題解決については、本来は解決すべき問題の設定≒課題設定が重要なのですが、これは簡単ではないのでここでは省略します。ただ、それだけ適切な課題設定は簡単ではないと覚えていただければOKです。

その上で、問題解決に関しては、問題個所の特定、原因の特定、対策立案のどれにも効いてくる「MECE」での切り分けの練習をまずはしてみましょう。MECEとは先にも書いたように、何かを「モレなくダブりなく」切り分けることです。それを枝状に図示化したものをロジックツリーと言います。コンサルティングファームなどでよく用いられるツールです。

たとえば「新聞の購読部数減少の理由」を2段目くらいまでMECEに切り分けてみましょう。

いかがでしょうか? 意外と手ごわいのがお分かりいただけると思います。下図は分解例を2つ示したものですが、こうした思考トレーニングを日々やっておくと、いざという時にも比較的的確に使いこなせるようになっていきます。

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なお、実際のビジネスシーンでは、どの切り分け方が最も有効かは実際に調べてみないと分からないことが多いものですが、自分なりに「仮説」(仮の答え)を持ちながら仕事を進めることが大切です。

フレームワークを活用する

論理を構築する際にも、あるいはMECEで何かを切り分ける際にも武器となるものにフレームワーク(枠組み)があります。

たとえばマーケティングの4P(Product:製品、Price:価格、Promotion:プロモーション、Place:流通チャネル)というフレームワークを知っていると、ある商品がヒットしそうかという予測を述べる際の根拠の「大きな柱」として用いることもできますし、実際に売れ行きが悪い時の問題解決にも応用可能です。

あるいは、SWOT(Strengths:強み、Weaknesses:弱み、Opportunities:機会、Threats)というフレームワークを知っていると、自社の課題や事業機会を効率的に見出すことができます。

そうしたフレームワークはビジネスに関する重要なものだけでも多数あります。事業分析のための3Cや、ビジネスの特徴を浮き上がらせるバリューチェーンなどはビジネスパーソンであれば必修の知識であり、ぜひ身につけたいものです。参考のリンクをご紹介します。

MBA用語集
・フレームワークをまとめた本:『グロービスMBAキーワード 図解 基本ビジネス分析ツール50

注意事項

このように非常に有用なロジカル・シンキングですが、当然落とし穴もあります。

ロジカル・シンキングはビジネスパーソンの必須スキルであるのは疑いようがありません。しかし、往々にして「ロジカル」であることが自己目的化してしまいます。それがビジネスの生産性を下げるようでは本末転倒です。

特にコミュニケーションの場面ではそうです。人間はロジックや正論だけで動かせるものではありません。感情もありますし、プライドやメンツなども強く意識するからです。そうした人間心理への配慮を飛ばしたまま正論を振りかざしてみても、かえって相手の感情をこじらせ、説得が難しくなることがあります。

「正論だ だから余計に 腹が立つ」という川柳がありますが、これは絶対に避けるべき落とし穴です。

あるいは、MECEという概念も非常に有用ではありますが、これもあまり正確さにこだわり過ぎては問題解決のスピードをむしろ削いでしまいます。最終的に意思決定やコミュニケーション、問題解決などを加速するという論理思考の目的をしっかり理解しておく必要があります。

参考書籍など

最後に、関連するグロービスの書籍やサイトをご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
・『グロービスMBAクリティカル・シンキング
・『考える技術・書く技術
・『ロジカル・シンキング入門
・『ポケットMBA ロジカル・シンキング

東京大学理学部卒、同大学院理学系研究科修士課程修了。戦略系コンサルティングファーム、外資系メーカーを経てグロービスに入社。累計150万部を超えるベストセラー「グロービスMBAシリーズ」の著者、プロデューサーも務める。著書に『グロービスMBAビジネス・ライティング』『グロービスMBAキーワード 図解 基本ビジネス思考法45』『グロービスMBAキーワード 図解 基本フレームワーク50』『ビジネス仮説力の磨き方』(以上ダイヤモンド社)、『MBA 100の基本』(東洋経済新報社)、『[実況]ロジカルシンキング教室』『[実況』アカウンティング教室』『競争優位としての経営理念』(以上PHP研究所)、『ロジカルシンキングの落とし穴』『バイアス』『KSFとは』(以上グロービス電子出版)、共著書に『グロービスMBAマネジメント・ブック』『グロービスMBAマネジメント・ブックⅡ』『MBA定量分析と意思決定』『グロービスMBAビジネスプラン』『ストーリーで学ぶマーケティング戦略の基本』(以上ダイヤモンド社)など。その他にも多数の単著、共著書、共訳書がある。
グロービス経営大学院や企業研修において経営戦略、マーケティング、事業革新、管理会計、自社課題(アクションラーニング)などの講師を務める。グロービスのナレッジライブラリ「GLOBIS知見録」に定期的にコラムを連載するとともに、さまざまなテーマで講演なども行っている。

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