財務諸表というと、貸借対照表(B/S)、損益計算書(P/L)、キャッシュ・フロー計算書、そして以前当コラムでも紹介した株主資本等変動計算書(S/S)(参照:第4の財務諸表って何?)を思い浮かべると思います。今回は、財務諸表に添付される「注記」情報について説明します。
財務諸表の注記(以下、注記)は、ざっくりいうと会社の財務状況をより理解しやすくするための財務諸表の補足説明情報です。注記には、以下の3種類があります。
会計方針:財務諸表に計上される勘定科目の金額を算定するために会社が採用した主な計算前提のことです。例えば、減価償却方法には定額法、定率法など複数の会計処理方法が認められていますが、このうち会社がどの方法を選択したかを記載します。これにより財務諸表の利用者は他社の財務諸表の数値との比較がしやすくなります。
補足説明:B/S、P/Lなどの財務諸表の数値の意味をより理解しやすくするための補足説明です。例えば、P/Lの特別損失に「減損損失」が計上されているとします。減損損失の対象になった固定資産の内容と減損損失に至った経緯、(多数の固定資産の減損損失の場合)減損損失金額の内訳、減損損失金額算定のための時価の算定根拠などが記載されます。
簿外情報:B/S、P/Lなどの財務諸表には計上されていないが、会社の財務状況をより正確に理解するための情報です。一部のリース債務、債務保証などのように現時点では財務諸表に計上するには至らないが、会社にとって潜在的な債務に該当するものなどがこれに該当します。当コラムで以前に説明したゴーイングコンサーン注記(参照:倒産の可能性が決算書に書かれているって本当?)、後発事象(参照:決算書の「後発事象」って何?)なども該当します。
私は、よく財務諸表と注記の関係を、家電製品と取扱説明書に例えます。家電製品にとって取扱説明書が不可欠なように、財務諸表にも注記は不可欠です。財務諸表本体の数値だけよりも、注記に記載された情報を併せて読むことで、会社の財務状況を正確に理解できますし、他社の数値とのより効果的な比較が可能になります。
注記には理解するのに詳細な会計ルールの知識が必要になるものもありますが、多くは基本的な会計知識があれば大つかみでの理解は可能です。今後、会社の財務諸表を読む際には、ぜひ、注記情報にも目を配るようにしてみてください。財務諸表の数値は優良でも、もしかしたら多額の簿外債務などが注記に書かれていることがあるかもしれません。