投資銀行→PE→スタートアップCFOのキャリアパス:estie 上田來

プロフェッショナルファームから、スタートアップの門戸を叩く人材は日本のスタートアップ業界でも徐々に増えつつある。そうしたなか、投資銀行やPEでキャリアを積んできた上田來氏が、「産業の真価を、さらに拓く。」をPurposeに掲げ、商業用不動産市場のインフラとなるサービスを開発し、業界のアップデートを図るスタートアップ「estie」に参画した。
背景にあったのは、グロービス・キャピタル・パートナーズ(以下、GCP)が投資先スタートアップ企業の経営支援を専門とするチーム「GCP X」の存在である。

上田氏はどうして今、estieにジョインしたのか?また、CFOを迎えたestieは、今後どのような進化を見せていくのか?

プレシリーズAからestieを支援してきたGCPの湯浅エムレ秀和氏、そして今回の上田氏の参画にGCP Xから支援を行った水野 由貴氏とともに、今回の上田氏参画の背景とestieの今後の展望に迫る。

(取材・構成:福田滉平、写真:山下直輝)

*本記事は、2022年12月23日にCOMPASS by Globis Capital Partnersに掲載された記事を転載したものです。

変わったスタートアップのイメージ

──GCPはestieに2020年6月のプレAラウンドから投資し、2022年9月には、上田さんがジョインされました。プライベートエクイティ業界のバックグランドから、スタートアップ業界へと興味を持ち始めたのは、いつからだったのでしょうか?

上田:スタートアップで働くことには、もう2年くらい前から頭の中では考え始めていました。


直接のきっかけは、3年ほど前から前職でスタートアップ投資に関わる機会が非常に多くなっていたことです。

前職のファンドは、もともとバイアウトファンドでしたので長年成熟した大企業向けの投資をしていたのですが、当時「グロースエクイティ」といって、レイターステージのスタートアップにマイノリティ投資をするファンドを新しく立ち上げ、力を入れ始めていました。

私の担当業界がテクノロジーだったこともあり、自然とマイノリティ投資のソーシングを任されるようになり実体験としてスタートアップの方に関わることが増えていたんです。ミーティングでお会いする自分の同年代や、更に若い起業家や経営陣の方々が、覚悟を持って事業に取り組まれていること、そして社会や産業を変えるという高邁な夢や目標を持たれていることに感銘を受けるとともに、尊敬の念を持つようになりました。

この経験からスタートアップ業界で働くことに対してとても魅力を感じるようになりました。そのため良い機会があればご紹介をお願いしますと、親しい友達やよく声をかけてくださるエージェントの方にも話をしていました。

さらに遡ると、スタートアップに対するイメージを持つきっかけになったのはMBA留学での経験です。留学先のアメリカでは、投資銀行からスタートアップへと転職するキャリアは珍しいものではなくなっていました。MBAの同窓生でも優秀な人達が、自分で起業をするかスタートアップに参画する流れを目の前で見ていました。自分の身近な仲間たちが、もうブラックホールに吸い込まれるかのように、スタートアップ業界に入っていくのを肌で感じたんです。

日本に帰ってきてからも、この流れを肌で感じていました。私の通っていたペンシルベニア大学ウォートン校の卒業生のなかに、2010年以降の卒業生たちだけが集まる「ウォートンティーンズ」という会があります。このウォートンティーンズに来る人には、すでに成功された起業家や有名なスタートアップのCFO、或いはベンチャーキャピタルでスタートアップエコシステムを盛り上げている方が非常に多かったのです。

一般に、ウォートンはファイナンススクールとして有名です。しかしそのウォートンでもスタートアップで働くことは主流の選択になりつつあります。また日本の若手卒業生コミュニティにおいても熱量と勢いがあって、楽しそうな人たちの多くはスタートアップに関わる人たちでした。

こうして、プライベートエクイティファンドやMBAを経た私のキャリアパスとして、CFOというロールが明確に意識され始めていきました。この時に「GCPさんが投資先のCFOの採用をサポートされているので担当の方と一度お会いしませんか」という話を受け水野さんとお会いました。そこで示していただいた会社さんのなかで、ビビッと来たのが、estieだったんです。

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