容易に揃う選択肢から選ぶのは簡単なこと
人生は選択の連続です。私たちは朝起きてから夜寝るまで、大小無数の選択をして進んでいきます。そのとき人には「選択力」の差が出ます。「選択力」とは───
1. 選択肢を分析・判断する力
2. 選択肢をつくり出す力
3. 選択を(事後的に)正解にする力
1番目は、眼前にある選択肢のうちどれが最良のものかを決める力、あるいは優先順位をつける力です。そのために情報を集めたり、違った視点でながめたり、本質的なことを洞察したり、人に助言を求めたり、そういった力の有無が問われます。通常「あなたには選ぶ目があるね」と言うのは、この1番目の力のことです。
2番目は、選択肢を増やす力、呼び寄せる力です。容易に揃う選択肢、受け身で与えられる選択肢、既存の枠にはまった選択肢、それから何かを選ぶのは、ある種簡単なことです。しかしそこからは決定的な状況打開ができないとき、どうすればいいでしょう?――それには、新たな選択肢をつくり出すしかありません。
遠回りになりつつも、積極的に既存の枠の外から選択肢をつくり出せるかどうか。仕事・キャリアを独自に大きく切り拓いている人は、この点に粘り強さがあります。また、そうした選択肢をつくり出す過程で、状況打開の筋が見えてくる場合も多いものです。
小さな自由と大きな自由
例えばあなたはいま、現在の会社をやめて他の会社に移る転職を考えています。転職紹介サービスに登録をしたところ、2社から面接したいとの反応がありました。あなたには、現在の会社に留まることを含め、3つの選択肢があることになります。これはいわば「小さな自由」を手にしている状態です。そこであなたは、この小さな自由である3択の中から何かを選んで、キャリアを進めていくことはできます。しかし、また別の行き方もあります。
現在の会社に踏みとどまって何か伝説的な業績を残します。すると、どうでしょう、「あの会社のあの事業に関わった人ですか」ということで業界内ではあなたのことが話題となり、是非うちの会社にというオファーが5社から来ました。と同時に、現在の会社からも次の大きなポジションを打診されました。あなたの目の前には6つの魅力的な選択肢が現われたわけです。選択肢は倍増しました。これが「大きな自由」を手にしたということです。
目の前の貧弱な選択肢をあせって選びにいかない。どんと構えて、魅力的な選択肢を増やす行動ができる。2番目の選択力はそういう地力です。
「天職」は見つけようと思って見つかるものではない
そして3番目は、自分が選んだ道をその後の努力で「これが正しかった!」と思える状況をつくる力です。
選択は往々にして、その行った時点では正しいとも正しくないともわからないものです。それを事後的に自分が納得できる形に持っていけるかどうか。その図太く未来をつくっていく力がこの3番目の力です。
「天職」に出合えるかどうかも、結局のところ、この力によると言ってもいいでしょう。天職というのはあらかじめ決まっているものではありません。何十年とその仕事をやり続けてみて、最終的に「ああ、自分はこの道でよかったんだ」と悟る境地が天職です。その間に遭遇した偶然の出来事もすべて必然だったと振り返られる状態になるためには、この3番目の「事後的に状況を創造していく力」が必要です。
1日1日、そして一生は、選択の連続で織られていきます。「選ぶ力」を強く持った者が、自分の意志を模様に変え、独自の織物を完成させていきます。